第3話 Love You Only

『結城さま……』

レオという名前のアイコンをタップして、恐る恐る枠に入ってみたの。

『はじめまして!アヤコちゃん?良かったら仲良くしてね』


よく大好きだった漫画がアニメ化したり実写化すると、声優のせいで台無しだとか原作レイプだとか騒いでたりするけど、こんなに結城様のイメージにピッタリの声優や役者なんていないんじゃない?


ポーっと見とれてコメントも打てずにいる私にレオが語りかけてくる。

『アヤコちゃん?どうしたのかな?』

『良かったらコメントして欲しいな。あとフォローもしてくれたら嬉しいな』


見とれてコメントが出遅れた事を見透かされたようでなんだか悔しい!

『アヤコちゃんなんて馴れ馴れしく呼ばないでよ!子供じゃあるまいし』

レオは一瞬だけ面食らった様な顔をしたけどすぐにニヤリと笑うとこう言ったの。

『うっせーよバーカw』

『じゃあ今日からお前の事はアヤコって呼ぶからな。分かったか!』


心臓を鷲掴みにされるってこんな感じ?

今まで誰からもそんな態度取られたこと無かった私には衝撃的な出会いだったのよ。


それからというもの…結城様に似たレオが好きって気持ちから、レオそのものの虜になるまでには大した時間はかからなかった。


まだリスナーの少なかったレオとの時間は楽しかったわ。でも雑談の中で彼の学歴と職業が私の新たな悩みの種になったのよ。


30歳目前になってくると、部屋には見合い写真が積まれているようになってきて……

大臣の息子だの某国の第3夫人の息子だの興味無いつーの!


メイドに相談してみたけど…

〚いっその事、彼を執事にして時々夜伽させるってのじゃだめですかね?〛

違ーーーうっ!そういう事じゃないの!!

私はレオと対等な恋人同士になって、ゆくゆくは結婚してってのを夢に見ていたのよ。


そんな時、唯一レオの事を話したメイドが部屋にやってきた。

彼女は気のいい田舎娘ではあるけれど、下世話な話が大好きなのだ。


『お嬢様知ってます?最近はYouTuberとか配信者とかを結婚相手に選ぶアイドルや女子アナが増えてるらしいですよ』

女子アナの結婚相手といえば、以前は野球選手やIT企業の社長が定番だったのにね〜と彼女が続けた。

彼女曰く、人気YouTuberや配信者はそこらの社長より稼ぐって話だった。



その日を境に、私はレオにアイテムを投げ続けた。

早くトップの座に立って、いつかライバー事務所を設立して、社長になったら親に結婚を認めさせる事も夢じゃない!


私のそんな気持ちをあざ笑うかのように、運命の歯車が変な方向に進んで行った。

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