第8話 パンチと、切る



桜乃さくの。手をこう出してくりゃれ?』


「こう?」



 美濃みのさんが両手を前に出すように言ったので、あたしも出してみた。


 美濃さんはうんうん言ったら、自分の手をあたしのに『ハイタッチ』してきたわ!



 パンパン!! パパン!!



 いい音!!


 じゃなくて……これなぁに!?


 パン作るのに必要!?


 だけど……美濃さんがピンクに光っていったの!!



『ふむふむ。悪くない力じゃな?』



 びっくりしたけど……もっとびっくりすることが起きたの!!


 美濃さんが、手をボウルに当てると……中の、生地がどんどんぷくぷくーって大きくなっていったわ!!



「なになに? すごーい!!」


「……普通にドウコン使ったらいいだろ?」


『ほっほ。機械に負けてはおれん。しかしながら……桜乃は幼いながらも、稀有けうな存在じゃ。段蔵だんぞう以上の魔力を持っておるのお?』


「……まりょく?」


「マジか? 保有ほゆう量どんなのだ?」


『そちの三倍以上はあるのお?』


「……チートかよ」



 美濃さんとおじいちゃんはよくわかんないお話してるけど……あたしは、生地が大きくなっていくのがうれしかった!!


 さわってもいいかなあ? とちょんちょんすると……ふにゃぁって、ちょっとへこんだわ!



「ふにゃふにゃ!」


『この状態を『発酵はっこう』と言うのじゃ』


「……はっこー」


『これを次につぶすのじゃ』


「え!? これを?」


『うむ。軽くつぶして……『ガス抜き』と『パンチ』をせねばならん。別にケンカするわけではないぞ?』


「へー?」


「桜乃、思いっきし……生地にグーパンしてみな?」


「うん!」



 おじいちゃんにも言われたので、グーパンでドンドンつぶして……次は、美濃さんが薄い板で生地を集めて……たたんでいく? のかな?



『この後に……もう一度』



 また美濃さんはボウルに手を当てて……生地がまた大っきくなってく!! これも……つぶしちゃうのかな?



「……つぶすの?」


『違うのお? 次はこれを切って……丸めていくのじゃ』


「……あ!」



 おとうさんとおじいちゃんが……包丁じゃないので切っていくのを思い出せた!!


 あれを今からやるんだ!!



『して、次に必要なのは……スケッパーと打粉うちこじゃ』


「……うちこ?」


『このまま台に乗せても……くっついてしまうからのお? 段蔵、見せておあげ?』


「……そうだな」



 で、おじいちゃんが石で出来たような……台の上に乗せる前に。


 ボウルに……粉をかけて。


 薄いピンクの板で……生地を台に乗せて。そこに薄く……また粉をかけていったわ。



『次はこれを切る。工程で言うなら……『分割ぶんかつ』と言うのじゃ』


「ぶんかつ?」


『桜乃、このまま焼くと……食いにくい大きさになってしまう』


「……そーなんだ?」


『じゃから……小さく切るのじゃよ。そこで……丸めて形を整えていく』


「はーい!」



 むずかしいけど、がんばって作っていこう!!


 切るのは……おじいちゃんにも教わりながら、計りを使って出来たけど。


 丸めるのが……何回やってもぐちゃぐちゃになるわ!?

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