第4話 いつかは飽きる。

 数十万文字、文庫本数冊分の物語を読み進める。ここまで読み進める作品は一般的にも高い評価を受けている作品が多く、突然作品の質が下がるようなこともほぼ無い。私がこういった作品を読むのをやめる事もあるが、その理由は大きくいうと「飽きる」の一点である。それは作品に問題を感じるというよりは、作者の事情と読者の事情の不一致という面が強く、私の考えでは改善の余地は無いものである。

 ただ読者視点でどういった理由で読むのをやめるか?というのが、今後長編小説を書こうと思っている作者の方への参考になる点もあると思われるため、これまで通り事例を書かせて頂く。


 私が悩みに悩んだ上で「こんな小説からは卒業する。」



1. 終わりが見えない


 作品の進展や終わりが見えないと、読んでいて楽しいものではなく義務感を感じるものに変わってくる。特に日常系の作品は同じことの繰り返しに感じやすく作品の長期連載に伴う飽きも早い。

 人気作は書籍化などがされているものも多い。商品となってしまった作品は、作者の意図のみだけで物語の展開を決めることができない場合もあると思われる。



2. 更新頻度が極端に落ちる


 書籍化に伴う執筆による多忙、新しい作品の執筆を始めたことによる並行作業、同じ作品を描き続けることへの飽き/ネタ切れ、など様々な場合があるが、長編の連載ではどこかのタイミングで更新頻度が落ちることが多い。

 作者の事情もあり執筆のペースは自由なものであるが、当初は高頻度で行われていた更新が月1以下のペースになった場合、100話を超えるような長編の完結はほぼ絶望的である。完結の有無を抜きにしても、他に週に何度も更新される作品を読んでいる中で、月1以下の頻度での更新は「よほどその作品を楽しみにしている」「1度の更新で大きな満足を得られる」というような、読者にとって本当に特別な作品でないと印象に残らない。

 いわゆるエタ作品と同様で、ここまで楽しませてくれて本当にありがとう。という気持ちと共に卒業する。



3. 味が薄まる


 第3話で新キャラクターや新展開について言及したが、そのバランスが適切なものであっても長編になり積み重なることで面白さを感じなくなる要因となりうる。

 長編の場合、登場するキャラクターが当初の2倍、3倍の人数となることも普通である。これが繰り返されることで、作品全編通して質の変わらない文章・描写であっても一人のキャラクターに割かれる描写も少なくなり、読者が味気ないものに感じるようになってしまう。

 もし後から登場するキャラクターがとても魅力的であると、相対的に先に登場したキャラクターの魅力が失われてしまう。後から登場するキャラクターの魅力が少ないとまさに味が薄い。手詰まりである。



4.500万文字を超えるほど長い


 文字数は私個人の過去の経験からの数値だが、どんなに面白い作品であっても一定の文章量を超えると飽きがくる。どんなに作品内で工夫がされていたとしても同じ作品である以上は遠からず訪れてしまうものだろう。

 作者が本当に描きたいものであれば、どんなに長くなろうとも読者に飽きられようとも描くべきである。ただ文庫本数十冊を超える文字数の作品を描くには膨大な時間がかかるし、プロの作家でもあまり例を見ない長編である。特にそれまでの作品数が少ない作者であれば、他の作品を描く機会を失ってでも描きたいものであるか、現在の自分の力でチャレンジすべきものか、一度振り返ってもらいたい。



 長編作品に必ず生じる課題は「どのように終わるか」である。

 「書籍化などの商業化に伴う責任」「人気作品/評価を失うことへの怖さ」など少しでも長く作品を続けたい理由も理解できるし、それは作者の自由である。

 その一方で、読者が価値の下がった作品を読まなくなるのも自由である。これまで読み続けた作品をきっぱりやめることは勇気のいることではあるが、限られた時間の中で読む作品は、義務や惰性ではなく楽しみであるものを選びたいものである。

 勝手な意見ではあるが、読者としては好きな作品には最高の終わり方をして欲しい。作者・読者共に納得のいく「人気絶頂での完結」は物語を作る上で目指すべき憧れだろう。

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