電話

汗でスーツが体にまとわりつくが、全く気にならない。


鮎川からもらった”シール剥がしスプレー”を使い、何とかトイレのベタベタを取り終えた朋美は、冷房もない真夏の縁側で一人、嫌な寒気を感じていた。

菓子パンは未開封のまま、ポカリだけをぐいと飲み干す。


――気のせいだったのだ、きっと。


それか見間違い、勘違い。よくあることだ。

雨戸が勝手に閉まったら音が鳴るはずだもん。

そう自分の感情に折り合いをつけて、何とか今日は乗り切らないといけない。

でももし次回も担当になったら………どうしよう。

泣きだしそうになっていると、再びスマホに着信があった。


「坂本理沙」


誰だっけ。


……あぁ。


しばらく思考を巡らせたあと、朋美は通話ボタンを押した。



「あ、朋美?久しぶりー。

ねぇ、今から海来れない?」

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