TAKE IT EASY TODAY! :)

 そうだな、今日はハロウィンか。

じゃあ気楽に話をしようか!

ちょうど二週間前だから、10/17かな。

その日、僕の前で起こった話に耳を傾けておくれよ。


まず、君たちも知っての通り

2043年現在、裕福層の人々の体は脳みそと肝臓以外のほとんどがタンパク質以外の物質を主として構成されている。

いわゆるサイボーグって奴だね。


僕も菊からの勧めでところどころに機械を埋め込んでるんだ。

とは言っても、安価にできる腎臓と一部の静脈弁、あとは鼓膜だけだがね。


実はこのサイボーグという分野において、

広島京都理科大学の「芒蜻蛉すすきとんぼ 茜」教授が深く関わっているのだが・・・・・・

彼女が実は僕の恩師でね。数週間前に彼女から連絡があって、久々にお話を伺いに行ったんだ。


すでに肌寒い秋空の下、ひどい山道をバイクで走らされたよ。

先生の家は島の中心付近、つまり山奥らしくてね、大学からは遠いが自然の中で暮らしたい欲が勝ったらしい。

とは言っても、山はすでに開発されて針葉樹の人工樹林だったけれどね。


彼女の家に近づいてきたら僕も珍しく驚いた。

この時代には珍しい煙突が突き出ていてね。

しかもそれは飾りでなくて、本当に煙をモクモク出していたんだ。


ガレージが何故か閉じていたからね。

そこら辺にバイクを置いておくことにした。

ベルを鳴らすとすぐに先生は出てきてくれた。

先生は60代前半で、

昔講義を受けていた時だって皺が数本入っていたはずなのだけれど、

あの日出会った先生は皺一つないし、

それに顔が完全に10代後半のものだったんだ。


僕はすぐに思い出したよ。

先生は『処女の10代』が好きだったこと。

先生の目を見るとわかる、光の反射しない義眼。

この二つでもう彼女の体のほとんどがタンパク質でないということは、十分に分かった。


先生はお淑やかに笑いながら言ったんだ。

「君は私の身体を見てどう思った?」ってさ。


だから僕はすぐに答えたよ。

「まるで別人ですね。それこそ、本当に先生という存在の定義が、その身体に含まれているのか不思議です」


すると先生は若い少女の声で高らかに笑って僕を部屋の中へ招待してくれたよ。


木造建築のお家でね。

綺麗に敷かれた絨毯、

パチパチと音を鳴らしながら燃えるとろ火の暖炉。

あまり見慣れないものが多かったよ。


だからなのかな。

部屋のさまざまなところに僕は違和感を覚えてね。

段々と、この家が不思議に思えてきたんだ。


どのように?と言われたら返せないけど、とても奇妙だったんだ。

わかるかな、この感覚。

だがまあ気にしたってどうせ僕は無頓着だからね。何も考えないことにしたんだ。その時は。


特に何か話をすることもなく、

先生は暖炉の前まで行くと、暖炉の近くに置かれた椅子へ腰をおろして、僕にもソファへ座るよう指差した。


ふらりとやってきた家猫が先生の膝に乗った。綺麗なペルシャ猫だったよ。

そいつを先生がじっくり撫でてやっていたときさ。


ふと、暖炉のそばに置かれてある薪木に目がいったんだ。

「持ってみても?」

僕が薪木を指差して先生に聞くと、先生は「珍しかろう」と言いながら快く許してくれたんだ。


ずっしりと、硬くて重い薪木だったよ。

君たちは見たことあるのかな。一本の丸太を縦に四等分した薪木でね。

綺麗にすっぱりと斧で割られていたんだ。


だが、思い返してみるとおかしいんだ。

この家に着いた時、薪棚のようなものは確かに外にあったが、その肝心な薪を作るための斧も何も家の周辺にはなかったんだ。


「この薪木は先生ご自身が割ったものです?」

僕がそういうと、先生は横に首を振った。

「業者のものだよ。私は力がないから斧が振れなくて困るよ、ほんとの話。」

けらけらと笑う彼女を横目に、僕は違和感の正体に気がついた。

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