第2話 人殺し
俺の名前は、高崎次郎。人殺しだ。
俺は人生で人を殺したことがあるが、遺体は見つかっていない。
そんな俺には兄がいる。名前は高崎太郎だ。兄は、大手IT企業に勤めている。
子供のころは、よく一緒に遊んでくれたりして、俺は兄のことが大好きだった。今でも、結構性格がよく、俺に対しても優しく接してくれる。
俺が人を殺したことがあるなんてわかったら、兄の仕事に影響を及ぼす。そんなことは絶対にしたくない。
ではなぜ、俺が人を殺してしまったのか。
これが一番初めだった。
俺は、ごく普通の会社に勤めていた。その会社は、ホワイト企業で、とてもいい仕事だった。しかし、上司を除いて。
俺の上司の名前は、田中哲也。
田中は、俺がいるところでわざと俺の悪口を言っていた。それだけじゃない、自分は妻と娘がいるからと言って、しょっちゅう俺に仕事を押し付けていた。断ると、「上司に対してその口のきき方は何だ!」とか言って、無理やり押し付けていた。それも毎日。毎日、毎日、毎日、これをやれ、あれをやれと押し付けていた。
殺してやろうか。と考えた。
そして、殺した。奇跡的に上司が酔っ払っているところを目撃し、殺した。
夜遅くで、
そして死体をリュックに詰め表に出ようとしたが、その場面をスマホで撮っている奴がいた。
俺はすぐそっち側を向いたので、慌てて逃げていった。俺はその後を追おうと思ったが、まだ死体を完全に詰め終わっていなかったので、仕方なく顔だけ覚えた。
上司の死体は、遠くの山奥に崖みたいなところがあったので、そこに捨てた。
俺は、あの時スマホで撮っていたやつを同じ場所で待ち伏せをした。すると、数分で同じ顔の人が現れた。
調べたところ、名前は谷川拓というらしい。忘れないようにメモをした。
「タニガワタク…」
家に帰り、その男の名前を検索してみたら、一つのYouTubeチャンネルが見つかった。
「…タクチャンネル…」
そのチャンネルから、様々なことが分かった。
「絶対に殺して見せる…!」
当日、谷川が路地裏に入ったことを確認して、俺は近づいた。
しかし、珍しくその周りには人が十数人いたため、別の機会にした。
夜、谷川の住所が分かっているため、近くのコンビニで待機していた。時間を見計らって、計画を実行するつもりだ。
コンビニに残って数十分後、谷川がマンションから出て来た。そしてコンビニに入ってきた。
そして、コンビニを出て谷川が部屋に入ったところで、背中にナイフを突き刺した。
バタン。
倒れた。
人生で二度、人を殺してしまった。
今回も上司を殺した時と同じように、リュックに死体を詰めようとしたが、あいにく死体が入るほどのリュックを持ってきていなかった。
なので、死体を谷川の部屋のクローゼットの中に詰め込んだ。見たところ、谷川は一人暮らしのようだった。
これ以上出入りすると危険が伴うので、そのままにしておいた。
しかし、今考えると危険をおかしてでも山奥に捨てておくべきだったと後悔している。
谷川を殺してから数日後、こんなニュースを見つけた。
「25歳男性が失踪。男性は人気YouTuber、タクチャンネルの人物ということが判明。」
少しどきっとしたが、失踪というだけだ。死体はまだ見つかっていない。
そんなことを思いながら、テレビの電源をつけると、自分にとって驚きのニュースが流れた。
「××区のマンションで遺体が発見されました。」
その時にうつされていた映像は確実に自分が殺したマンションだった。
「くそっ!なんでこの場所が!」
そんなことを思っていたが、すぐに消えた。
友人から数日間も連絡がつかなかったら、さすがに心配して家に行く。
俺の計画は、全然だめだった。
兄に影響が及ぶ。
俺は悪いことをしてしまった。今になって実感した。
どうせ、捕まる。
俺みたいなくずは、死んだほうがましだ。
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