第6話 食パンの食べ方




 ポポポン!!





 シェトラスが筒をミアの箱に戻したら……ミアが煙と音を立てて、元の姿に戻った。


 ぴゅーっと飛んできて、手をぱちぱちしたわ。



『みゅ! しゃまして……サンドイッチにするのがいいでしゅ!』


「「サンドイッチ!!」」



 たしかに……お母様の作るサンドイッチは美味しい。


 出来立てじゃなくて……冷まさないと、ダメなのかな?


 すると……ミラクルがあたしの服をつかんできた。



「……そのままだと、サンド……イッチ。ダメ」


「そうなの?」


「熱気……と汗で、具材ぐちゃぐちゃ。美味しくないわけじゃない……けど、食べにくいって」


「さっすが、ミラクル!! お母上がここの料理人だったものね!」



 そう。ミラクルのお母様は……あたしのお母様の先輩。


 けど……パン作りの師匠はお母様で、ミラクルのお母様はお弟子さんなんだって。ちょっと不思議。



「その通りでございます、坊っちゃま。私も、こちらの奥様から習いましたが……せっかくの食パンを美味しく召し上がる方法のひとつに、そちらも含まれるのです」


「「へー」」


「だ……から、冷却の魔法で。ちょっと冷めた……方が美味しい」


「んー。けど、出来立ても美味しそう」


「ねー? 切れないのかな?」


「出来立ては、柔らか過ぎて切るのが難しいのですよ……お嬢様方」


「「えー」」



 じゃあ……ここは!!



「「「じゃんけんぽん!!」」」



 子どものあたし達でじゃんけんだ!!


 勝った人が食べ方を決める!!


 三人だから……すぐに決まったけど。


 勝ったのはミラクルだったわ!?



「……サンド、イッチ」


「「はーい」」


「では、具材が出来るまでは……自然に冷ましましょう。そのあとでも柔らかい場合は私が冷却しますので」


「「「はーい」」」



 サンドイッチと言えば。


 卵とツナ!!


 ハムチーズ!!


 それは全員一致したので……ゆで卵は作ったことがあるから、サリー姉らと手分けして作り。


 こっちも冷却で冷ましたら……びっくりすることが起きた!!



「「半分無い!?」」



 せっかくの食パンが……布を取ったら、半分も無くなってた!?


 誰かがドロボーでもしたの!?


 みんなを見ても、思いっきり首を横に振ったわ。



「ははは! すまないなんだぞ!!」



 入り口の方から、大きな声が聞こえてきたわ。


 知ってる人。


 よーく、知ってる人!!



「シュラ伯父様!?」



 あたしのお母様のお兄様。


 お母様とお父様の従兄弟。


 つまり、伯父様。


 それはどうでもいいわ!!


 ごめんって言ったのは!!



「シュライゼン様!? 私達のパン食べたんですか!?」



 サリー姉があたしよりも早く……伯父様にグーパンしようとしたけど。伯父様はひょいっと避けた。大人だから、すぐ出来ちゃうのよね!



「ははは! チャロナが久しぶりにパンを作ったと思ったんだ。君達かい?」


「……あたし達のパンです!!」


「うむうむ。物凄く美味しかったんだぞ!! チャロナに負けないくらい」


「「ほんと!?」」



 ちょっとムッとしたけど……美味しいと言われて嬉しくないわけがないわ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る