第10話 焼き上がり

 いい匂い。


 パンの焼ける、とってもいい匂い!!


 いっつも、トーストを焼くときに使う『オーブントースター』じゃないわ!!


 おとうさんが、ちゅーぼーで使うオーブンを開けたときに匂う……パンのいい匂いと同じだ!!


 チン、と音がしたら……おじいちゃんがミトンをつけて、ふたを開けたんだけど。



「ふわぁあ!」



 開けたら……もっといい匂いがしてきた!!


 甘くて……ええと、こうばしい?


 とにかくいい匂いで……すっごく食べたくなってきた!!


 おじいちゃんがてっぱんをゆっくり台の上に置いてくれると……出来上がりがあたしにも見えたわ!!



『うむ。まずまず』


「……いいじゃねぇか」



 おじいちゃんたちがほめてくれたわ!


 色が……ちゃんとパンの色。キレイな茶色になってて。


 ふんわりしてて!


 あつそうだけど……食べたいよぉ。


 これ……バターたっぷりで食べたいなあ?



「……美濃みのさん」


『なんじゃ?』


「……食べたい!」


『ほっほ。出来立ては格別じゃが……少し待つのじゃ。やけどになるぞえ?』


「えー?」



 こんなにもおいしそうなのに……ダメなの?


 おじいちゃんを見ても、首を横に振った。



「手だけじゃねぇぞ? 口の中までやけどしちまう」


「……うー」


『冷ましてる間にじゃ。バターもええが、桜乃さくのの好きな具材を作ろうぞ?』


「ぐざい?」


『簡単なサンドイッチにせぬか?』


「サンドイッチ!」



 あたし、大好き!!


 何にしよう!!


 たまご?


 ツナ?


 ホットドックのもいいなあ……楽しくなってきたわ!!


 うんうん、首を振ると……おじいちゃんにもだけど、美濃さんにもちょっと笑われた。



「落ち着け。ゆっくりでいいから」


『ひとつに決めんでもええぞ? 好きなので良い』


「じゃ、じゃあ!! たまごサラダ、ツナマヨ、ソーセージ!!」


『ほっほ。あいわかった』


「ま。昼飯まだだし、そんくらい必要だな?」


「わーい!!」



 その前に……と、美濃さんが一個だけ。ちょっと冷めたって言うパンをちぎってくれたのを食べたんだけど!!


 ふんわり、あったかくて!


 そのままでも、すっごくおいしかった!!



『どうじゃ?』


「おいしー!! おいしいよ!!」


「……うん。悪くねぇ。よくやったな? 桜乃」


「わーい!!」



 おじいちゃんにも、ほめてもらえた。


 これは……大成功なんだ!!


 ぴょんぴょんしていると……あたしの前に、テレビみたいなのが出てきた。



【『はじめての白パン』


 ・作った数=五十個


 ・食べた数=ひと口



 付喪神つくもがみ・美濃にレシピをダウンロードしました。


 次回から、『ポイント』がつきます。



 】




 なんだろう?


 さわってみても、全然さわれない。


 ポイントって、お店のポイントカードと同じ?



『ほっほ。出来上がったことで、ステータスも見えたのじゃな?』



 美濃さんには見えているのかな?



「……そこまで、そっくり同じかよ」



 おじいちゃんには見えていないけど……知っているみたい。

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