第40話 明後日!?
彼と別れた後二人が向かったのはサキの居候先である祐の家。計画を練り終わってすぐにバンドメンバーには彼の家に集まっておいてもらうよう連絡をしていた。
「紹介するね、俺の相方のネビュラ・カメロパルダリス。地球では地球名の結星波人だから、波人って呼んであげて」
「よろしく~」
イベントに出演したくても、しばらく先までそのようなイベントの募集がないことに愕然としていた祐たちにとある提案をする。
「出演出来るイベントがないなら、そのイベントごと俺たちで企画しちゃえばいいって思って」
「そのイベントでお前らと俺たちでコラボだ」
全員大賛成だったが、拓馬が会場の懸念をする。それを予測していた二人は事前に話しあった通り、「ここは任せた」と言わんばかりにサキはネビュラに視線をやる。
「イベント会場は何とかなると思うぞ」
ネビュラはそう言って拓馬から借りた携帯である人物に電話を掛ける。それは――
「もしもし幸人さん?、波人だけど。ちょっと、いや結構な頼み事があるんだ」
念押ししておくが、いつも急なのがSaturNなのである。
かなりの時間通話して、やっと電話を切ったネビュラにサキが「どうネビ君」と緊張した面持ちで尋ねた。サキと同じように緊張しながら答えを待っていたバンドメンバーをサキを含めて見回すと、ネビュラはグッドサインを見せる。
「イベント会場設営とその許可だけじゃない。あいつの経営する建築会社が元々催す予定だった大規模なイベントを前倒し開催にしてくれた。そこでイベントの前座として俺たちのコラボが決定した」
幸人は事情を聞くと機転を利かせて最高のライブ会場を提供してくれた。
「なあ波人、その人に直接会ってお礼を言いたい。今度会わせてくれないか?」
律儀な発言をしたのは祐だった。他のメンバーも同じ気持ちらしい。みんなの視線がネビュラに集まる。
「勿論。俺も電話じゃなくて直接お礼言いたいからな」
「よぉし、会場は決まったことだし、俺たちも早速準備に取り掛からないと」
イベント会場として幸人から聞いた場所をネビュラが拓馬に伝える。彼は教えられた住所を検索し、あまりの規模の大きさに口をあんぐりと開けた。
「今までのライブとは比べ物にならないほど規模の大きいものになりそうですね。これでは念入りな広報活動を要します。僕たちだけで可能かどうか不安になってきました」
拓馬が顎に手を当てながら、広報活動についての懸念を口にした。
「今回は俺たちの写真もチラシに載っけたらどうかな」
「いい案だね、樹」
樹の提案にニックが賛成する。
「紙媒体だけでの広報にこだわらないで、SNSに投稿しちゃうっていう手もあるんじゃないかい?」
「ああ、確かに」
「だけどそれ咲と波人的にNGなんじゃないか?」
祐の指摘にはっとする志音だったが、「もうみつかっちゃったから気にしなくていいよ」と笑って答えるサキ。
「一回捕まったんだよ。お前らとのバンドの許可を得ようとしたけど即却下されて、もうみつかってるからその点はもう気にしなくていいけどライブすることがバレるのはまずいから、ライブの宣伝する時俺たちのことは適当にゲストとかにしておいてくれると助かる」
ネビュラが言葉足らずなサキの発言にそう付け足した。
「俺たちは明後日星に帰らなきゃいけないんだ。だからその前にこの星でみんなと思い出を作りたい」
「「「「「……明後日!?」」」」」
五人が一様に驚きの声を上げるが、この手の反応にサキもネビュラも慣れてしまっている。
何せ彼らは急だから。
「嘘でしょっ?、明後日って…それじゃあライブ本番は遅くとも明後日にはやるってことですか?」
「待って、卒倒しそう」
「大丈夫!?、いっくんしっかり」
「…かなり驚きましたけど、明後日帰るというお二人のマネージャーさんの約束を守るにはそうするしかないですよね」
「ああ。そのためにかなり大胆かつ無茶な行動に出たってわけ」
「ネビ君の言う通り。それにね、単なる思い出作りってだけじゃないんだ。これは俺の夢に一歩近づけるかもしれない希望の詰まった特別なライブでもあるんだ」
「どういうことだよ咲」
伏し目がちに話すサキに祐が疑問をぶつける。
「それは…」
☆ ☆ ☆
明後日に迫ったライブに向けて両グループはその夜から猛練習に励んだ。
祐たちの持ち曲とサキが新しく作曲したオリジナル曲を合わせれば、一つのアルバムが完成するほどの曲数となった。その中からイベントで歌うのは選抜した4曲と、サプライズ用に用意した1曲の全5曲。
練習と練習の合間に、ニックの提案でSaturNと祐たちのバンドのコラボ名を考える流れになった。
「そもそもなんだけど、このバンドって名前ないの?」
「あーそれ聞いちゃう?」
樹が意地悪な笑みを浮かべながら祐を見やる。憮然とした表情で答えようとしない祐の代わりに、悪気のないニックがうっかり口走ってしまった。
「俺たちFire Spirisです」
「燃える魂的な意味合いでつけたらしいんだけど…ぷっ」
笑いを堪えきれずに噴き出す樹につられるように、志音も涙目になって笑いを堪えている。
「俺たちがつくところが最高にツボなんだよね」
笑いが止まらない年上組とは反対に、拓馬とニックはその名前をなかなか気に入っているようだった。
「これはこれで味があっていいと思ったんですけど」
「二人に散々笑われた祐自身が却下しちゃって」
次こそは恥ずかしくない名前にするんだと祐が意気込むも、なかなかいい案が出ず名無しのままここまで来てしまったという。
「ならコラボチームの名前、祐が考えれば?」
そういうことなら良い機会だしリベンジしろよ、とネビュラが提案するも笑い転げる樹と志音の顔が浮かぶのか祐は不機嫌そうに眉をしかめている。
「ネーミングセンスが心配なら誰かと一緒に決めたらいいんじゃない?、ほら咲とかとさ」
ニックが背中を押したこともあり、祐とサキの二人でコラボチームの名前を考えることになった。
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