第6話 二人だけの空間


 聖書台に聖女の石を置いた王太子が、女神像に向かって、呪文を唱えます。


「女神よ、もう一度、世界を滅ぼす光を放て!」


 女神像が、両手を合わせます。



 女神像の関節部分から、光が漏れ出ます。故障です!


 シリウス様が後ろに下がり、距離を取ります。

 クロガネ様も、私を抱いて後方に下がります。


 故障した女神像が爆発的に光ります。目を閉じてもまぶしいです。


 すぐに、光は収まりましたが、女神像の動きは止まり、関節部分から煙を出しています。

 王大使は光で目を傷めたようで、床で、のたうち回っています。



「勝ったの?」

 私が安堵した瞬間です。

 礼拝堂の天井が落ち、床が抜けました。


「キャー!!!」

 クロガネ様と私は、床の底の暗闇へと、一緒に落ちていきます。




 どのくらい気を失っていたのでしょうか?

 目を開けたはずなのに、周囲は真っ暗で、星のように淡い光が少し瞬いています。


「クロガネ様?」


「アップル、気が付いたか?」

 声がすぐ近くから聞こえます。


「真っ暗です」

 礼拝堂の地下に落ちたことを思い出しました。


「完全に埋まったな、ケガは無いか?」


「足が、何かに挟まれて動かせないです」

「ところどころ痛いですが、骨折などのケガは無いようです」


「俺もだ」



「出ていくタイミングが遅くなって、すまなかった」

「あのクズが、結婚式の開会宣言前に、行動を起こすとは思わなかった」



「クロガネ様は、第二王子様だったのですね」


「うん、記憶を封印されていたが、シリウスが解除し、少し時間がかかったが、全てを思いだした」


「権力争いが激しくなって、まだ子供だった俺の命が狙われたので、記憶を封印され、神殿に置き去りにされた」


「私も、記憶を封印されていたようです」

「私たち、幼い頃に遊んだ大の仲良しだったのですね」


「俺の存在を消すため、アップルの記憶も封印した」



「幼い頃の、俺との約束を覚えているか?」


「はい、もちろんです」


 私の顔に、クロガネ様の手が触れます!


「アップル、、、」

 お声がとても近いです。


「ん!」



 突然、光が差し込みました。

 地下空間の上をフタのようにふさいでいた天井ガレキが撤去されたようです。


 緑の制服の帝国軍が、私とクロガネ様の唇が重なっている所を、見ています。


 救助は、もう少し、遅くても良かったのですが、、、




あとがき

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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