第2話 清楚系美少女に口を塞がれた
「付き合い始めたのですか?」
翌朝。いつも一緒に登校している大原と待ち合わせ、学校まで一緒に行く。
「うん、告白された時は驚いたよ」
相川からは付き合い始めたことを隠さなくてもいいと言われたので俺は大原に話した。
「わ、私も驚きました。相川さんは紺野くんのことが好きだったんですね」
学年1美少女が俺のことを好きであったことに対して俺も大原も同じことを思う。
「お似合いだと思いますよ。彼女さんがいるなら私と登校しない方が良いのでは?」
「あっ、確かに……」
お試し付き合いだとしても彼女がいるのに他の女子といるのは間違っている気がする。
「ふふっ、では、私は先に行きますね。私が一緒にいると相川さんが嫉妬しちゃいます」
また放課後、部室でと言って大原は走っていった。
学校に着き、下駄箱で靴を脱いでいると後ろから誰かに「おはよう」と声がした。
後ろを振り向くとそこには笑顔で小さく手を挙げる相川さんがいた。
「おはよう紺野くん。今日、一緒に帰れる?」
「おはよう。今日は、部活があるから一緒に帰るとなると遅くなるかな」
「ん~、じゃあ、終わるまで待ってるよ」
「うん、待てないと思ったら無理せず帰ってもいいからね」
「ふふっ、大丈夫。待ってるよ」
同じクラスなので、相川さんと一緒に教室へ向かうことにした。
──────付き合い始めて2週間後
放課後。教室から部室へと大原と一緒に向かった。今日は、部長もいて合計8名での部活。いつもより人数が多くても個人での活動だが。
「相川さんとはどうです?」
この前、旅行に行った時に撮った写真の整理をしていると目の前に座る大原が俺に聞いてきた。
「まぁ、付き合い始めたしまだ不安なことが多いかな。俺、今まで誰とも付き合ったこととないから」
「そうなんですね。困っていることがあれば私に相談してください。お友達として助けになりますから」
「ありがとう」
「ところで、最近、相川さんとお昼、一緒に食べてますよね?」
「なんで知ってるの?」
「知ってますよ。相川さんが紺野くんに一緒に食べようと誘っているところを見かけましたから」
最初、相川さんに「一緒に食べよう」と誘われた時、その姿を見た教室にいた人達が、「どういう関係?」と言いたげな視線をこちらに送ってきていた。
相川さんはクラスで人気者だから一緒にいると目立つのはわかっていたが、たまに殺気を感じるような視線を送られる。
「紺野くん。女の子は不安になります。ですから、行動には気をつけてください」
「大原は恋愛の先輩だな」
「先輩だなんて……私も誰とも付き合ったことないですよ?」
「えっ、ないんだ。よく告白されてるって聞いたことあるからてっきり彼氏いたことあるのかと……」
「ふふっ、ないですよ。告白されても断ってきましたから」
大原も相川さんと同じくらい男子から人気で告白をされたことがあるらしい。
「そうです、相川さんとクレープを食べに行ってはどうですか? 相川さんは甘いものが好きだと聞きましたよ」
「そうなのか。教えてくれてありがとな」
「いえいえ」
付き合っているのに俺は相川さんの好きな食べ物を知らなかった。
付き合って2週間経ち、一緒に昼食、一緒に帰ることはあるが、相川さんとはお出掛けしたりしたことがない。誘ってもなぜか断られる。
***
部活が終わり、待ち合わせとしていた教室へ行くと彼女は1人で俺を待っていた。
「お待たせ」
「あっ、紺野くん。部活、お疲れ様」
写真部なのでお疲れ様と言われるほど大変なことはしていないが。
昨日、初めて知ったが、相川さんは、部活動はしていないらしい。なので俺が来るのをここでずっと待っていたのだろう。
「あのさ、相川さんはクレープ好きだったりする?」
「クレープ? クレープは好きじゃないかな。甘いもの苦手だから」
「そ、そっか……」
ということは大原の聞き間違いということだろうか。まぁ、聞き間違いは誰にでもあるので大原に明日、嘘だったじゃないかと責めることはしないが……。
「か、帰ろうか……」
「うん」
相川さんとはまだ話すのに緊張してしまう。大原と話すことが多く、女子と話すのに緊張するとかではないが。
相川さんも緊張しているのか教室での雰囲気と違って俺といるときはあまり話さない。
「紺野くん、去年も同じクラスだったよね? 私、あの時から好きだったの」
「えっ、そうだったの?」
帰り道、相川さんからそう言われて驚いた。まさか去年から好きだったと……。全く好意に気付かなかった。
「う、うん……。ほんとはバレンタインで告白するつもりだったんだけど勇気がなくて……」
勇気がなかった。けど、今回、勇気を出して俺に告白してくれたのか。
「ねぇ、一緒に写真撮ってもいいかな?」
「いいけど……」
立ち止まった場所は時計台がある場所でそこで撮ることにする。
「あっ、連絡先交換しよっ。写真送る」
相川さんと連絡先を交換し、先ほど撮ったツーショットを送ってもらった。
撮った写真はとてもぎこちない笑顔の自分が写っていた。
「じゃ、私こっちだから。またね」
「うん、また明日」
相川さんと別れると俺は、家まで1人で帰った。
***
翌日。今日も部活が終わるまで相川さんは教室で待っていてくれるらしい。
部活中、俺は、喉が渇き自販機に行こうかなと思い、イスから立ち上がる。
「紺野くん、どうしました?」
隣でカメラで撮った写真を見ていた大原は顔をあげて俺に尋ねた。
「自販機で飲み物を」
「私も喉が渇きましたので一緒に行ってもいいですか?」
「いいよ」
部長に飲み物買ってきますと一声かけてから大原と部室を出た。
グラウンドからは野球部、サッカー部の人達の声が聞こえてくる。
「パソコン見てると疲れますね」
「うん、部室ではスマホ禁止だからな」
廊下に出たら使用可能だが、部室では禁止というルールがあるためパソコンを使わざるを得ない。
自販機で飲み物を買った後、俺はあることに気付いた。
「あっ、俺、教室に明日提出するノート忘れたわ」
「それは大変です。取りに行きますか?」
「うん。あっ、大原は先に戻ってていいよ」
「いえ、私もついていきます。もう少し休憩したいので」
「ありがと。ついに真面目な大原もサボりたくなったのか」
「ふふっ、たまにはいいじゃないですか」
2人で自分達のクラスの教室へ向かい、教室の前に着くと教室から笑い声が聞こえてきた。
相川さんとの待ち合わせ場所だが、まだ残っている人がいるのだろうか。
相原さんがいるか気になり中を覗こうとしたその時、後ろから大原に服の袖を引っ張られた。
急に引っ張られたので「えっ?」と声を出しそうになったが、大原に手で口を塞がれた。
状況が把握できず、後ろを振り向く前に大原が耳元で囁いた。
「静かにできます?」
静かにする理由がわからなかったが、俺はコクコクと頷く。すると、教室から相川さんの声が聞こえてきた。
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