事の顛末を話し終えた彼らは…
第46話 ってことがあったんです。
サ「ってことがあったんです。みんなには沢山心配かけたけど、俺は無理矢理休暇をもらったおかげでまた曲を書けるようになったし、夢に一歩近づくことも出来た。本当にありがとう」
関「こいつらが色々とやってくれたおかげで、こっちは久しぶりに泣いたけどな」
聡介は彼らより一足先に星に戻り謝罪会見の準備から、地球にいるSaturNを一目見ようと大渋滞が起きてしまった謝罪で宇宙公共交通機関本部にまで赴いていた。
加えて今回の騒動を含めて、地球にいい顔をしない関係各所への謝罪にも不眠不休で奔走していた。
ネ「迷惑をかけすぎると思って、事前に所属事務所は退所させてもらったんだ。だから元事務所の方には騒動についての取材とかは控えてほしい。そういうのは俺たちの新しい会社にお願いします」
聡介の発案で彼らは新会社を設立した。聡介がSEO、ネビュラがCTOを務める新会社は、他惑星との交流をより推進し円滑にするサービス会社だった。
音楽関連の仕事に富んだ会社である方がSaturNにとって良いのではないかとも考えた聡介だが、それでは以前所属していた音楽を志す若手を育成する事務所に仇を成すかたちになってしまい角が立つ。そこでSaturNを広告塔として活かしつつも敵を作らない音楽業界とは異なる業界に参入することに決めたのだ。
関「SCTとも正式に業務提携することになりました。傘下には、地球に来た宇宙人をサポートする地球のサービス会社も入ってくれました。それもこれも、皆さんの温かいお言葉や鋭いご指摘があってこそです。この度はこのような騒動を起こし、世間をお騒がせした上多大なご迷惑をかけてしまい大変申し訳ございませんでした」
サキとネビュラに一連の行動に関して理由があったように、ヴィルゴが二人の計画にのったのにも理由があった。勿論関係者席を得られるからという邪な気持ちも大いにあったが、機転の利いた彼の交渉と決断によってSCTには利益がもたらされた。
ヴィルゴは二人にSCTのもう一つの仕事である流星群生成を彼らのライブの演出に組み込むことを承諾する代わりに、赤字続きで経営が困窮していたSCTのイメージキャラクター、つまり広告塔になるように頼んでいた。
先代のオリオンズベルト氏が若くして亡くなったこともあり、後を継いだセイリーンは会社経営の経験が浅かった。どんどん傾いていく会社に頭を悩ませつつも、責任感の強い彼女が誰かに相談出来ずに困っていたことにヴィルゴは気がついていた。
そのおかげでクビにならなかったと報告に来た彼を見て、聡介はSCTとの正式な業務提携を持ち掛けたのだった。
SaturNが新たに作詞作曲したものを収録したCDをSCT利用者に配布すれば、ファンによって利用客が増加する。配布してもらえればその分直接的な儲けは出なくても、多くの人にSaturNの曲を知ってもらえる。そうすればCDを買ってくれる人も増えていく。
互いにウィンウィンな話だったので、すぐにセイリーンは聡介のもちかけた話を承諾し業務提携に至ったのだ。
サ「あの日以来地球にも入惑星審査場が沢山建設されて、まだあまり日も経っていないのに沢山の人がSCTを利用して地球に遊びに行ってるよね」
ネ「ああ。地球に住む人たちも徐々にSCTを利用してくれてるしな」
サ「次回の放送時には地球に住むHAPPY GALAXYのメンバーをゲストに迎えることになってるから楽しみにしててね」
祐たちには迷惑をかけると思い、HAPPY GALAXYはあの日で解散にしようと考えていた。
けれど俺たちの考えを見破った拓馬が他のメンバーを引き連れて、SCTを利用し怒気を顕わに会いに来た。
まだ水色で統一された食堂しかまともに運営していない空っぽの会社に思いがけず乗り込んで来たのだ。
祐も樹も志音もニックも拓馬もみんな、迷惑なんかじゃない、また一緒にライブがしたいと言ってくれた。
サ「報告は以上になります。俺たちからも改めてお詫び申し上げます」
サ・ネ「「多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたこと、誠に申し訳ございませんでした」」
何故か拍手が巻き起こった。
ラジオブースからも、流れるコメントからも、そして二人には聞こえない放送局の外や放送を聞いてくれている人の自宅、そして今回迷惑を被った関係各所からの沢山の拍手が。
彼らの夢に対する思いが、理解され受け入れてもらえつつある。そんな音だった。
関「それでは最後に、BGMと化していたこの新曲をお送りします」
聡介の合図でサキとネビュラは息を揃える。
サ・ネ「「SaturNでTie Stars。どうぞ」」
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