現地へ

たまたま車を車検に出していた朋美は、辻の車で現場まで送ってもらった。


「じゃあここね。ちゃんとしてね」


辻は高い塀に囲まれた屋敷の門の前で朋美を下ろし、吐き捨てるようにそれだけ言うとさっさと走り去って行った。


任される物件は新築の分譲住宅である場合が殆どだったが、場合によっては売りに出された中古物件もあった。

今回の待機場所もその類いで、Youtubeなんかでよく見る古民家リノベーション、なんていうと真っ先に連想される、あの縁側と庭のある和風建築だった。

しかしその縁側と部屋とを区切るのは複数の雨戸。

何畳もある和室と縁側を隔てる戸、戸、戸。

つまり朋美は、これからそれら全てを開けなければならない。

それは一昔前の建築らしい、光を取り入れる気が全くないつくりで、一面締め切ると昼間でも室内は真っ暗で気味悪く、まさにそれは朋美がここを担当したくない理由であった。

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