第5話 礼拝堂での決戦


 礼拝堂の中に残るのは、女神像、王太子、そしてクロガネ様、シリウス様、私だけです。


「シリウス、女神像の相手を頼む」


「俺は、こっちだ」

 クロガネ様が王太子と向き合います。


「アップル、少し下がってろ」



「その赤い衣装、クズには似合わないぜ、王太子」

「汚い黒ゴミのお前が言うのか、イケメン君」


 クロガネ様は、スピード重視の短刀

 王太子は、パワー重視の両手剣

 両者が打ち合います。


「同じ太刀筋か、剣の先生は同じ方のようだな、王太子」

「あいつは、流行り病で倒れたよ」


 両社、ギアを上げて、打ち合います。


「流行り病は、お前が作ったんだろ?」

「それがどうした? ゴミを掃除しただけだ」


 なんと、あの流行り病は、人工的に作られたものでした。

 怒りがこみ上げます。


「俺のことを、忘れたか? お前の従兄弟だぜ」

「まさか、消えた第二王子か!」


 私の記憶の呪縛が解き放たれ、夢と現実が合致しました。

 クロガネ様は、この王国の第二王子です。



「ガキン!」

 ものすごい音が、シリウス様の方から聞こえ、折れた剣が飛んできます。

 両者の剣が折れています。


 女神像は、古代の自立型戦闘人形で、地上最強です。

 シリウス様が、その兵器と互角に殴り合っています。


 女神像の首の後ろに、コインくらいの穴が見えます。

 幼い頃、「女神像は、水で洗ってはいけません」と教わりました。


「ウォーターボール!」

 女神像を水で濡らします。


「バチッ!」

 穴の場所から、火花と異音がしました。


 しまった、横を向いてたスキに、王太子から腕をつかまれました。

「キャ!」

「アップル!」



 王太子の剣が、私のノドに突き付けられます。

「この女の命が惜しければ、その聖女の石をこっちに寄こせ」


「私より、世界を救う方が大事です!」

「君のいない世界なんか、意味がない!」



「わかった! これはやるから、その聖女様を放せ」

 クロガネ様が、床に聖女の石を置き、下がります。


 王太子が聖女の石を拾いあげ、聖書台に向かいます。


 聖書台の上に聖女の石を置くため、私の腕を放しました。


「クロガネ様」

「アップル、もう離さない」

 私はクロガネ様の胸に飛び込みます。


 私の帰る場所は、ここです。




あとがき

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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