17話 大会前日

 大会に合わせ、ギルドの依頼を消化する。

そこで優先したのは長い間、残っている依頼から。

つまり何時も通り、

人気のない依頼を大量に消化した。



☆☆☆☆


パーティー


シルバー:

アルマ、カレン:魔法剣士


アダマンタイト:

ケイ:剣士


ゴールド:

チャロ:魔導師

エッバ:弓術師


シルバー:

マルグレット:魔導師

ヤナ:戦士

ドロタ:僧侶



番号と点数

①92

②80

③68

④58

⑤46

⑥34

⑦22

⑧11


☆☆☆☆



 広いリングで、場外負けもあるらしい。

その方が盛り上がるのだとか。

選手には①から⑧番までの番号は割り当てられる。

敵の選手を倒すと番号に応じて点数がもらる。


 二人倒すと+1点。

それ以降は一人倒すごとに+1点がもらえる。

一番点が多いとその試合のMVPである。



 魔馬で王都まで出発する。

パーティーの顔合わせは王都で行う予定だ。


 道中の絶景を楽しむ、

それに珍しい生き物も沢山いた。

カレンがとても喜んだ。

王都の城壁が見えて来た。

門前には凄まじい行列が出来ている。


 参加者は門の端、

小さな門から特別に入れて貰えたので助かった。

魔馬を厩舎に預けて中に入る。


 巨大な都市に私とカレンは思わず感嘆の声を漏らした。

お洒落な建物、綺麗な石畳。

入口から見ただけで思う、

迷いそうな複数の道。

何より人の数が多すぎる。

活気に満ち溢れ、次々と人々が横切って行く。



 待ち合わせ場所を探して彷徨う。

流石王都だ、広い。

ずっとご飯を食べて無かったので、

先にカレンとお昼を食べた。

そこで道を訊ねて、目的地に到着出来た。


 そこにはクリステルと六人の女性が立っていた。

皆自信に満ち溢れた表情をしていた。


「彼女がリーダーの?」


「アルマよ。よろしく」


「まあ、精々期待してるわ。

精々、恥をかかないようにね」



 八人で受付に行って登録を完了させた。

彼女等は個性的だった。

軽い挨拶を済ますと、

慣れ合わない性格の様で試合までは自由行動で解散となった。

折角なので、クリステルと都市を回る。


 道中、様々な話声が聞こえた。

興奮気味に俺借金して金貨10枚借りたんだぜ、

とか。いやー、家宝売っちまったぁぜぇ、とか。

俺なんか妻を担保に金貨20枚も借りちまった。

などとイカレタ声が聞こえてきたが、

聞かなかった事にした。



 そんな事よりカレンだ。

跳ねるような足取りから、

凄く嬉しそうなのが伝わって来る。


「カレンは何処に行きたい?」


「市場!」



「よっし! それじゃあ案内してあげる」



 市場はさらに凄かった。

獣人や亜人。様々な人々で溢れかえっている。

ジッとこちらを見ている者達がいる。


 私たちをカモにしたい連中と、

クリステルの護衛だろう。

そこでさり気なく近づいてきている男がいた。

すれ違いざまにぶつかって来て、弱々しく謝る。


 その男は、クリステルの鞄の中にあるはずの、

硬貨の沢山詰まった袋を持っていた。


 男の左肩にデコピンをした。

それに気を取れらた隙に、袋を取り返した。

そこで、護衛の男がスリの手を掴む。


「イデデデデ!」


「おい貴様!」


「な、なんなんだ! 俺が何を!」


「あれ?」「え?」



 私が護衛にウインクをすると察した様だ。


「こ、この辺はスリがいるらしいから気を付けろよ!」


「あ、ぁあ……わわ、分かってるって」



(現行犯で捕まえた方が良かったかな)



 クリステルの護衛は、

王都の衛兵とも面識があるようで、

コソコソと話すと男の後を付けて行った。

優秀な護衛で良かった。


 その頃、カレンとクリステルはアクセサリーに夢中だった。

目を輝かせてそれ等を見ていた。


(警戒心が無さすぎ……)



 その後も聖剣に手を触れる人が何人かいたが、

手の甲をペチンと弾くと逃げて行った。



 少し遠くで大声が聞こえた。

どうやらゴロツキが女性に何かしたようだ。

止めようと前に出た時、白髪の男が現れた。

周囲の女性が黄色い声を出す。


「アシュリー様よぉぉおお!」

「きゃぁぁああ!」

「素敵ぃ」


「「「ふぇげぴえぇぇぁあぽふぉぃぇぇぇん!」」」


 声にならない様々な声が複雑に混じり合い、響いていた。


「【フォーリングスター】のリーダー! アシュリーか!」



 アシュリーと呼ばれた男が声を出すと、

さらに黄色い声が多くなった。


「止めるんだ。そして今すぐに、その美しい女性を放せ」


「くっ、テメェは! うるせーオメェには関係ねぇんだよ!」


「関係ならあるさ……彼女と俺は目が合った」



「はっ! 等級オリハルコンだか何だかは知らねぇが。

俺がお前をオリハルコンにしてやるぜぇ!」


「愚かな」



 棘のメリケンで殴りかかって来る男。

白髪のアシュリーが華麗に剣を抜き、

男の意識を一瞬で奪った。

歓声が上がる。

まるで優勝したかのようだ。



(速い。けどまだ全然本気じゃない)


 その時、彼と目が合うと近づいて来た。


「君は勇敢にも女性を助けようとしていたね。

素敵だ。でも駄目だよ。

君のような美しい女性が危険な事をするなんて」


「大会に参加するのよ」


「それでもだよ。か弱い女性は等しく守る」


 言う事を言ったら去って行った。

特に何も言わずに離れたのは、

この場に居る女たちの鋭い視線があったからだ。

騒ぎが少し静まった頃にクリステルが言う。


「彼は優勝候補のパーティーの一人です。

あのゴロツキが言った様に等級はオリハルコン。強敵ですよ」


「へー、面白そうね」



 人ゴミに疲れたので、広場に来ていた。

木陰で仰向けになり休んでいると、

子供がゴツイ男に絡まれていた。

辺りが騒がしくなる。


 立ち上がった瞬間に黒髪の男がゴロツキの前に立ちはだかる。

その瞬間、黄色い声が聞こえて来た。


「ラフェエル様よぉぉおお!」

「きゃぁぁん! かっこいいぃぃぃ」

「抱いてぇ素敵ぃ」


「「「きゅぇぇえふぉぎびゃぇぇぴゃげぇぇじぇぇえ」」」


 複数の声が重なり合い、見事なハーモニーを奏でる。



「【ドラゴンスレイヤー】のリーダー。ラフェエルだ!」


 誰かがそう叫んだ。それを聞いて少し後退りするゴロツキ。

ラファエルと呼ばれた男は淡々と言う。


「おい、ガキを放せ。ゴミ屑野郎」



「へ、へんっ。【ドラゴンスレイヤー】か。

ここは王都だぜ。

ドラゴンが居ないのにノコノコ探しに来るとはぁ、

暇な野郎だ。

オリハルコン鉱石だがなんだが知らねぇが、俺がお前を発掘してやるぜぇ!」


 短剣で刺しに来る男。

黒髪のラファエルと呼ばれた男は剣を抜かずに、

拳で男を一撃で沈めた。

だがそこで終わらず、

さらにラッシュでボコボコにし始める。

ここぞとばかりに女性が寄って来た。


「もう止めて! ラファエル様の拳が汚れちゃうわ!」

「ちょっとずるいわよぉぉぉ!」


 抱き着いて止めようとする。

それに便乗して周囲の女性が寄って来た。

クリステルが真剣な表情になっていた。


「あれはぁ……」


「優勝候補のパーティーなんでしょ」


「え、ええ……その通りよ」



 その後、宿に到着した。

高額な宿で貴族が多かった。

私の服装が目立つのか貴族がジロジロと見て来る。

さっきの視線よりは幾分マシだ。


 ロビーで貴族の女性が群がっていた。

見て見ると金髪の男が居た。

クリステルが解説する。

【ゴールドキング】のリーダー、オズワルド。

オリハルコンで、優勝候補らしい。


 今年の大会には参加してないが、オリハルコン。

【スカーレットフラワー】リーダー、ニコラス。

どうしても外せない依頼があったらしい。

運が良いと少し喜んでいた。


 女性の反応からするに強くて金持ちの美男子なら、

貴族じゃなくても人気のようだ。



 カレンのお腹空いた様なので取り合えず夕食にした。


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