第2話 違和感はマジ萎える。

 タイトル・あらすじに興味を持って小説を読みはじめるが、私が次にその小説を読まなくなりやすいタイミングは1話目から数話の序盤である。あらすじやタグを見ながら読み始めているので、物語の内容で序盤に離脱することはあまりない。序盤で離脱するよくあるパターンは「違和感」である。


 私がWeb小説の感想をいう時に「違和感」という言葉をよく使うのだが、そもそもこの「違和感」とはどんなものか。

 小説を書く時にその世界観の全てを文章にすることは不可能であり、その大半は暗黙的なもので読者と共通の常識や知識に準ずるものになる。物語の序盤で描かれる世界観はそのタイミングで読者とすり合わせされ、読者は自分の常識との乖離が大きいと物語に「違和感」を感じて没入できなくなり、面白さを感じにくくなる。

 創作の物語である以上どのようにでも描くことができるが、何のルールも無い物語は面白さも無いものである。


 私が物語序盤でよく感じる「こんな違和感のある小説は読まない。」



1. キャラに常識がない


 悪役のサブキャラに悪感情を抱かせるためだったり、ストーリーの展開の都合上だったり、見かけるパターンは様々あるが、キャラの言動に常識や一貫性を感じられないことは大きな違和感になる。これは行動の善悪とは別のものである。

 雑な例だが「何のきっかけもないのに主人公に惚れてしまう女性」「『みんなのため』とか言いつつ身勝手な行動を繰り返す主人公やそれを許容する周囲」などのキャラクターがよくある。逆に悪とされる行動だが「自分の欲望のために村を襲う盗賊」などは想像しやすく違和感には繋がらない。

 背景となる描写もなく違和感だらけの言動のキャラは、サイコパスな思考をトレースされられているようで精神的にキツイ。



2. 単位に過剰なこだわりがある


 通貨や距離の単位などの設定に妙なオリジナリティのある作品を見かける。例えばオリジナル通貨「ジンバブエドル」があったとして、作品内の会話で「パン買っていくのかい?ひとつ2000億ジンバブエドルだよ。」とあっても買い物の感覚イメージがまったく沸かない。世界観で通貨名がオリジナルなのはともかく、数値は日本円に近しいものか「銀貨1枚」のような単純なものが無難である。

 この設定が物語の本質に関わる場合はともかく、無駄な設定にこだわりのある作品は先のストーリーも期待できないことが多い。



3. 開始直後に設定が多すぎる


 世界観の設定が異様に多い。特に1話目、2話目あたりで国/地名だったり、いわゆる「ステータス」の数値が異様に詳細に書かれたりする場合があるが、私の場合はほぼ読まずに飛ばして物語のスタートまでスキップする。この段階で読んでも興味が湧く前なので「だから何?」と思うことがほとんど。

 独自の設定は物語の面白さに必要なものではあると思うが、多すぎると読者にとっての負担になるし、そもそも覚えられない。



4. 作品テーマや目的が描かれない


 どんなテーマの作品なのか?主人公などの主要登場人物が何を目的として行動しているのか?が、ずっと描かれずに物語が進んでしまう場合がある。これは「伏線」ではなく「意味不明」である。

 「森でモンスターと戦う」という場面があったとする。これだけだと何のために戦っているのか分からず、ただ出来事が描かれるだけの「日記」である。強くなるため、魔王を倒す過程、生活のため、などの目的・背景があって初めて物語の一部分となる。

 なお余談だが、悪い例として挙げた「日記」も面白い作品にはとても重要である。が、この件とは意味が異なるため別の機会に語りたい。



5. 視点がコロコロ変わる


 「一人称」や「三人称一元視点」などの小説の書き方レッスン的な話でもあるが、よく見かけるのは「◯◯視点」のように書いて主体になる文章が変わるパターン。キャラクターごとの心理描写を直接的に描きやすいなど良い面もあるのだとは思うが、読む側としては頻繁に視点が変わるのはどのキャラクターにも感情移入できないことが多い。

 少なくとも誰の視点かを明記しないと分からないというのは文章を見直す余地があると思うし、読んでいてこの数文字がとても冷める。

 


 冒頭で「読者の常識」という言い方をしたが、もちろんこれは一人一人違うものであり万人に共通する内容は無い。その中でもひとつひとつの表現、例えばキャラクターの言動について「どんな考えでこのキャラはこういう行動をするのか?」など深く考えられているほど、多くの読者が違和感を感じない表現になると思う。そして深掘りされた表現はより面白い作品に繋がるはずである。

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