第14話 役不足

 林サミコと幸千子は,御殿場に来ていた。林サミコを性奴隷にした向居貴久見に会いにいくためだ。その目的は,10分暗殺者の責任者を突き止めることにある。


 ピンポーン!


 彼の部屋のドアを開けたのは,バスローブを着た若い女性だった。


 林サミコは,彼女を払いのけて部屋の中に入った。


 林サミコ「貴久見さん,彼女を追い払ってください。誰よりもわたしを優先するって約束でしたよね」


 林サミコは,記憶力だけは優秀だ。


 向居貴久見「サミコか? え? そんな約束したっけ?」

 林サミコ「わたしのいうこと聞かないと,とんでもないことになりますよ」

 

 向居貴久見は,林サミコが,何らかの異能保持者であることは知っている。


 向居貴久見「わかった,わかった。そう慌てるな。ゼリア,悪いが今日はもう帰ってくれ」

 

 ゼリアと呼ばれた女性は,ムカムカとしたものの,しょうがないので,さっさと服を着て,バターンと大きなドアを閉める音を立てて出ていってしまった。


 向居貴久見は,バスローブを羽織ってソファに座った,


 向居貴久見「さて,要件は何かな?」

 林サミコ「簡単なことです。例の暗殺者に,わたしを襲わせてください。特急でお願いします」

 

 この依頼に,彼は,林サミコはとうとうパー子になったのではないかと思った。


 向居貴久見「バカだ,バカだと思ったけど,お前,ほんとうにバカになってしまったな」

 

 この言葉に,幸千子がゲラゲラとお腹を抱えて笑った。


 林サミコ「ふん,みんなして,わたしのこと,バカだバカだと言って,,,わーーん,わーーん!」


 今の林サミコは,情緒不安定だ。


 大好きな銀次と久しく会っていない。性的には,毎日,ザビルが支配した当主の体で双修を行っていて,多少は満足感を感じる。でも,命令を与えるザビルは,日中,寝てばかりいる。


 そのため,日中,林サミコの行動に指示を与える者はいない。当主,幸千子,師匠の3名が,あれこれ相談して,林サミコに意見を求めるというスタイルをとっている。良心的ではあるが,林サミコにとっては,イライラ状態になってしまう。


 林サミコとしては,命令さえしてくれればいいのに,意見を求めれると,使いたくもない頭をついつい使ってしまう。今回の作戦も,林サミコが,向居貴久見と面識があるということで,こんな作戦になってしまった。


 こんな毎日,林サミコにとって,ぜんぜん面白くない。森タミコに奪われた銀次に会って,銀次の支配下になりたい。銀次の性奴隷になりたい,,,


 林サミコが泣いているので,なんとか笑いを堪えた幸千子が,林サミコの代わりに要件を伝えることにした。彼女は,40万円を彼に渡した。


 幸千子「そのお金は,下級暗殺者を特急で採用するお金と,あなたへの手数料です。どこか,適当な公園を指定して,暗殺者を呼んでください。ターゲットは,林サミコでいいです。彼女は,魔法攻撃を回避する技を持っています」

 向居貴久見「それはいいが,その目的は何だ?」

 幸千子「世の中,知らない方がいいこともありますよ」

 向居貴久見「でも,俺が依頼したことで,暗殺者側に不利益が生じたら,俺が殺される」

 幸千子「なるほど,あなた,なかなか頭が切れますね。でも,安心してください。あなたには,迷惑かかりませんし,暗殺者側にも,不利益は生じません」

 向居貴久見「それならいいが,,,」


 彼は,近くの公園を指定して,下級暗殺者を特急で依頼した。


 向居貴久見「幸千子さん,今から1時間後に,近くの公園に下級暗殺者が来ます。それまでに,サミコの写真を準備する必要があります」

 幸千子「それは,すでに準備しているわ」


 幸千子は,林サミコの裸の写真を彼に渡した。両方で6kgにもなる豊満な乳房が一目に引くヌード写真だ。


 向居貴久見「これって,なんでわざわざヌード写真なんですか?」

 幸千子「いろいろ相談して,こうしたのよ。気にしないで」

 

 彼には,まったく理解できなかった。


 1時間後,,,


 指定された公園に,軽の車が到着した。サングラスをかけた男が,向居貴久見に駆け寄った。


 男「よく仕事を依頼しますね。フフフ,大変ありがたいですですけど。もう暗殺者を起動していいですか?」

 向居貴久見「はい,すぐにお願いします」

 男「了解しました」


 男は,車に戻って,下級暗殺者を起動させた。下級暗殺者は,車から降りて,向居貴久見のところに来た。


 向居貴久見は,彼に,林サミコのヌード写真を見せた。

 

 下級暗殺者「え? ヌード? なんと美しい,,,こんな女性を痛めつけるのは,ちょっと気が引ける」

 向居貴久見「彼女の名は,林サミコです。少し,いや,ちょっと痛めつけるだけでいいです。殺すのはダメですよ」

 下級暗殺者「了解した。ターゲットは,あそこのベンチに座っている女性でいいんだな?」

 向居貴久見「はい,彼女です。よろしくお願いします」

 

 下級暗殺者は,林サミコのところに来た。


 下級暗殺者「あなたは,林サミコさんですか?」

 

 まだ,涙が乾ききっていない顔を上げた。そこには,フードを被った下級暗殺者がいた。


 林サミコ「はい,そうです」

 下級暗殺者「わたしは,あなたをちょっと痛めつけるように命じられた。すまないが少し我慢してほしい」

 林サミコ「暗殺者さん,よかったら,隣に座りませんか? わたしのヌード写真見るよりも,実際に触ったほうがいいですよ」

 

 林サミコは,もともと大幅に胸の谷間が見えているのだが,ほとんど胸の半分以上見える状態にした。乳輪がすでに見えて,もう少しで乳首が見えるほどだった。


 こうなっては,下級暗殺者は,あがらうことは困難だ。彼は,性機能が具備されていない。四肢が俊敏に動かせるだけの機能しかない。手で胸を触っても,その感覚を感じる機能もない。


 それでも,下級暗殺者はいいと思った。彼は林サミコの隣に座った。


 林サミコ「下級暗殺者さん,わたしのおっぱいであなたの体をあっためてあげます」


 林サミコは,自分の着ている上半身の服をそのまま,真下に下げて,両方で6kgにもなる胸を露わにして,彼の膝に跨がって,自分の胸を彼の顔に押しつけた。それと同時に,自分の腕と両手を彼の頭に廻した。


 林サミコの体を彼に接触させることで,彼から魔力を直に吸収していった。さらに,自分の手の平に『気』を流して,彼の頭部に気を流した。こうすることで,彼の霊体の所在を感知できると思った。


 1分もしないうちに,彼の体は消滅した。でも,気の流れが彼の霊体の所在を明らかにした。


 林サミコは,気を操って,霊体を確保しようとした。そして,,,なんとか,霊体を確保できた。


 林サミコ『師匠,なんとか霊体を確保できました! 師匠を煩わさないですみます』

 師匠『上出来だ。あとは,彼を説得すればいい』

 林サミコ『はい,やってみます』


 林サミコは,気の流れによって確保した霊体に話しかけた。


 林サミコ『下級暗殺者さん,わたし,林サミコです。念話できますか?』

 下級暗殺者『なんと,,,俺の霊体,,,捕まったのか?』

 林サミコ『はい,捕まえてしまいました。もう逃げれませんよ。このままでは,浄化もできませんよ』

 下級暗殺者『浄化? バカを言え,俺はまだ死んでいない!』

 林サミコ『え? 死んでいないの?』

 下級暗殺者『肉体から幽体離脱しただけだ』

 林サミコ『ええーー! 幽体離脱ーー?! すっごーーい!』

 

 林サミコは,ビックリしてしまった。彼女でも,まだ,完全には成功していない。


 下級暗殺者『お金のために無理やりやらされているだけだ。すごくもなんともない』

 林サミコ『今から,あなたのアジトに向かってもいいですか?あなたたちの責任者に会いたいのです。決して,悪い話ではありません』

 下級暗殺者『でも,,,俺にメリットが全然ない』

 林サミコ『では,あなたが体を取り戻したら,わたしをいくらでも抱いていいですよ』

 下級暗殺者『なに?ほんとうか?』

 林サミコ『はい,本当です。でも,,,わたしの体,特殊なんです。普通の人が抱くと,体が破壊されてしまいます』

 下級暗殺者『そんな細かな話は,後だ後! すぐに事務所に戻ろう。わたしも,すぐに自分の肉体に戻らないと,後遺症が生じてしまう』

 林サミコ『わかりました。タクシーを待たしています。道案内をお願いします』

 下級暗殺者『了解した』


 林サミコは,向居貴久見に『じゃあ,またねー』と言って,幸千子と一緒にタクシーに乗って去っていった。


 向居貴久見は,その場で呆然とした。10分も持続するはずの暗殺者が,2分足らずで消滅してしまった。しかも,林サミコのおっぱいを体に押しつけられて,,,


 うらやましいと思いつつも,結局,林サミコは俺と縁がないと思って,この場を後にした。


 ーーー

 1時間後,タクシーは,富士山麓に位置する,ある村の村長の家に着いた。


 林サミコは,下級暗殺者の霊体に急かされて,勝手にカギのかかっていない玄関を開けて,奥の部屋に行って,布団に横たわっている若者のそばに来た。そこで,霊体を覆った気を解除した。


 その霊体は,自動的に自分の肉体に戻っていった。


 初老の老人が,林サミコのこころに来た。彼は村長だった。


 村長「あなたは誰かな?」


 その問いに,後ろからやって来た幸千子が答えた。


 幸千子「実は,暗殺者を管理している方と相談したくて,ここまでやってきました。あなたが,暗殺者の管理をする方ですか?」

 村長「わたしは,場所を提供しているだけだ。いまでは,村の若者たちが率先して賄っている」

 幸千子「では,管理者は若者なんですか?」

 村長「いや,違う。会わせていいが,彼と面談する目的は何かな?」

 幸千子「わたしたちの仲間になってもらうためです。わたしたちは,魔獣族なんです。それで,暗殺者の方を仲間に引き入れたいと思ってここに来ました」

 村長「魔獣族か,,,遅かれ早かれ,そうなるだろうと予想はしていた。では,こちらに来なさい」


 村長が彼女らを連れていくとき,霊体を肉体に戻した若者が目覚めてた。


 若者「林サミコさん,あの,,,わたしとの約束,守ってください」


 林サミコは,ちょっと振り向いて,若者を見た。彼は元気そうだった。彼女は,幸千子に先に話しを進めてくださいと言って,若者のところに来て,ふすまを閉めて密室にした。


 林サミコは,その場で片方の乳房を露わにして,手に軽く母乳をつけた。それを自分の舌で舐めた。手の平には,ゴクゴク微量の母乳にした。

 

 その手の平を彼の胸につけた。


 若者「あれ? え? これって?」

 

 若者のあの部分が,反応するのはいいとして,その大きさが1.2倍にもなってしまった。そこで,反応は止まった。


 林サミコ「もし,母乳,そのものが体に付いたら,あなたのあの部分は破壊されます。それでもいいのですか?」

 若者「それって,わたしと約束を反故にするってことですか?」

 林サミコ「いいえ,それでもいいのなら,エッチしてあげます。でも,あなたの肉体は,確実に死亡します。あなたは,あなたの霊体は後悔するでしょう。成仏できずに,浮遊霊となってあてのない旅にをするでしょう。それでもいいのなら,あなたの性奴隷になってあげます」

 若者「さすがに,それはイヤだ。でも,約束は約束だ。林サミコ,お前は,一生,俺の性奴隷だ! 俺の童貞をお前だけに捧げる。他の女性とは絶対に寝ない!」

 

 林サミコは,溜息をついた。自分もバカだか,この若者も自分以上にバカだ。


 林サミコ「あなた,名前は? 年齢は?」

 若者「差矢部幽鬼,14歳。中学を中退してプー太郎している。仕事がなかったので,村長に仕事を斡旋してもらったら,こんな変な仕事をする羽目になった」

 林サミコ「あなたの住所,電話番号を教えてちょうだい」

 幽鬼「わかった」


 彼は,その情報を林サミコに与えた。


 林サミコ「あなた,魔力は確保できるの?」

 幽鬼「青龍様にお願いすれば,少しは確保できると思う。俺って,結構,暗殺者として貢献しているから。でも,まだ殺人はしていないから,暗殺者というより暗傷者って感じかな?」

 林サミコ「青龍?」

 幽鬼「ああ,暗殺者組合の組合長だ。事実上の最高責任者って感じだ」

 林サミコ「ふーーん,そうなの。まあいいわ。わたしの魔体が,もうすぐ手に入る予定よ。もし手に入ったら,あなたに送ってあげる。彼女の名前は森タミコ。彼女を全力で説得しなさい。メンテも忘れないでよ。犯罪をしないこと。いい?」

 幽鬼「森タミコ?」

 林サミコ「彼女は,わたしの霊体で動いているの。わたしの双子と思っていいわ。魔体だから,いくらエッチしたって問題ないわ。どう?ステキでしょう?」


 幽鬼「魔体って,俺が使っている魔体は,感覚もないし,服を着て隠れている部分は,骨丸出しだぞ」

 林サミコ「バカね。そんな低レベルのゴーレム体と一緒にしないでよ。実際の女性よりも超感度良好なのよ!」

 幽鬼「なに? ほんとうか?」

 

 林サミコは,そんなこと分かるはずもない。林サミコは,ウソがだんだんと上手くなった。その場限りでウソをつくので,その尻拭いが大変だ。


 林サミコは,なんとか幽鬼を言いくるめることに成功した。森タミコを確保できる自信はあるものの,本当にうまくいくのかは,かなり疑問が残る。

 

 ーーー

 その後,幸千子が戻って来た。


 林サミコ「え?会議は終わったの?」

 幸千子「わたしでは,役不足よ。後日,暗殺者組合長の青龍が,わたしの家に来る約束を取り付けたわ。青龍,結構,ハンサムよ。わたし,一目惚れしたかな?フフフ」

 林サミコ「・・・」


 林サミコと幸千子は,要件が済んだので,タクシーで如月邸に戻った。

 

 ーーー

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