第9話 これが私の生きる道
小耳に挟んだ〚アダルティなサイト〛を検索してみる。
一時期、世界的に有名な動画サイトでも、小生意気な小学生の配信者が話題になったけど、私が前にいたサイトでも、女子中高生がお小遣い稼ぎに胸をチラ見せしながら、配信していたりする。まったく世も末だわ。
でもそこらあたりを、ちゃんと住み分けしてるサイトなんだろうな。ちょっと期待。
さっそく登録すると〚アダルトへ〛の表示。
ジャズピアノが流れるバーで、イケメンバーテンダーが配信してる姿を想像しながら〚アダルトへ〛の表示をクリックした。
『いゃぁぁぁ!!何コレ?!!!』
思わず両手で眼を覆った。
もちろんそれなりに経験は積んでるし、一応BL漫画家を目指していたんだから、先輩方の描く、かなり際どい描写にも慣れているつもりだった。
でも、男女のそういうシーンは漫画ですらあまり見た事が無い。ましてや実写だなんて…
『ふ〜っ…』
指の隙間から見える映像がプツンと切れた。
これより有料という文字で我に帰る。
いまだにドキドキする胸を押さえて、この変なサイトをクローズしようとした時……
卑猥な動画のサムネの下に普通の女性の笑顔が並んでいた。
『なーんだ。普通の枠もあるじゃない』
確かに前のサイトよりは過激だけど、あちらでも普通に、胸の谷間を強調してる配信者は沢山いたんだし……
気を取り直してその清楚系の女性のサムネをクリックする。
おしとやかな雰囲気のその女性。
でも薄いオーガンジーのブラウスから黒い下着が透けてるじゃないの。
その時、手に持った教師が使う様な指示棒を、彼女が落とした。
拾おうと屈んだ拍子に、ミニタイトから彼女の太ももがあらわになった。
一斉に投げられるシャンパンや花火。流れるキラコメ。
『そういえば……』
前のサイトで暴露枠をしていた時の事を思い出した。
基本的には女性リスナーが多かった私の枠。
その時よく言われたのが〚どうしたら、そんな綺麗なスタイルを維持できるんですか?〛
『元が違うんだから仕方ないじゃん』
そう言いたいのを堪えて、ストレッチとかヨガとか頑張ってるのよ〜なんて言ってみた。
でも〚私も頑張りたいから教えて〛なんてしつこかったから、1度だけ枠で披露した事があったのよね。
ヨガマットの上にレオタード姿でうつ伏せになると、女豹のポーズで決めてみせた。
『え?なんで?』
いつもは女性投げ師たちから〚よく言ってくれた〛と、飛ぶアイテムがなぜか男性リスナーから飛んできたのよね。
あの時は意味がよく分からなかったけど、そういう事か……。
私はさっそく、このサイトでの配信を決意した。配信名はAYAKO。
特にお金が欲しかった訳じゃないから【無料だけでいいよん♡】というタイトルで。
無料だけと銘打ったからか、閲覧数は飛躍的に伸びた。
基本的には【忍者】や【クラッカー】が飛び交う中で私は時にはレオタードで、時にはタンクトップにショートパンツでヨガやストレッチに精を出した。まぁ普段やってるしね。
無料だけって言ってるのに、私の気を引こうとシャンパンや、プレミア限定のダイヤを投げてくれるリスナーたち。
私の事を『大好き♡』だとか『今日もお美しい✨』とか言ってくれる男性リスナーに囲まれて、気づいたら『あっ』という間に1年半の時が過ぎていた。
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