職業相談所
その3週間後だった。
「それで?どうして職を変えたいんですか?」
「……」
「その話を聞く限り、あなたはその時喜んでいたんですよね?」
職業相談所の職員が目を光らせ、眼鏡にてをやりそれを鼻筋の間で上げ下げした。
「あなたの“宇宙人評価書”にはこう書かれていますよ、非常に有能で仕事もできる、顧客からの信頼も厚い、人間的にも、いえこの場合〝宇宙人的にも〟人々から信頼されている……と」
「……」
例のアメーバ型宇宙人はそれでも、対面に座り不満げな顔をしている。まるで子供の書いた漫画のような簡単なデフォルメされた顔で。
「ヨローヌさん?ヨローヌさんですよね、あなた、この時代に仕事を持てるっていうのはとてもありがたい事なんですよ、人間なんて、まあほとんど働かなくともBIで生活は保障されているとはいえ、宇宙人の有能さにまけて、仕事を持てる人間なんて〝全能コネクタ〟に選ばれたごくわずかな人間だけです」
「キュルルルル」
奇妙な音をたてて、困った顏をして縮こまるアメーバ、机の上でまるでスライムのような弾力をもって、絶妙なバランスをたもっている。
「おなかすいたんですか?ヨローヌさん、ここは、あなたのような有能な人が来る場所じゃないですよ」
「でも、でも、私はそれが不満なんです」
「はい?」
「確かに私は……顧客を満足させすぎてしまうんです、しかし、同時に大きな喪失感と欲求をもたらしてしまう、私がいなければ、ダメなほどの」
「はあ……」
結局その後10分ほどで、後が使えているといって追い出されてしまった。職業相談所の建物をでたあと、今日は休日だったので、カフェによることにした。太陽がまぶしく、手で目の上を覆う。そして、3週間前の出来事を思い出すのだった。
アメーバエイリアン ボウガ @yumieimaru
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