異変

「……鮎川さん。」



「へへ、びっくりした?」




――おい!!



一気に力が抜ける。

極限まで追い詰められた直後にこの気の抜けた笑顔を見せられて、膝から崩れ落ちそうになった。


「何やってるんですか…」


「ごめんごめん。」


そう言いつつも、人が来てくれた事にホッとしていた。



「はいこれ、シール剥がしスプレー。

あとこれ、まだお昼まで時間あると思うけど。辻さんには内緒でね」


鮎川はポカリと、比較的こぼれなさそうな菓子パンが入ったレジ袋を渡してくれた。

様子見ついで、動けない朋美の代わりにダ○ソーとコンビニに寄って来てくれたらしい。

そういえば朝から何も食べていなかった。


「悪いけどすぐ行かなきゃいけなくて。それで剥がれそう?」


「はい、ありがとうございます。」


ニコリと微笑んで戻ろうとする鮎川の視線が、ふいに朋美の背後へと移った。


「あー、そこ建付け悪いんだよね。開かなかった?」



「え?」



振り返ると、さっき開けた筈の雨戸の左端が、再び閉まっていた。




――――え?



そんなはずはない。確かにこの戸さっき……。

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