第4話 トライアングラー
頑張って投げ続けた結果、レオのランクは上がっていき注目を浴びるようになると、彼の枠を訪れる人も増えてきた。
レオのリスナーに対する塩対応や、Sっぽい発言の虜になる女性リスナーが大量発生しだしたのよ。
正直、投げてくれるリスナーには悪い感情は持ってないのよ。いずれトップに登り詰める私のダーリンの養分みたいなもんだから。
でも他の無課金勢は正直言って邪魔!
せめてコメ勢って言われるぐらいのコメントセンスがあるならともかく、かまってちゃんばっかりだもの。
まぁレオがその辺りはサラッと、受け流してくれてるから良いけど、ムカつくのはあのピノコって小娘よ。
レオは私の事をいつも『アヤコはこの枠の女神様だからな』って言ってくれる。
でもピノコに対して『バイトが忙しいのは分かるけど…ちゃんと寝ろよ』と優しく声をかけたりする。私に対してとは違う、少しいたわる様な声音。
無課金のくせに【余裕のある方は有料アイテムお願いします】なんて定期打つなら自分でも投げなさいよ!なんて悪態をつきながら、それでも必死でレオに投げ続けた。愛情と悔しさの入り交じったファンタスティックを。
悔しさや『私が居ないイベントで勝てるもんならやってご覧なさい』って気持ちから、今回のイベントでワザとイベラスに行かなかった。結果は3位。
当然落ち込んでるかと思ったら『最高ランクでのイベントでこの順位はすごいね👏』なんて、まるで自分の力の様に喜ぶピノコに腹が立つ。全部、前日までの私の頑張りのおかげじゃないのよ。
でもやっぱりレオは違うわ。
ちゃんと私に、プレゼントを贈りたいからと住所を聞いてきた。
彼は…彼だけは私の事を分かってくれてる。
そんな、喜んだり怒ったり感情が定まらない日々を過ごしている内に、私は30歳の誕生日を迎えた。
私あてに届いたプレゼントが、部屋に運ばれて来る。
エルメスだのプラダだのの、紙袋に包まれたプレゼントの山の中に、カルビーのポテトチップスのダンボール箱。
下手っぴに貼られたガムテープを剥がすと中から、サイトのキャラクターのチンパンジーのぬいぐるみが出てきた。
誕生日プレゼントにぬいぐるみなんて貰った事は、物心ついてからは1度もない。
私の周りの人たちは『ぬいぐるみなんて』と笑うかもしれない。
でもこれは彼にとっては勲章に値するものなのよ。それを私の誕生日に贈ってくれた……
ぬいぐるみを抱きしめ、頬ずりする私の目に飛び込んできたのは、ダンボールに貼られた宅配便の送り状。差出人の欄にレオの住所が書かれていた。
『これって遠回しに会いに来いって事よね』
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