第3話 幽閉された部屋で再会


 クロガネ様と再会できた礼拝堂、突然、入口が開け放たれ、王太子が入ってきました。

 続いて護衛兵が、なだれ込み、私たちを包囲します。



「お楽しみのところ、野暮ではあるが、その聖女は私の花嫁なんだよ」


 護衛兵が、私とクロガネ様を引き離します。


「ちょうど、その聖女の石を探していたんだ、届けてくれたお礼をしなくてはね」

 王太子は余裕の笑みです。


「礼は、先日頂いた美味しいランチがいいな」

 クロガネ様が挑発します。


「牢へ連れていけ!」

 王太子は冷酷な目で、クロガネ様を睨みつけます。


「クロガネ様!」

「心配ない、俺は不死身だ」

 手を振って、開かれた扉から出ていきました。



「聖女様は、逢引きが得意なのかな?」

 私の握った手をこじ開けます。


「聖女の石、これが欲しかった」

 王太子から取り上げられました。



「これを知ってるよね?」

 王太子が、聖書に似た書物を見せ、醜く笑います。


「私が持つ「王の伝書」、これは国王の証であり、中に書かれた呪文を唱えると、、、世界が私にひざまずく」


「貴方一人では、無理よ!」

 そう、王の血筋と、聖女の血筋をそろえる必要がある。


「そのための結婚式だ。この女を部屋に閉じ込めろ。今後は礼拝も許可しない!」



 ◇



 はっきりしない意識、、、幼い私、王宮の庭で遊んでいます、、、

 私より少し年上の男の子、黒髪で漆黒の瞳です、、、


「特別に私の宝物を見せるね、秘密よ」

 私が聖女の石を見せます、、、


「これ、家にある本で読んだよ、秘密なんだって」

 輝く笑顔、、、


「アップル、大きくなったら結婚しよう!」

「いいよ」



 意識が徐々に戻ってきます。

 つらい夜が、もう朝になっています。ずいぶん昔の夢を見たものです。


「たしか、あの男の子は王子様だったはず」

 今はいませんので、流行り病で倒れたのでしょう。



「クロガネ様と同じ、黒髪に漆黒の瞳、、、」


 クロガネ様は、神殿に預けられた孤児です。王族ではありません。

 私たちは、4年前に神殿で知り合い、惹かれ合いました。


「私の幼い頃、思い出そうとしても、夢と現実の区別がつかない」



「想い人が、牢に閉じ込められたのに、私は助けることができない」

 祈ることしかできない自分が、とても悔しいです。



 ◇



 翌朝、部屋のドアが開き、王太子と護衛兵が入ってきました。


「ノックもなく、女性の部屋に入るとは、失礼です」


「うるさい、聖女の石は偽物だった! 本物はどこだ? あの黒髪の男はどこだ?!」

 王太子が、怒った声で詰め寄ります。


 地味な侍女が飛び込んできました。

「大変でございます! 王宮に賊が入り込み、各所に火を放っています!」


 窓から外を見ます。

「シリウス様?」


 馬に乗った白い衣装の騎士が、王宮内を走り抜け、何かを投げています。

 爆音に続いて煙が噴出します。


「続け、賊を捕まえる!」

 王太子と護衛兵が部屋を出ていきます。


 部屋に一瞬の静寂が訪れました。



「クロガネ様が、牢から逃げ出たのですね」

 安堵感で胸がいっぱいです。


「グ!」

 突然、見張りの護衛兵が倒れました。


「アップル!」

「クロガネ様!」


 思わぬ登場に、私から抱きしめてしまいました。

 この温かさは、クロガネ様です。




あとがき

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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