二階へ
朋美は階段を上り終えた。
辻が通った時の事も考え、ベタベタよりもまずは戸開けを優先しなければ。
二階も一階同様、廊下は勝手口から光が入って比較的明るいのだが、各部屋は一階のそれよりも更に暗かった。
四つある部屋の手前から入り、順番に相変わらず重い雨戸を開けていき、遂に最後の部屋に差し掛かった。
その部屋は一階とは打って変わって洋風の、色褪せた絨毯が敷かれた応接室のような部屋だった。
外は雲一つない八月の快晴。
一階は戸の隙間から針のような陽光が辛うじて差し込んでいたが、この部屋はそれを極限まで削ったような暗さで、
雨戸を開けてひとまず外光を入れようにも、スマホのライトを使わないとその雨戸まで辿り着けないのだ。
その幾つかをようやく開けて光が入ったと思ったら、今度はどうしても動かせない一枚に遭遇した。
道路に面する東側、一番左の雨戸がどうも建て付けが悪く、押しても上げても動かないのだ。
10分ほど格闘しただろうか。
ふいに視線を感じ、部屋の外の廊下側を見やる。
—そうだ、この柱だ。
この柱の木目がどう見ても人間の目に見えて気味が悪く、部屋に入るのが
だから雨戸を開けられなかったのである。
更に格闘する事10分。
やっとの思いで全て開け終えた。
「ふぅ~…」
とため息をついて踵を返そうとした時、
一階から金属を引っ掻き回すような音が聞こえた。
キィ
ギギギ
ギギィギギ…ギギギギギギギギ………
まるで一時停止ボタンでも押されたように朋美は硬直し、顔を窓に向けたまま振り向けなくなってしまった。
―――何の音。
硬直したまま、あらゆる可能性が朋美の脳内を駆け巡った。
虫。
野良猫。
それか……
音が近づいてくる。
階段を上ってくる。
――何かがこっちに来る。
背中に冷たい汗が伝った時朋美の思考は、一つの有力説に行きあたった。
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