10話 アルマとカレン
カレンと一緒に都市へ戻ろうと歩いていると、
四メートルほどのソードテールが現れた。
「アルマ……ッ」
「大丈夫。下がってて……」
怯えている。仕方ないカレンは子供。自分が前に出た方が良い。
「カレン。これは凶悪な魔物、ソードテール。
一人の時は絶対に逃げてね」
「う、うん……ア、アルマ危ない!」
不意打ちで放った尻尾の攻撃を片手で軽々と止める。
そして、手のひらに魔法を発動させる。
「《ファイアーボール》」
それは放たずに手のひらに維持し、優しく魔物に触る様に接触させる。
するとソードテールは弾け、肉片が飛び散った。
カレンの周辺には風の魔法で壁を作っていたので、爆風と肉片は受けていない。
(他の魔物が食べてくれると良いけど……一応ギルドにも報告かな……)
尻尾の部分だけを持って帰還する。
最初に教会に報告に来た。大司教が居る客間へと案内された。
「本当に解呪出来るとは……驚いた……それにこんなに早く帰って来るとは……驚きだ」
「考えたんだけど。私は妖精に助けられて、力を得たってことにしてはどうかしら?」
「それは良い考えだ。ただし、妖精の森の情報は嘘を交える」
「確かにそうね。妖精は静かに暮らしたいでしょうし。引っ越させるのも悲しいわ」
「さて、アルマよ。これからどうする気だ」
「パーティー脱退と再登録かしらね。カレンとの新しい人生(パーティー)で再始動よ。
そう言えばシビルは捕まえたの?」
「シビル? はて……誰の事だったかな?」
大司教は笑顔であったが、凄まじい怒りが見え隠れしていた。
まあ、もう私には関係ない。今は先にやる事がある。
魔物の尻尾は教会が引き取ってくれた。
事情を話すと心当たりがあるらしく。
大司教の方からギルドに報告してくれるとのこと。
色々と話を聞き、
カレンを奴隷にしていた者たちの所に一人で行った。
彼等は驚いていた。私が生きている事に。
しかし、今のカレンの状態の事は黙っていた。
彼等はカレンの事を必要ないと弱く笑い、
私に権利を譲渡した。
でも私には奴隷にする理由はないのでカレンを解放した。
彼等には特に何もしない。
そのおかげでアルマに会えたと、
何よりもカレンが彼等を許したからだ。
この子は、本当に良い子だ。
そして、念願のパーティー脱退と、
カレンとパーティーを登録した。
パーティー名は【ウォーリア】。
本当はカレンウォーリアにしようと思ったけど、
カレンに全力で止められた。
意外にもすんなり脱退と登録が出来て驚いた。
裏で不思議な力が働いたのだろうか。
等級はホワイトから。これは当たり前。
ちゃんと実力を示さないとね。
その等級で好まれない依頼を全て受ける。
好まれないとは、遠かったり、魔物、地形の関係で事故が起こりやすい、
など様々な要因が関係ある。
好まれない依頼を受ける理由は簡単。
依頼人が困っているからだ。そして、全てだと新人の依頼がなくなる。
早く昇給して、自分にしか出来ない依頼をこなす。
一日で数件の依頼を終わらせると、受付嬢が驚いていた。
それは当然だろう。
少し前まで最弱剣士だった私が急に強くなったのだから。
報酬でまずはカレンを浴場に連れて行き、綺麗にする。
初めてのお風呂で凄く喜んでいた。
エルフは風呂に入らないのだろうか。
次に服屋に行って綺麗な碧の髪に合う可愛い服を選んだ。
ついでに、自分の戦闘服と武器屋で剣をもう一本買った。
聖剣危なすぎ。二本差しだ。
そして、夕飯だ。たっぷりと食べてもらおう。
少し高いが治安の良い地区の宿に泊まる。
カレンは隣で寝ている。
その可愛らしい寝顔を見ながら思う。
生活がもう少し安定したら、
カレンの故郷を訪ねて安否を知らせないと。
次の日、ギルドに行く。
私の対応をしている時、同僚らしき人物が受付嬢に耳打ちをすると、えッ。
と驚いた表情をした。お待ちくださいと言い残し、一度奥に行くとすぐに戻って来た。
私は登録二日目でグリーン等級になった。
ん? それはおかしい。いくら何でも早すぎだ。
教会が頭に浮かぶが、そんなに接触はしないだろうし。
まあ、好都合だから良いか。
日付を見て、グリーン等級の人気の無い依頼を全て受ける。
カレンは何時も連れて行っている。
下手に置いて来るよりも私の傍の方が安全だ。
魔物を次々と倒していく。
「アルマ凄い!」
「ううん。今まで頑張って来たカレンの方が凄いわ」
とても純粋で可愛らしい。
依頼を全てこなして帰ると、
グリーンからレッドに上がった。
(流石に露骨過ぎると思うけど)
宿に帰るため、外に出ようとした。
そこで、それを聞いていた巨漢が、
目の前に立ちはだかる。
カレンは私の後ろに隠れた。
「おいおい、流石にそれはねぇだろぉよぉ! ちょっと前まで最弱だった剣士がぁ!
俺と同等級だと!」
「知らないわよ。ギルドが決めたんでしょう?」
「うるせぇ!」
巨漢はぶっとい腕から放たれる力強い拳を豪快に振るう。
私は二本の指でそれを抑え込んだ。
「こ、これ以上……動かせねぇ……」
「先に言って置くけど……後ろの子に手を出したら許さないから……」
「誰がそんなガキに手を出すかよ!」
彼はもう片方の腕で殴りかかる。
(無駄よ)
私は二本の指に、親指を加えて最初に出した右の拳を挟む。
男は左の拳を繰り出すのを止め、膝を付いた。
「ぎゅオぁぁぁああああ! いでぇぇええ! タイム! 俺がッ! 俺が悪がっだッ!!!」
謝って来たので私は指をパッと離し、解放する。
皆は驚きの余り、唖然とした表情だった。
声の出せない彼等を無視して、
私はカレンと一緒の時間を楽しく過ごすために、外へと出た。
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