第5話 ごめんなさい



「……おかあさん、ごめんなさい」



 おじいちゃんと一緒に……あたしはお店にもどってきた。


 おじいちゃんと美濃みのさんと決めたように……ちゃんと『ごめんなさい』を言うために。


 美濃さんは来れないらしいけど……おじいちゃんと一緒だったから、大丈夫だった。


 ちょっと泣きそうになったけど……おとうさんからは、『はーっ』って言われた。おこったかな?


 おかあさんは……宙太そらたをだっこしてたけど、おとうさんにだっこしてもらって……おひざを地面につけた。



「おかあさんも……言い過ぎたわ。ごめんね、桜乃さくの。がまんばっかでいやだったでしょう?」


「…………うん」



 ごめんなさいはしたけど、ちゃんと言いたいことは言った方がいいって美濃さんが言ったから。ちゃんと言うと、おかあさんがあたしをぎゅっとだっこしてくれた。



「お姉ちゃんってだけで、言い過ぎたわ。あなたは十分立派なお姉ちゃんなのに」


「りっぱ?」


「ちゃんとごめんなさいって言ってくれたでしょう? だから、おかあさんもごめんなさい。これで仲直り」


「うん!」



 だけど……今度はあたしからお願いする番でもあるんだ!



「あー、で相談なんだが」



 おじいちゃんが言い出してくれた。これも、美濃さんと考えた作戦どおり!



「親父?」


涼太りょうた。桜乃は店の手伝いも出来るが、本人たっての希望で俺がパン作りを教えることにした」


「は? 桜乃にパン作りを?」


「お、義父さん……桜乃はまだ小学生ですよ?」



 ここでおとうさんたちがびっくりするのも、よそーずみだから大丈夫。


 おじいちゃんは髪をガシガシしながら、またお話し出した。



「大丈夫だ。涼太はあんま覚えてねーけど、桜乃くらいのガキん頃から生地で遊ばせてただろ? その延長線だ。桜乃はレジ担当でも、成形の作業はお前ので見てたじゃねぇか」


「いや、仕込みと成形じゃ」


「俺らの家でやらせる。俺の目の届く範囲で火は扱わせねぇよ。大丈夫だ」


「……ほんとにいいのか? 腰とか」


「まあ、家庭レベルにするさ」


「あたし! がんばって作るから!!」



 あたしの夢は、学校の作文にするくらい……パン屋さんになりたいことだ。


 おとうさんにも、おかあさんにもずっと言っているんだもん!!


 お願い、うんって言って!!


 じーっと、おとうさんを見ると……おとうさんは少し困ってたけど、また『はーっ』って息を吐いた。



「……おじいちゃんが困るようなことはするなよ?」


「うん!」


「……お義父さん、よろしくお願いします」


「おう」


「だーっ」



 宙太も、いいって言ってくれるのかな?


 泣いてない宙太を見るのは、ちょっとぶりだから……あたしはおとうさんのところに行って、宙太をなでなでしてあげた。


 じゅんびができたから、これから蔵にもどって……美濃さんにちゃんとあいさつしよう!!

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