第11話 打ち合わせ

ー キサラギ財閥,如月邸 ー


 林サミコは,当主,孔坂羽左衛門,別の身分として,魔獣族の10大長老であるでデリブラ長老と会議を持った。


 林サミコの胸の谷間に居座っているカメレオン形態のザビルと,乳房の周囲でドクロを巻いているコブラ形態のイナモル講師も,その会議に参加する。ただし,幸千子は,会議の後半から参加する。


 講師「デリブラ長老,ご無沙汰しております。外見は,すっかり変わってしまいましたが,幸千子お嬢様の講師を担当しておりました講師のイナモルです」

 当主「イナモルか。もうそろそろ寿命だと思っていたが,その体,魔体だな?どうやって入手したんだ?」

 講師「はい,実は,サミコ君は,3次元複合魔法陣を頭の中で正確無比に構築できるという異能のあることがわかりました。さらに,霊体の捕獲移動もできます。それによって,わたしが教えた魔体ゴーレムの3次元複合魔法陣を構築してもらい,わたしは,こうして,魔体ゴーレムの体を入手できました」

 

 当主は,林サミコをマジマジと見た。


 当主「サミコ君,君は,ほんとうに優秀な魔法士のようだ。それに,講師のイナモルに魔体を提供してくれて,ほんとうに感謝する。


 イナモルは,抜け人だが,縁あって5年ほど前から3年間ほど,わたしの隠密的な仕事をしてきた。だが,年齢的なことと,ちょうど幸千子が魔法に興味を持ったこともあり,幸千子の教育係にした経緯がある。

 実は,彼に時間遅延魔法を教えて,もっと長く活動してほしかった。でも,わたしの場合,宣誓契約で時間に関する魔法を他人に教えてはならないシバリがある。イナモル,申し訳ななかった。

 講師「デリブラ長老,謝らないでください。その代わり,貴重は,超古代魔法書など,見せてもらいました。自分の研究成果を試せるいい機会でした」

 当主「そう言ってもらえると助かる。サミコ君,また,君に借りができてしまったようだ。ザビルの件といい,サミコ君は,わたしの福の神かもしれない」

 林サミコ「福の神かどうか知りませんが,わたし,師匠から,いろいろな魔法を教えていただきました。師匠を助けるのは当然のことです」

 

 ちょっと機嫌の悪いザビルは,林サミコにイヤな顔した。


 ザビル「サミコ,今回は,わたしが寝ている時に,いろんなことが起こったようだな。その経緯を詳しく説明してくれないか?」

 林サミコ「ご主人様,了解しました」


 林サミコは,講師からいろいろな魔法を教わった事を伝えた。特に,魔体ゴーレムの3次元複合魔法陣は圧巻だった。それを使って,森タミコを生成した。霊体には,自分の霊体の抜け殻を利用した。


 林サミコは,森タミコを従わせようとしたが,まったく聞く耳を持たず,研究科の生徒を襲った。それを止めに入った講師が殺される羽目になったことなど,詳しく説明していった。


 ザビル「じゃあ,森タミコは,『わがままな林サミコであり,誰の命令も聞かない』と理解していいのかな?」

 林サミコ「はい,ご主人様」

 ザビル「じゃあ,森タミコは,銀次に会いにでも行ったのか?」

 林サミコ「間違いなく銀次の元に行くと思います。滝ヶ原基地に向かっているはずです。わたしが彼女なら,そうします」

 

 当主は,幸千子を会議に参加させた。


 当主「幸千子,依頼した調査は,どこまで進んでいる?」

 幸千子「銀次の情報は,まだ入手していませんが,10分暗殺者の方は,依頼方法がわかりました。ネットの裏サイトで依頼すします。ですが,今は,新規の依頼者は,暗殺依頼ができないことも分かりました。10分暗殺者の居所ですが,まだ分かっていません」


 林サミコ「あの,,,10分暗殺者の居所ですが,御殿場から車で1時間以内の場所です。わたし,御殿場で銀次を襲わせましたから」

 幸千子「サミコ,あんた,それを早く言いなさいよ。でも,それでも,かなりの広範囲になってしまうわね」

 ザビル「相手は,多分,魔鉱脈を発見したんだと思う」


 この声が,どこから聞こえたのが,幸千子にはわかなかった。


 幸千子「え? 誰が話しているの?」

 当主「お前には,言っただろう? サミコ君の二重人格者,ザビルだ。ザビル,保護色を解きなさい」

 ザビル「了解しました」


 林サミコの肩に這いつくばっているカメレオンが姿を現わした。


 ザビル「幸千子様,お初にお目にかかります。ザビルといいます。カメレオン魔獣族です」

 幸千子「ええーー? カメレオンがしゃべった!! どうしてしゃべれるの?」

 当主「幸千子,いちいち驚くな。騒がしい!ついでに,イナモル,あなたも姿を現わしなさい」

 講師「了解しました」


 今度は,コブラが,林サミコの胸元から出現して,もう片方の肩でドクロを巻いた。


 キャーー!


 幸千子が,その場から逃げるようにして尻餅をついた。


 講師「幸千子様,わたし,外見はコブラですが,イナモル講師です。コブラ魔獣族です。この体は魔体です。縁あって,この魔体を手に入れました」


 幸千子「え? どう理解すればいいの? 講師はタミコに針で心臓を貫かれて死んだんじゃ,,,」

 講師「そうです。元々の肉体は死亡しました。でも,霊体は死にません。幸い,この魔体を手に入れました。今は,そう理解していただきたい」

 

 幸千子は,当主を睨んだ。


 幸千子「当主は,初めからこの事実を知って,でも,わたしに隠していたのですね? わたしって信用ないのですね」

 当主「そう,怒るな。お前に獣魔族の世界に関わらせたくなかっただけだ。でも,イナモルを魔法講師にしたときから,それは,無理だとだんだんと思うようになった。


 ならば,この際,徹底的に,幸千子,この魔獣族に関わってもらう。これまで以上に,危険な目に遭うだろう。殺されることもあるかもしれない。でも,その場合でも,サミコ君がそばにいれば,生き残る可能性がある」

 幸千子「?」


 当主は,林サミコが,異能を使って,霊体に魔体を与える能力のあることを説明した。


 幸千子「サミコにその異能があるのは,森タミコが,サミコのそばに出現したので理解できます。

 つまり,林サミコさえ,生きていれば,われわれは,何度でも生き返ることができる,そういう意味なのですね?」

 当主「そうだ。幸千子の魔力ベストの魔力がなくなったのも,サミコ君がそのパワーを使って,森タミコやイナモルの魔体を生成したためだ」


 幸千子は林サミコを睨んだ。そして,溜息をついた。


 幸千子「なるほど,,,そうだったのですか。魔力ベストは充分に役立ったのですね」

 当主「大いに役立った。イナモルの霊体に魔体を与えることができた。でも,同時に,制御不能な森タミコを産んでしまった」


 ザビル「わたしは,銀次とは面識はありませんが,銀次は,これまで犯罪を犯していないようです。たぶん,警察を恐れているのでしょう。ならば,森タミコは,銀次の言うことは聞くのではないでしょうか?銀次の制御下になると理解していいと思います。さほど,心配しなくてもいいかもしれません」


 当主「なるほど,,,さきほど,スパイから,林サミコが,まあ,今回は,森タミコになってしまうが,彼女が銀次を脱出させる条件として,銀次は,彼女以外の女性とあの行為しないと約束したそうだ。そうなると,銀次としても,森タミコから離れることはしないと思う。しばらくは,森タミコのことは放置してもいいだろう。


 それよりも,10分暗殺者の経営者の居所を掴むのが先だ。わたしの予想だが,警察は当然のことだろうが,他の魔獣族の連中も居所を探っていると思う。仲間に引き入れるためだ。戦力的な拡充が期待できそうだしな」


 講師「なるほど,,,もし,10分暗殺者の経営者が,われわれの仲間になれば,戦力強化だけでなく,他の長老たちよりも,優位な立場になるってことですね?」

 当主「そうだ。長老会での発言力が,多少とも増すのは間違いない」

 ザビル「でも,10分暗殺者の経営者は,サミコを自殺に追いやったんですよ。少しは,ギャフンと言わせたです。その点も忘れないでください」

 当主「ザビル,そうだったな。了解した」


 その後,さらに細かな打ち合わせを行い,10分暗殺者誘き出し作戦を立案して実行に移った。

 

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