【完結】学年1美少女に告白されOKしたが、その告白が罰ゲームだと知った
柊なのは
本編
第1話 嘘の告白
「写真に納めることはいいことですよ。忘れていてもこれを見たら思い出せます」
放課後の部活動の時間。彼女は俺、
「嫌な思い出も?」
思い出は、いい思い出ばかりじゃない。思い出したくないものもある。
「嫌な思い出ならまず写真を撮らないのではないですか? 撮っても捨てると思いますが」
「まぁ、そうだけど。例えば撮った時には最高の思い出でも後から思い出したくない思い出になったりするじゃん。その時はどうするんだ?」
撮って、後から思い出したくない時の写真になった時、残したいとはあまり思わないが、彼女のいうことはたまにある。悪い思い出がいい思い出になるパターンは。
彼女は、ん~としばらく考えた後、答えが出たのか口を開いた。
「その時は、消すか破るかですね。見たくもない写真であれば」
そう言って彼女はアルバムをパタンと閉じてイスから立ち上がった。
ここは、写真部の部室。部員は何人かいて、どの曜日に来てもいいことになっている。かなり自由な部活だ。ちなみに今日は、俺と彼女しか来ていない。
長くて綺麗な髪を持つ彼女の名前は、
同じクラスといっても教室ではお互い違う友達と一緒にいるため、部活以外ではあまり話すことがない。
教室なんかで話したら男子から痛い視線が向けられそうで怖い。
「紺野くん。好きな人いますか?」
帰る準備をしていると彼女が急にそう尋ねてきた。恋愛トークになる感じは全くなかったので俺はすぐに答えられなかった。
「写真の話から急に恋バナ?」
「はい、恋バナです。私、友達と恋バナとかしたことがなかったんでしてみようかと……」
「なるほど……? 俺は、好きな人いないよ。大原はどうなんだ? 好きな人いるのか?」
興味本意で聞いてみると大原は、口元に手をやり、小さく笑う。
「そうですね、聞いたからには私も言うべきですね。私はいますよ、好きな人」
清楚系女子が誰を好きなのか非常に気になるが、簡単に部活仲間兼友達には教えてはくれないよな。
「そうなんだ。ちなみに同級生?」
「えぇ、同級生です。優しくて一緒にいると落ち着きます。さて、そろそろ帰りましょうか」
「そうだな。今日も駅前まで一緒に帰るか?」
「はい、一緒に帰りましょう」
荷物を持ち、机にある鍵を持ち部室を出る。下校時間数分前でもあるので廊下はシーンと静かで足音がよく響く。
「クレープが食べたいです。疲れた後は、甘いものです」
「わかる。クレープ想像したらお腹空いてきた」
「ふふっ、ですね。食べたくなりました」
「じゃ、駅前のクレープ屋に食べに行くか?」
「いいのですか?」
「もちろん、お付き合いしますよ、大原さん」
「ふふっ、どうして急に敬語なんですか。ありがとうございます、では、行きましょうか」
部室の鍵を閉め、2人で下駄箱へと歩いていく。彼女とこうして部活が終わった後に帰るようになったのは3カ月前の夏。
─────3ヶ月前。
「あら、今日は紺野くんだけなんですね」
1人、部室で次はどんな写真を撮ろうかと考えながらパソコンで調べものをしているとガチャと扉が開き、大原さんが中に入ってきた。
「大原さん……うん、今日は部長も来てないみたい。3年生は校外学習とか言ってたしそれでいないのかも」
「そう言えばそんなことを言ってましたね」
荷物を置き、彼女は俺の横に座ってパソコンを覗き込んできた。
「何を調べてるんですか?」
「次、どこで撮ろうかなと……」
「なるほど、私も見ていいですか?」
「どうぞ」
そこからは下校時間ギリギリまで彼女と、ここで撮りたいとか、こういう写真を撮ろうとかそういう話で盛り上がっていた。
高校1年から1年経ったが、彼女と話したのはこれが初めてだった。
理由としては同じ部活の部員といってもこの部活は基本1人で何かすることが多いかったからだ。話すといっても部長か副部長ぐらいだ。
「そろそろ下校時間になりますね」
「あっ、ほんとだ。今日は、楽しすぎてあっという間だった」
「私もです。あの、まだ話し足りないので一緒に帰りませんか?」
この日からだ。部活に行く日程を合わせて一緒に部活に行き、そして帰りは一緒に帰るようになったのは。
***
「紺野くんはどのクレープにします?」
「そうだなぁ、甘いものがいいかな。たまにおかず系食べるけど」
「私も甘いものがいいです」
下駄箱で靴を履きながらまだクレープ屋に着いてもいないが、どれにするかという話をする。
靴を履き終え、彼女が靴を履けるまで待っていると後ろからこちらに向かって誰かが走ってくる音がした。
「こ、紺野くん!」
「相川さん?」
後ろを振り返るとそこにはゆったりめのツインテールの髪の女子が立っていた。
彼女の名前は、相川奈々。クラスの中心人物的存在で男女共に人気が高い女子だ。
「あ、あの……今から話せないかな?」
「急用?」
「う、うん……できれば2人で……」
彼女は顔を赤くしながらそう言った。どうやら隣に大原がいたのでここでは話せないようだ。
「私は構いませんよ。紺野くん、クレープはまた今度で」
「あ、あぁ……ごめんな、大原」
「いえ、急用ならしょうがないです。では、また明日部活で、紺野くん」
「うん、また明日。大原」
大原は、背中を向けて校門の方へと1人で歩いていく。
「ここだと人が来ると思うから外に出て校舎裏で話してもいい? 話はすぐ終わるから」
下校時間までには話を終わらせるとのことで俺は相川にわかったよと言う。
彼女についていき、校舎裏へと移動すると、相川は、俺のことを真っ直ぐと見てきた。
これ、なんか告白する感じ? いや、それか今から喧嘩っぱやい人達がここに来て俺をボコボコに……いやいや、考えすぎだな。
けど、学年で1番モテる女子に話があると言われて人気のないところにわざわざ移動した。これはただの話じゃないのはわかる。
「話って?」
変に期待して緊張しても恥ずかしいので落ち着いて彼女に尋ねる。
「私、前から紺野くんのことが好きでした! 付き合ってください」
顔を赤くしながら彼女は勇気を出して俺に告白してきた。
(こ、告白!? お、俺に!?)
予想が的中し、一瞬聞き間違いかと思ってしまった。
「う、嬉しいんだけど……俺、相川のこと何も知らないし……」
好きでいることは嬉しい。けど、俺は本当に彼女のことを何も知らない。
「なら、これから知っていけばいいよ。だから……付き合ってください」
相手のことを知ったら好きになれるのだろうか。恋をしたことも誰かと付き合ったこともない俺は、そう思い、付き合う選択肢を選んだ。
「お試しからなら……」
返事をすると相川は、パッと顔を明るくさせて両手で俺の手を握ってきた。
「や、やった! よろしくね、紺野くん!」
「あぁ……」
この日、俺に彼女(仮)ができた。けど、この時の俺は、まさかこの告白が罰ゲームだとは思ってもいなかった。
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