22. 断絶3
無事に仲間の元、クラン・アーの4人の元へ辿り着いた——小さなビル群に囲まれ死角となっているコインパーキング。
そこにある黒い車の裏。
俺はホッと胸を撫で下ろしたが、俺とともにここまで来た3人はそんな素振りを露とも見せないのを見て、俺は改めて気を引き締め直す。
奴らがどこにいるのかまだわからない、ここは奴らの近くかもしれないのだ。
「もう交代か。まだ2体。俺もまだまだだな」
アーのリーダーのエンさんが小声で喋る。
「そ、そんなことないですよ。私たちは1体だったし」
ベーのリーダーは先ほどの俺への態度と打って変わって、照れを含んだ声色だった。
「……よかった、無事で」横から声がした。
「ユウはよく頑張ったと思うぜ」先のことには触れないミチハルさん。
「怪我はなかったの?」その声の主は横から俺を撫でようとしてきた。
「や、やめてください」
俺は小声で抵抗するも、音を出せないしで痛みで大きな動きはできず、されるがままでいた。
「あらあらユウさん、何やっちゃんってんすか」
俺の背中が、おらおらーと快活なささやき声とともに、肘でグイグイ小突かれる。
「不可抗力ですよ……サヤ先輩」
小突かれるままでいる俺。
「とまぁ、姉さんそんなとこにしといたら?それ、思春期男子にしたら耐えられない羞恥プレイよ」
小突いてた張本人がそんなことを言う。
「だって、頑張ったから……それにまだ日も浅いし」
俺の頭の上に置いた手をどけて欲しいところだが、疲弊して払いのける気力がない。
「あんたら甘すぎ、気を緩めてるんじゃないわよ」
「まぁカンナ、俺も最初はこいつみたいな感じだったさ」と長身の細身のジュンさんが諫めて、俺を見て「今度俺のバーに来たら一杯奢ってやるよ」と言った。
「あららー未成年に酒を出しちゃうんですかー?サヤお姉さんも一杯ご相伴に預かろうかな—」
「もちろん、コーラさ」ジュンさんは揶揄うように笑う。
「気を緩めないで。それに、この生意気なクソガキがつけ上がるわ」
相変わらずうちのリーダーは厳しい。軽口を叩くも、俺含めて皆、気は緩めていない。軽い冗談を叩き合っても、内心では気を張り詰めているのがピンとした空気感から伝わってくる。
「そこら辺にしとけ、俺らのルアハももう切れかけだ。さっさと、あいつらの位置と現状を引き継ぐぞ」
皆の優しさは、俺の心に棘となって突き刺さる。
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