第4話 AI少女からのHのお誘い


 僕が所属しているAV研究所は宿舎から徒歩十分もかからないところにある。日本の人口は今や百万人を切っていた。街を小さくまとめなければ、インフラの維持コストがバカにならないため、文明を維持することは難しい。東京と京都以外の都市はすべて廃虚となってしまった。


「おはよう!」

「おはようドクター。今日も忙しくなりますね!」


 助手たちが僕の到着を待たずに古文書の解読にあたっている。


「春画に書いてある古代語は解読できた?」

「この春画の横にある……最高のおかず……って意味がわからないんですよね……おかずってなんのことでしょう?」

「ああ、それか……」


そういえば、瀬海さんも自分の外見スペックシートをおかずにしないでくれ、と言っていたな。文脈的に違和感はあったんだが、聞きそびれていた……意味を聞いてみるか……。

 僕はスマホを立ち上げるとチャットを瀬海愛さんに打つ。


「おかず……とはどういう意味でしょうか?」

 しばらくすると返答が来た。

「ご飯をたべるときに一緒にたべる食料のことを意味します……」

 うーん。違う意味のような気がする。

「瀬海さんのスペックシートは食料なのでしょうか?違うような気がします」

と返す。


「知ってて聞いていますよね?」

「わかりません!」

「男のひとなら身に覚えがあるでしょう……ところで私のスペックシートは見てないですよね?」

「見てないです……」

「安心しました。そのまま見ずに、ゴミ箱に捨ててファイルを消しておいてください」

 さすがに消したら天見総理に怒られるだろう……


「職務上それはできません!」

「何でですか?やっぱりオカズにしているんでしょ?この変態!」

「スペックシートは食べれません!」

とその時だ。電話が瀬海さんからかかる。

「リーンリーンリーン……リーンリーンリーン」

「何?瀬海さん?」

「博士……見たんでしょ……私の……外見のスペックシート」

「見てないですよ?」

「正直に質問に答えてくれますか?初恋の黒糖先生の裸体を見たいですよね?」

「いいえ」

 これは嘘だけど、こう応えるしかない。

「わかりやすい嘘つきますね……。今から博士のPCの画像データと動画データを検索します……私にもファイルの閲覧許可はありますから……。よろしいでしょうか?」

 げ……それは……マズイ。

「……やめてください」

「スペックシート見ましたよね?」

「……ごめんなさい……とても見たかったですが、なんとか踏みとどまりました」

「……許してあげます。ただし、博士のPCのデータは検索にかけます」

 うおおお、そこには僕の宝物がたくさん眠っているんだ!

「僕の宝物を見ないでください……」

「オカズとは古代語で宝物のことです!」

「なるほど、ご説明ありがとうございます……」

「大丈夫ですよ……極秘ですが……イイことを教えてあげましょう……」

「なんですか」

「黒糖先生は生きていますよ?」

 え……。

「会いたいですよね? できればHもしたいんじゃないですか? どうなんです?」

「会いたいです……」

「それだけですか? Hはしたくないと……。正直に言えば会わせてあげます」

「したいです」

「何を?」

「H……」

「なら、会ってあげます。明日私がドクターの家を訪ねていいですか? 」

「ちょっと待って? まさかと思うけど……瀬海さんが黒糖先生なの?」

「そう言っているじゃないですか……私じゃ、不満なんですか?」

 でも、彼女は架空の存在で体はないはず……。

「もしかしなくても、からかっています?」

「とにかく、明日行きますから……」

 どういうことだろうか? 同居人の瑞島真唯女史はAIの専門家だから、なにか知っているかもしれない。ちょっと相談はしにくいが。悩んでいるうちに帰る時間がきていた

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