第3話 泣きながらも



『そうじゃ、神様言うても……位は低いのじゃがな?』


「……くらいって?」


『ふーむ。桜乃さくのにわかりやすく言えば……レベルが低いんじゃ。ゲームとかするであろう?』


「……うん。ちょっとだけ」



 あたしより、おじいちゃんやおとうさんの方がいっぱい遊んでいるけど。よく、おばあちゃんやおかあさんにしかられているんだよね?


 でも、時々だけど。一緒に遊ぶから、美濃みのさんの言っていることはわかった。



『そのレベルのせいで、あんまりすごいことは出来ぬ。じゃがな? 桜乃の声を聞いて……起き上がることが出来たのじゃよ』


「……寝てたの?」


『力が足りずのぉ。そちの強い『思い』がここまで届いてきたのじゃ』


「おもい?」


『気持ちとも言うかの? そち、珍しくこちらに来たのお? 何かあったのか?』



 美濃さんに言われて……思い出しちゃった。


 あたし……おかあさんとケンカしちゃったんだ。


 それに……大嫌いって言っちゃって。


 忘れてた涙が出てくると、えぐえぐって声が変になった。



「お……かあ、さん……に。き……嫌いって」


『ふむ? 母御ははごに嫌い? ゆっくりでええぞ? あちきが聞こう』


「……うぅ」



 はじめてじゃないけど。


 美濃さんは、あたしの話をゆっくり聞いてくれた。


 お店のこともだけど。


 おかあさんが宙太そらたとずっと……一緒にいなくちゃいけないこと。


 宙太は……大切な弟だけど。


 あたしを、おかあさんと一緒にできないようにしているの。


 がまん……しなきゃいけないのに。


 今日は、もうダメだった。


 言っちゃいけないことまで……言っちゃった。


 おばあちゃんでもおじいちゃんでもなく……美濃さんには、全部言えた。


 はじめて……家族じゃない誰かに言えた。


 涙で顔はぐちゃぐちゃになっているだろうけど……美濃さんは、おこったりしなかった。



『……そうかそうか。そちに弟が。母御を取り上げられたようなものか。幼いとそう思ってしまうのお?』



 ぽんぽんと、また頭をなでてもらえた。


 優しくて……あったかい。


 あたしはもっと泣いちゃったけど……美濃さんは『ヨシヨシ』と言って、ずっとなでてくれたわ。


 泣くのをずっとがまんしてたから……あたしは思いっきり泣いて。


 止まったときは、顔がヒリヒリしてしまった。



「……痛い」


『ほっほ。それだけ泣けばのお? して、これからどうする?』


「…………ごめんなさい、って言う」


『それが良い良い』



 泣いて、すっきりしたけど……悪いのはあたしだ。


 おかあさんが大変なのわかってても……わがままで逃げちゃったのはあたしだもの。


 今どうしているんだろう?


 宙太がいるなら……追いかけては来なかったけど。


 でも……美濃さんにちゃんと聞いてもらえたから、大丈夫。



「おーい? 桜乃いるかー?」



 外から声が聞こえてきた。


 おじいちゃん?


 おとうさんじゃなかったけど。



『ほっほ、段蔵だんぞうか?』



 美濃さんが、おじいちゃんの名前を呼んだ。おじいちゃんも知っているのかな?

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