坂本理沙2

――およそ11時間前


「ねーーえーー!!なんで裕子ちゃん来れねぇの?これじゃあ俺余るじゃん!!」


ひと泳ぎ終えて全員でかき氷に並んでいた所、さっきまでは楽しんでいた翔が思い出したように駄々をこねだした。


「いや俺、今日裕子ちゃん来ないの予想してたからね。あの時の嫌そうな顔で"あ、これ来ねぇな"って。お前性欲剥き出しすぎだから。」


「あはは、ウケるー。」


今回集まった目的は、実に突拍子のないもの。

昨日サークルで行われた飲み会でくじ引きゲーム的なものをし、それでくっついたペアが地元で有名な心霊スポットへ行き、テンプレ行動をして帰って来たらウケんじゃね?

と誰かが言いだしたのがきっかけだった。

たまたまその廃墟が海に近かったので、せっかくなので明るいうちに集合して…という事だった。


隆司は当初、この陽キャ特有のフットワークの軽さ、バイタリティの高さに戸惑いを覚えたが、このボケばかりのグループに唯一のツッコミキャラとしての立ち位置がいつの間にか定着してしまった。


いつまでもごねる翔にさすがにイラついたのか、理沙が我慢しかねたように言った。

「もう分かったってぇ。誰か来れないか連絡してみるから。」


「え、マジ?可愛い子呼んでね。

てかみんなやって…お願い。俺もやるから。」

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