美容整形化科
南サザ
第1話
「ああ、今日も全然だめだったわ」
ミサトは愚痴りながらハイヒールで闊歩していた。
気合をいれて合コンにいったものの、気に入った相手を見つけられなかったのだ。
ミサトは、年は30に届くほどだった。
周りの友人たちから、やれ結婚した、やれ子どもが生まれただ、そんな連絡がひっきりなしに来て、気持ちはかなり焦っていた。
コンビニで缶ビールとおつまみを購入し自宅に帰る。
ポストに見慣れないチラシが入っていた。
≪容姿も、性格もあなたのお望みのままに! K美容整形化科≫
「からだだけじゃなくて、性格まで変えられるの?ほんとに?」
ミサトはチラシの内容に半信半疑だったが、それでも今の鬱屈した現状をなんとかしたい一心で縋ってみることにした。
ビルの二階の中にあるクリニックは、女性が好きそうな内装で、美人の受付嬢やナースが笑みをふりまいている。
診察室に入ると、医師がにこやかに挨拶した。
「お元気そうですね、今日はいかがされたんですか」
「本当に顔だけでなく、性格も変えられるの?」
ミサトは医師に尋ねた。
「もちろんですよ!唇の厚さから足の長さどころか、せっかちな方をおっとりな方に、動物嫌いを大の犬猫好きにだってできます。」
「そうなの?男性が好みそうな性格に変えられるかしら?もっとおしとやかで、守ってあげたくなるような女になりたいの。それに胸だってもっと大きくしたいし、顔もそれに合わせて可愛らしい印象にしたいの」
「お安い御用ですよ、ただし条件がありましてね。記憶修正手術も一緒に受けてもらうことになります。なに、うちの技術の秘密は極秘でしてね。何の手術を受けたかはすべて忘れてもらうことになります。」
ミサトは悩んだ。だがこれで自分が変われるのなら安いものだと、化科手術をうけることにした。
「手術は成功ですよ!」
目を覚ましたミサトに医師は声をかけた。
「手術?なんのことかしら」
ベッドから体を起こしたミサトは言った。
「なに、ちょっとした美容のための手術ですよ。ほら鏡を御覧なさい」
ミサトは、鏡をのぞきこんだ。なんだか自分が理想の姿そのものに見えるし、自信がわいてくる心地がした。
「ありがとう。大満足だわ」
ミサトは喜んで、部屋を出て行った。
部屋に残ったナースはおそるおそる医師に言った。
「先生、そういえばあの患者さん、前もここに来ませんでしたか?」
医師は笑って言った。
「はっはっは。その通りだよ。
彼女前もうちに来て、自分のひっこみじあんなところと、地味な見た目をなんとかしてくれっていいにきたんだ。たいていの患者は、理想通りの自分になりたいとうちに来て、満足して帰っていく。だがまたしばらくすると別のものに興味がうつって、今度は別の願望通りに変わりたいとやってくる。結局、人間というものは簡単に手に入ったものは気に入らんものなのさ。
まあそのおかげで、うちは商売繁盛だがね。」
美容整形化科 南サザ @yput
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