第17話 天に向かってつばを吐く

  札幌決戦で,和樹,水香,メリルを討伐した事実はあるものの,その実,なんら解決していないという状況が,徐々に判明していった。


 和樹は,銀次という名前で,魔体で生きている。メリルは,ルリカという名前で,林サミコの表彰式に出現した。


 ここまでは,警視庁本部の中枢連中は,把握している。


 この日の夕刻,多留真とα隊隊長は,林サミコ最高顧問の部屋に取りつけた超高性能隠しカメラの映像を見た。音声もクリアに録音されている。


 多留真は,ガックリときた。あの札幌決戦は,いったい何だったのか?


 α隊隊長「おい,この映像,どうする? 上層部に報告するか?」

 

 非常に悩ましい判断だ。報告したところで,どうすることもできない。


 多留真「完全焼消してくれ。絶対に復元させるな。俺は忘れる。見なかったことにする」

 α隊隊長「わかった。上の報告したところで,どうしようもない。無駄な情報を与えるだけだしな」


 α隊隊長も同意した。


 α隊隊長「しかし,林サミコ最高顧問は,とんでもない能力を持っているな。神様じゃないのか? 次元は違うが,メリルに匹敵する能力だぞ」

 多留真「なんか,もう警察止めたくなってきた。すべての努力が無駄だと感じてしまう」

 α隊隊長「アホ,お前がいないと,誰がこの警視庁を背負っていくんだ?」

 多留真「ふん,まな美のやつ,さんざん,青あざ赤あざを体につけやがって,それのすべてが霊力だと?! クソッ! あれを騙しやがって! 今日こそは,ボコボコにしてやる!おまけに水香の復活を手伝いやがって! クソッ!!」

 α隊隊長「まあ,お前の気持ちも分かるが,女性に手をあげるものではない。ほんとうに,セクハラ,パワハラで訴えられるぞ」

 多留真「ああ,そのほうがせいせいするわ。警察なんぞ止めてやる!」

 

 多留真も,メリル達と関わってきて,かなり精神を病んできてしまった。



 ー 多留真のマンション ー

 まな美が水香を産んだその夜,多留真が疲れた顔をして帰ってきた。


 まな美の両方で6kgになる胸を見て,多留真は,あの映像に間違いはなかった,夢ではなかったと思い直した。


 多留真は,机に並べてある夕食をパクパクと平らげた。その間,まな美と多留真は,いっさい口を開かなかった。


 食事が終わって,一風呂浴びた。


 多留真「まな美,ベッドに来い」

 

 まな美は,なんで胸が小さくなったことを質問しないのかと疑問に思った。まさか,すべてを知っている? あの部屋に隠しビデオがあった?


 まな美は,その可能性を失念していた。水香が生まれたこと,すぐに成長したことに目が移ってしまい,隠しカメラを探す余裕はなかった。


 まな美「多留真,もしかして,隠しカメラ仕込んでいたの?」

 多留真「そうだ。でも,今日の映像は完全消去した。無駄な情報だ」

 まな美「・・・,まあ,そうなるでしょうね。現実離れしているもの」

 多留真「まな美,いまでも霊力は使えるのか?」

 まな美「水香にすべて奪われたわ。これっぽちもないわ」

 多留真「そうか。まあいい。では,前と同じく,あの巨大なおっぱいになれ」

 まな美「もういやよ。巨乳になったって,結婚してくれないんでしょう?」

 多留真「当たり前だ!」

 まな美「ふん」

 多留真「でも,メリルの情報を持ってきたら,結婚してやる」

 まな美「もう騙されないわ」

 多留真「お前も知っていると思うが,魔力ベストには位置発信装置が取り付けられている。銀次がどこにいるかが一目瞭然だ。そこには,当然,メリルもいるだろう」

 まな美「居場所がわかったって,どうしろというの?」

 多留真「フフフ,そこが問題だ。スパイを潜り込ませれば一番いいのだが,,,正直,俺もいいアイデアがない。犯罪も起こしていないし,逮捕もできない。超法規的措置もできる状況でもない」

 まな美「つまり,スパイを潜り込ませればいいのね? 多留真,一筆,証書を書いてちょうだい。だったら,真剣に考えてみるわ」   

 多留真「まな美が文章を作れ。俺がサインしてやる」

 まな美「今度,ウソついたら,本当にこの証書で裁判起こすからね」

 多留真「ふん」


 まな美は,パソコンで文章を起草して,印刷した。


 『 結婚承諾書


 わたし,多留真は,以下の条件を満たした場合,その条件を満たした日から,3ヶ月以内に,まな美と結婚することに同意する。


 条件:xx月yy日から3ヶ月以内に,なんらかの方法で,ルリカ(旧名:メリル)の組織に,人材を派遣し,2週間以上,ルリカたちと生活を共にすることによって,得られるであろう情報を入手すること。


 xx月yy日  多留真 ( サイン   ) 』


 多留真は,欠陥だらけの証書など,なんの価値もないと思って,その書類にサインした。


 まな美は,この証書があれば,最悪,裁判を起こせることを期待した。


 多留真は,そんなサインのことなんか,どうでもいい。


 そんなことよりも,まな美が水香を復活させたこと,青あざや赤あざが霊力による偽装であったこと,銀次の子供を産んだことなどなどが,猛烈に癪にさわった。


 それを考えると,だんだんと,怒りが込み上げてきた。


 多留真は,怒り狂ったようにまな美に暴力を振るった。


 「この,売女! 水香を復活させやがって!」

 「青あざも赤あざも,霊力で造りやがって!」

 「他人の子供を産みやがって!」

 「ざんざん浮気しやがって!」

 「おっぱいを小さくしやがって!」


 多留真は,適当な理由をつけてはまな美に,これまで以上に暴力を振るっていった。


 まな美は反抗しなかった。ぶたれるままにされた。普通の女性なら,とっくに家庭内暴力で訴えられているところだ。


 まな美は,全身,本物の青あざや赤あざができてしまった。それだけじゃなく,脂肪の豊富にある部分に,鋭利な鋭いもので,何回も刺され始末だ。その後,最後に,多留真によって犯されてしまう,,,


 まな美は,自分でもなんで多留真を受け入れてしまうのか,よくわからなかった。多留真が,これから,いくらメリルたちを追いつめて,捕まえようとしても,徒労に終わることを知っているのかもしれない。


 多留真が,暴力虐待疲れで寝入った後,まな美は,体表にできた青あざや赤あざを残したまま,回復魔法をかけた。


 まな美は,もう何十回以上も回復をかけてきたので,回復魔法のプロと言ってもいいくらの経験を掴んだ。今では,魔法陣など構築するまでもなく,回復魔法を使うことが可能だ。そのレベルに達すると,自分の持っている魔力では足りず,相手から魔力を吸収して,その魔力を使うことができるようになった。


 まな美は,双修という状態の相手から魔力を吸収できるようになった。魔力を吸収すること,それは,多留真から精力や寿命エネルギーを奪うことに他ならない。


 それは,水香を産んだ副作用なのだが,まな美は,そんなことまでは理解できなかった。


 多留真は,まな美に暴力を振るうのはいいが,それを回復させる魔力を多留真から奪った。その結果,多留真は,精力をすべて奪われ,寿命エネルギーも1年ほど奪われた。その結果,1週間ほどあの部分が無反応になった。


 多留真は,警視庁にも出勤できないほど疲れが持続してしまい,1週間ほど,在宅勤務を余儀なくされた。


 1週間後には,ほぼ回復したので,また,まな美を暴力虐待することを繰りかえした。そんなことを繰り返し,多留真は1ヶ月で4年ほどの寿命を失っていった。


 多留真は,自分の寿命と引き換えに,まな美に暴力虐待をしていったことになる。でも,その甲斐あってか?,まな美の胸は,片方で10kg,両方で20kgもの胸にさせることができた。


ーー

 

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