あなた達だけが僕の未来を知っている

だらく@らくだ

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「お前!今日宝くじ五枚買うんだって?」

同級生の西宮龍鳴にしみやりゅうな

登校して、クラスで自分の椅子に座るや言った

「……んな予定無いけど?」

「いや、絶対そうだよ!昨日、寝る前に頭の中で声がしたし!」

「またそれか」

かつてノストラダムスの大予言というのが

流行った事がある。世界の終わりだとか不吉で暗い予言だったか。それはまあ外れたから

俺はこうして教室に居る訳だが、問題はこの

クラスにはそんな予言よりも確実に当たる予言が定期的に発信されてる事なのだ

「とにかく今日は絶対に!宝くじなんか買うものか!予言は大外れだ!」

「今まで外れた事無いのに?」

「そうだけど」

このクラスの誰かが寝る前に必ず頭の中で声を受け取る。その内容は何故か俺に関する予言……てか次の日の俺に対する行動のみ!大迷惑してるずっとね!!

「ま、宝くじ当たるといいな。祈ってるよ」

「買わないっつーの!」

頭を机に押し付け、ぐしゃぐしゃ掻いた。いつもこうだ、ある時はテストの点数である時は父親に笑われる事でどうして、どうして俺に予言を寄越さない?!一番知りたいのは俺なのに!ふっざけんな!!

「ガンッ」(机を殴った音)


それから数日後、また椅子に座ると誰かが駆け寄って来た

「ちょっと!!」

机を両手で思いっきり叩いたその人はクラスメイトの菜々緒渚ななおなぎさ

「昨日、寝ようとしたら声がしたんだけど

どういう事?!」

「はいはい、いつもの予言ですよ。みんな知ってると思いましたがね」

「予言ですって!?宝くじ、五枚全て外れていたってあれが?!」

「え!?」

その発言にぴくりと反応したのは龍鳴だけだった。尚も渚の怒りは治まらず

「くっだらない予言で私の睡眠を邪魔しないで!!ふんっ」

そのまま席に戻って行った

「ちょっと!宝くじ買ってんじゃん!!」

「いや、それはその」

かと思いきや、今度は龍鳴が怒りをぶつけた

「初めて予言が外れた!ってショックだったんだけど!どうしてくれんの?」

「知らねぇよそれは」

「とにかく!宝くじの事はみんなにバラすからね!出して!宝くじ!」

「分かったよほら」

俺はスクールバッグからビニールに包まれた

五枚の宝くじを渡した

「ん?これは……」

「何だよ、まさか当たってたんじゃ」

もし宝くじが当たりだったら俺は予言に勝って、更に幸福も得る事になる。想像して、思わず口角が緩んだ

「当選日明日だよ」

「な、何!?」

残念、予言には勝って無かったみたいだ。ん?でも予言は外れだって

「つまり本当の予言は違うって事か!?」

「そうなるね」

渚……あの野郎嘘吐きやがったな

「直接渚さんに聞いてみる?」

「やめろ、真面目にそれだけは」


そして、放課後。教室の俺が使用するロッカーに何か貼り付けられてた。

"屋上 来い "マジックで書かれたその文字はどこか恐ろしく、行かなきゃ不味いなと俺は行く事にしたのだ。向かっている中で予言がもしかしたら命に関わる事なのでは無いかと不安になって一生懸命神様に祈った。今までそんな予言は一度も無いけれど無いとは限らなかったし。そして、屋上に待っていたのは

「来たわね」

渚だった。後ろ姿しか見えないが、腕を組んでいるのは分かる。

「お、俺に恨みがあるのは分かるが屋上から突き落とすつもりなら辞めてくれ。ここが殺人現場になってしまうから」

「んな事するわけないでしょ」

「じゃあ……何?」

すると、彼女はこっちを向いて言った

「本当の予言が何なのかって話よ」

「実はこうだったの、予言はね」


「日樫海幸はクラスメイトの誰かに告白されるって」


雷が頭に降った様な衝撃だった。目の前で今にも泣きそうな渚の顔を見る限り冗談では無いだろう。しかしだ、今まで考えた事も無かった告白されるなんてましてやその返事、なんて


「だから私は予言通りに告白する、日樫海幸」


「あなたと付き合いたいの」

「あ、あ、あ、ああああ」


声が出ない。叫べばいいのか呟けばいいのかも分からない。視界に映る屋上の金網のずっと先の青空が黙ってこちらを見ている。酸素が足りない、二酸化炭素ばかり吐き出してしまうどうすれば


「あの……その」

「無理なら後でもいいわ……っ」


その時、がくっと姿勢を崩して彼女は屋上の

コンクリートに手をついた。その姿を見て、

すぐに俺は駆け出した。さっきまでの困惑も

どこかへ吹っ飛んだらしい


「大丈夫……?」

「大丈夫よ、ちょっと力が抜けただけ」


気づいたら手を伸ばしていた。恥ずかしいとかは無くて、ただクラスメイトが心配になったから伸ばしていた。その手を少し迷いつつ

彼女は掴んだ。それで、ぐっと引き上げたら

目と目がしっかりと合うじゃないか


「ありがと……」

「どういたしまして。それで返事なんだけど」


「喜んでお受けしますよ。どうぞ好きなだけ」

「えっ……」


途端、ぽろぽろと泣き出す彼女である。告白に成功したのにだ


「どうして泣くんだい?」

「ごめんなさい……一日不安だったからその

反動で……」


彼女を俺は強く抱き締めた


更に数日後

「海幸!おい!」

外れの宝くじを眺めていると、また龍鳴が

話しかけてきた

「俺に来た予言で今日が渚との初デートって

言ってたけどホントか?!」

「ぐふっ!」

宝くじを思わず破ってしまった

「てかいつ渚と付き合ったんだよ!」

「お前声がデカいよ……」

この発言のせいでクラス全員が俺と渚が

カップルである事を知ったのは言うまでも

無い














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