第6話 これが恋なのね?

ー ラブホテル ー


 ラブホテルでは,銀次は,痛くもないのに体を横にしていた。つい先ほど,林サミコから,10分で消えてしまう暗殺者の情報を知った。どうやら,あの魔法を使える男のことだと思った。


 今の銀次は,林サミコの部屋の隣にいる愛人が,他に間男を捕まえたので,お払い箱になってしまった。転がり込む場所は,林サミコの部屋しかない。二影攻略を攻略したところで,二影の部屋は,女子寮なのは分かっている。銀次が住むには適さない。


 二影が弁当を買って来た。


 二影「銀次君,体調はどう?弁当を買ってきたわよ。一緒に食べましょう」


 二影は,銀次のことを銀次君と呼んだ。メイド喫茶の時とは,えらい違いだ。


 銀次「二美さん,あなたは,もしかして,ニュースで話題になった札幌決戦で大活躍したSART部隊の方ですか?その部隊の中には,魔法専門の特殊部隊があるって。それに,一影さんが,その隊長として活躍したっていう記事もありました。もっとも,サングラスをして,カツラを被ってしましたから,素顔はわかりませんけど」

 

 二影は,これ以上,誤魔化せれないと思って正直に話した。


 二影「そうよ。わたし,二影っていうの。わたし,SART部隊の魔法部隊の一員よ。でも,このことは黙っててちょうだい」

 銀次「はい,もちろんです。わたしをここまで親身に看護してくれたお姉様を裏切ることはできません。お姉様,あの,魔法を放った敵は,いったい何だったのですか? 体に孔が空いて消えてしまいましたけど?」

 二影「わからないわ。でも,人間と同じように話していたわ。体は,魔法か何かで構成されて,人間の霊体を取り込んだ魔人って感じなか?」

 銀次「魔人?なるほど,,,魔法で,そんなこともできるんですね。ところで,お姉様がしつこくて,蹴り倒したっていう人物は誰だったんですか?」

 二影「彼?知らないわ。あっ,そういえば,名刺もらったわね。まだあるかしら」


 二影は,カバンの中をごそごそして,1枚の名刺を取りだした。


 二影「あったわ。なになに,御殿場医療専門学校1年,向居貴久見って書いてあるわ。まあ,近場の学生さんね」

 銀次「この名刺,貰える?」

 二影「どうせ捨てるもんだからね,いいわよ」


 銀次は,その名刺の写真を撮って,林サミコにラインで送った。さらに,『この男から10分で消える男の情報を聞き出しなさい』と指示した。


 二影「それはそうと,銀次君,わたしも,,,その,,,ここで泊まっていい?」


 銀次は,その意味を理解した。銀次は,メガネをしているので,流し目は効かないはずだ。でも,このラブホテル代も二影が出しているので,銀次の許可など不要だ。それでも,銀次に尋ねるということは,,,あれしかない。


 銀次「お姉様,もちろんです。一緒にそばにいてくれたら,とっても嬉しいです。お姉様,ここに来てくれますか?」


 二影は,モジモジした。


 二影「いいの?」


 二影はそういいながら,銀次のとなりで横になった。


 銀次はやさしく二影の体の上によりかかってキスをした。



 ーーー

 林サミコは,銀次から10分で消える暗殺者の情報を得た。そこで,お金のあるときなら,何も考えずにタクシーを飛ばすのだが,今は,金欠だ。慣れないネット検索をして,御殿場に楽で安心していける方法を検索した。結局,高速バスで行くことにした。


 翌日の日曜日の午前中,林サミコは御殿場に着いた。ルリカは,マンションに放置した。ほっといても,泣くことはないし,今朝も,たっぷり母乳を飲ませたので,飢え死にすることもないだろう。それに,クララが,ときどきはルリカの面倒を看ると言ってくれたので大助かりだ。クララも,大量に母乳が出るので,乳房が張ったときは,ルリカに母乳を飲ませている。ルリカは,いくらでも母乳を飲むことができた。まるで底なしの胃袋のようだ。


 林サミコは,御殿場医療専門の受付に顔を出して,向居貴久見の住んでいる住所や電話番号,顔写真などを確保した。もちろん,『針』を使った短時間の精神支配方法だ。


 林サミコは,電話番号をゲットしたので,『ザビルの楽々殺しテクニック』No.3を適用することにした。エッチしたいという誘いをして,ライン登録してくれたら,ビデオチャットしてあげると誘った。案の定,ライン登録してくれたので,自分の豊満な胸の谷間の写真を送った。


 ものの30分もしないで,向居貴久見は,林サミコの前に現れて,すぐにラブホテルに入った。


 林サミコは,すぐに精神支配できる状況だった。でも,それは最後の手段に取っておくことにした。だんだんと経験を積んでくると,『遊び』を入れたくなる。


 林サミコ「あの,,,わたしの母乳,ちょっと,毒があるみたいなので,触らないでくだしね?」

 向居貴久見「え?何? 母乳が毒?まさか?」

 林サミコ「実は,ほんとうなんです。男性のあの部分が破裂するって,言われました」

 向居貴久見「ハハハ,冗談だろう。そんなこと,あるわけがない」

 林サミコ「じゃあ,,,試してみますか?そうですね,,,母乳を水で100倍くらい薄めたら,効果は少しだけで済むかもしれません」

 

 林サミコは,近くにあるコップに数滴の母乳を入れて水で薄めた。


 向居貴久見「これをあの部分に付着させてみてください」

 

 林サミコがそういうなら,本当かもしれないと思った。そこで,恐る恐る,コップから数滴をあの部分に垂らした。


 ムクムク!


 向居貴久見「え? あれ? 何?」

 

 彼のあの部分が,確実に膨らんできた。でも,それ以上の変化はなかった。もし,これが原液だったなら,,,


 向居貴久見「どうやら,本当みたいだ。でも,このままでは,エッチはできないではないか?!」

 林サミコ「できる方法はあります。でも,その前に,わたしのお願いを聞いてくれますか?」

 向居貴久見「先にできる方法を言え」

 林サミコ「わたしのお願いを聞いてくれたら,1週間,あなたの性奴隷になります。いくらでもわたしを犯してください。でも,今すぐ,エッチできる方法でしたら,今日限りでお別れです。どちらがいいですか?」

 

 向居貴久見「それ,本当だな?約束は守れよ」

 林サミコ「わたし,ウソという言葉,わたしの辞書にありません」

 向居貴久見「・・・」


 林サミコ「わたしのお腹,妊娠していますが,この父親に復讐したいんです。わたしをこんなお腹にしていながら,今でも,たぶん,どこかで別の女性とエッチしていると思います。彼を殺してやりたい,,,いえ,殺すのはやりすぎですが,でも,懲らしめてやりたいんです」

 

 向居貴久見「その彼は,どこにいるのかわかるか?」

 林サミコ「はい,彼の名前は銀次といいます。銀次の携帯のGPS信号を探ればわかると思います。でも,その仕方がわからないので」

 向居貴久見「その携帯を見せなさい」


 林サミコは,携帯を渡した。彼は,いろいろと操作をして,銀次がどこにいるのかを割り出した。


 向居貴久見「どうやら,別区画のラブホテル街にいるようだ。どうだ? すぐにでも復讐したいか? この町なら,特急料金で,1時間以内に暗殺者が現場に来てもらえる。費用は30万円。通常料金だと,2,3日以降になる。15万円でいい」

 

 林サミコ「あの,,,特急料金でお願いできますか? あの,,,費用も立て替えてもらえたら嬉しいんですけど,,,そのかわり,3ヶ月間,あなたの性奴隷になります!肉便器でもなります!オシッxでも飲んであげます!うxこでも,食べてあげます!」

 

 向居貴久見「3ヶ月ではダメだ。半年間の性奴隷だ」

 林サミコ「・・・,わかりました。同意します!」

 向居貴久見「よし,では,すぐに依頼する!」


 向居貴久見は,携帯の裏サイトを開いて,暗殺者の送付場所などの情報を入力していき,特急料金の30万円を送金した。


 向居貴久見「いいか,暗殺者は,10分しか有効ではない。だから,銀次のいるすぐそばで,暗殺者を受け入れて,彼に,銀次の顔写真を渡す必要がある」


 林サミコは,ほんとうに銀次に復讐したい気になった。だって,二影を攻略しに行ったのに,ぜんぜん帰って来ない。それに,エッチだって出来ないって言ったのに,どうしてラブホテルにまだいるの?


 林サミコ「わたしの携帯に銀次の写真があります。たしか,コンビニで印刷できましたよね?」

 向居貴久見「もちろん出来る。今から出かけよう。あまりのんびりできないぞ」

 林サミコ「はい!ご主人様!」

 

 向居貴久見「フフフ,『ご主人様』か,,,いい響きだ」


 向居貴久見と林サミコは,ラボホテルを出て,近くのコンビニで銀次の顔写真を印刷した。その足で,別区画のラブホテル街に移動した。その周辺についてから,向居貴久見は,林サミコの携帯を使って,銀次の所在をさらに詳しく調べていった。


 幸いだったのは,この辺のラブホテルは,1階造りだったので,すぐに銀次が泊まっているホテル番号の割り出しができた。


 向居貴久見「銀次は,105号室にいる。暗殺者が来るのは,あと10分後くらいだ」

 林サミコ「あの,,,殺すことまではいらないですから」

 向居貴久見「大丈夫だ。暗殺者と言っても,いろいろレベルがあって,俺が依頼したのは,一番の,下級暗殺者だ。殺人実績はゼロ。いままでが,すべて軽傷か重傷どまりだ。中級暗殺者になると,料金が3倍に跳ね上がり,確実に相手を暗殺する。上級暗殺者になると,複数のターゲットを対象にする。その場合,料金はピンキリだ。だから,下級暗殺者の依頼が,最近とても多いらしい」

 林サミコ「そうなんですか,,,でも,これで銀次を痛めつけられますね。フフフ。嬉しいです」


 向居貴久見「そうか? おっ! どうやら暗殺者の車が来たようだ」


 その車は,軽自動車で来た。どこでも止めれるので,一番便利だ。ただ,助手席のサングラスをかけたお兄ちゃんが,何か電話で叫んでいた。


 「えー? 間違い? でも,そんな今さら,,,え? 料金は据え置き? はい,それなら先方も納得しますでしょう。はい,了解でーす」


 そう言って,助手席の人は,車から降りて,向居貴久見のところに来た。


 助手席の人「また,会いましたね。いつもご利用ありがとうございます」

 向居貴久見「へへへ,お得意さんになってしまいました。それで,暗殺者は?」

 助手席の人「はい,まだ起動していませんが,すぐに起動できます。ですが,ちょっと手違いがありまして,そちらの依頼は下級暗殺者でしたよね。ですが,担当者が間違って,上級暗殺者を指定してしまったんです。珍しく特急依頼だったので,上級と勘違いしたようです。

 上級暗殺者の稼働時間は20分,確実にターゲット10人は殺せるパワーがあります。

 でも,起動した彼に,ターゲットを殺さないように指示してくれれば,手加減してくれますので,下級暗殺者と同等の働きをします。それで,よろしいでしょうか?あっ,あの,料金は,そのままで結構です。追加料金は発生しませんので,安心してください」


 向居貴久見は,林サミコの顔を見た。林サミコも銀次が殺されないなら問題ないとみて,首を縦に振った。林サミコは,銀次がすでに死んでいることをすっかり失念していた。


 向居貴久見「はい,それで結構です。では,暗殺者を起動してください」

 助手席の人「了解しました。では,起動しますね」


 助手席の人は,後部座席で座っている暗殺者の起動スイッチを稼働させた。


 後部座席からフードを被った男が出て来て,ゆっくりと向居貴久見のところに来た。


 向居貴久見は,銀次の写真を渡した。


 向居貴久見「ターゲットの名前は銀次。あのラブホテルの105号室にいる。殺す必要はないが,痛めつけてほしい。銀次は,隣にいる彼女のお腹の子の父親だ。でも,今,まさに彼女をほっといて,浮気している,,,はずだ。そんな浮気症の銀次のしょうのねを叩き直したい」


 この内容に,上級暗殺者は,眼を輝かした。


 上級暗殺者「なるほど。そんな浮気性の銀次は,生きる価値もない。お嬢さん,もう銀次は諦めなさい。ほかにもっといい男を探しなさい。隣にいる彼でもいいのではないか?」


 向居貴久見と林サミコは,お互い眼を合わせた。


 林サミコ「はい,,,それもいいかもしれません」


 林サミコは,ほんとに銀次から彼に鞍替えしてもいいかもしれないと思い始めた。林サミコは,他人の意見に左右される意思の弱い女性だった。

 

 それよりもなによりも,林サミコがここに来た目的が何だったのか,それすらもわからなくなっていた。


 上級暗殺者「うけたまわった」


 上級暗殺者は,ゆっくりと105号室に向かって行った。


 

 ーーー

 ラブホテルの105号の部屋の中では,銀次と二影が,あの行為を行っていた。なんと,二影は,銀次の巨大なあの部分を完全に受け入れることができた。それも,なんの抵抗もなくだ!


 これには,二影以上に,銀次がびっくりした。しかも,二影は処女だった。処女なのに,,,銀次をすべて受け入れることができた。


 その理由がどこにあるのかは,すぐには分からなかった。


 でも,二影から,いろいろと愛の遍歴を聞いてみると,クララと双修をしていることがわかった。クララは,魔獣族の子供を妊娠している。そのことが大きく関係しているだろうことは予想がついた。


 銀次『ということは,一影から九影とは,わたしと正常にあれができるってこと?』


 銀次は,心の中で,彼女らを手籠めにするという復讐心が沸々と再燃した。


 二影は,銀次が血を飲みたいとお願いされると,素直に血を与えた。二影の血には,豊富な魔力が含まれていた。ついつい調子に乗って,500mlも飲んでしまった。二影の魔力は大幅に減少してしまった。


 銀次は,寝る暇を惜しんで二影を抱いた。銀次が二影の体の中に注入するのは精子ではない。魔法因子だ。魔法因子からDNAを形成し,精子と同じ働きをする。


 二影は,何度も銀次に抱かれて,しかも排卵日に当たっていた。


 二影「わたし,間違いなく妊娠したと思う。わたしと結婚してくれる?」

 銀次「お姉様,ボクも結婚したい。でも,ボクのお願いも聞いてくれる?」

 二影「なんでも聞いてあげるわ」

 銀次「実は,ボク,気功術を習っているって,言ったよね」

 二影「聞いたわ。趣味でしているって」

 銀次「実は,ボクの師匠,先輩なんだけど,和輝っていう名前なんだ」

 二影「え? 和輝? あの殺された?」

 銀次「うん。和輝様は,札幌決戦で殺されたんだ。でも,彼を殺した人には恨みはないよ。だって,和輝様は,それだけ悪いことをしたんだから。でも,それでも,わたしの師匠だし,先輩なんだ。実は,正直にいうと,あなたに会うのも,師匠を殺した人がどんな人かなって,思って近づいたんだ。二影さんて,でも,最高にステキな人だ。結婚したい!」

 二影「そうなの,,,いいよ。結婚してあげる」


 銀次「でも,,,二影さんはいい人だけど,他の人はどうかな?できれば,ほかの人にも会う機会を作ってくれる?できれば二人きりで会う機会を作ってほしい。決して,彼女たちに危害は加えないよ。どんな人なのか,どんな性格なのか,それぞれ知りたいんだ。それが,和輝師匠,和輝先輩へのはなむけになると思うんだ。それをしてくれたら,それを実現してくれたら,すぐに二影さんと結婚する」


 すでに死んでいる銀次には結婚する資格はないのだが,,,

 

 銀次は,そういいながら二影を何度も抱いて,絶頂へと導いた。彼の愛のテクニックは,すでに神業に近いものだ。彼と肌を合わせてしまうと,もう彼以外との行為は考えられなくなってしまう。銀次の『気』のパワーには,そのような効果がある。相手のすべての感覚を何倍にも増強させてしまう。


 二影は,全身痙攣が走り,その痙攣がぜんぜん収らなかった。それも銀次のテクニックのひとつだ。痙攣神経のツボをうまく刺激させることで,絶頂快楽の神経を刺激し続ける,,,銀次の愛のテクニックNo.5だ


 二影は,銀次の依頼に同意した。同意せざるを得なかった。この快楽の中では,もう銀次のいいなりだ。二影は,銀次に洗脳された状態になった。銀次の奴隷になってしまった。それに,愛の行為をする最中は,銀次はメガネをはずす。二影が,銀次の素顔,流し目を見てしまうと,体に『恋』という文字が全身を駆け巡るかのように,電流が走った。


 二影『これが恋なのね,,,ああ,,,幸せ,,,』


 二影は,恋という世界の中で溺れていていた。



 ドンドン!


 ドアが激しく叩かれた音がした。


 ダーン! 今度は,カギが壊されて,ドアが開いた。そこには,フードを被った男が立っていた。上級暗殺者だ。


 上級暗殺者は,ベッドで全裸の男女が肌を合わせているのを見た。強烈に嫉妬を感じた。


 上級暗殺者『絶対に銀次を殺してやる!あの超かわいい,かつ超巨乳の少女に妊娠させておいて,尚且つ,今,まさにほかの美人の女性とあれをしている! 翻って,俺は,まだ童貞のままなのに! 絶対に不公平だ! 世の中,間違っている!!』


 彼は,ベッドの銀次に向かって叫んだ。


 上級暗殺者「銀次! すぐにその女性と離れろ! さもないと,その女性も死んでしまうぞ!」


 快楽の海の中にいた二影が,その声にすぐに反応した。二影は,メイド喫茶で遭遇した魔法を発動する男だとすぐに分かった。


 バシュー,バシュー,バシュー!ーー


 二影の初級針状爆裂弾が発射された。やはり10連発だ!


 これで,メイド喫茶の男は,粒子状になって消滅した。


 この場にいた男も体に10箇所の孔が空いた。だが,,,消滅せずに,自動回復していった。


 上級暗殺者「なんと! 女は,魔法が使えるのか!では,もう遠慮はいらん」


 上級暗殺者は,魔法陣を発動して,上級氷結弾を連弾した。


 ドシュー!ドシュー!ーーー


 5連発の上級氷結弾が銀次と二影を襲った。


 二影は,自分の体内に残っているなけなしの魔力を発動して,銀次を庇うようにして,自分の周囲に防御結界を構築した。


 その防御結界は,5連発の上級氷結弾を防御した。しかし,二影は,それで,自分の魔力を完全に消費してしまった。


 二影「銀次君,わたし,もう魔力がない。ごめんね。巻き添いにしてしまって」


 二影は,この暗殺者も,二影を殺そうとしていると勘違いした。


 銀次は,暗殺者に声をかえた。


 銀次「おい,暗殺者! 彼女は,関係ないんだろう? ターゲットは俺だけだろう? ならば,俺だけを狙え!」

 上級暗殺者「フフフ,いさぎがよいな。でももう遅い。俺様に魔法攻撃をしたからな」


 上級暗殺者は,魔法陣を発動した。


 その発動する一瞬の隙を利用して,二影は,銀次の手を取って,ベッドから跳ね起きて,窓ガラスを割って外に出た。


 銀次と二影が全裸のまま,ガラス破片が落ちている地面に落下した。


 二影は,自分の体がぜんぜんガラスで怪我していないのに,不思議がったが,今は,それどろこではない。すぐに逃げないとだめだ。


 上級暗殺者も,その窓から飛び出して来た。


 二影は,後ろ向きに逃げては,魔法攻撃の的になってしまうと思い,もはやここまで!と諦めた。


 二影「銀次君,もう逃げれない。ここで一緒に死のう」

 

 二影は,銀次を抱いて,上級暗殺者から見えないようにした。せめて,銀次を少しでも長く生かせるためだ。


 上級暗殺者「では,死ね!」


 ドシュー!ドシュー!ーーー

 

 5連発の上級氷結弾が銀次と二影を襲った。


 だが,不思議なことに,5発の上級氷結弾は,カーブを描くようにして,銀次と二影から逸れていった。


 上級暗殺者「あれ? カーブした。そんな機能あったのかな?説明受けていないぞ?」


 上級暗殺者は,再度,5連発の上級氷結弾を放った。しかし,それらの弾は,前回と同様に逸れていった。


 上級暗殺者「あれ? またカーブした。このままでは,魔力切れして,20分も経たずに消滅してしまう。残り,10分,肉弾戦で,銀次を殺す! 幸い,俺は,生前,空手3段だったからな」


 その言葉を聞いて,銀次は,3角錐の霊力の防御を解除して,二影を横にどけて,立ち上がった。


 銀次「では,わたしも,気功術で相手してあげます」

 

 銀次は,霊力で肌色のパンツの形状を造り,陰部が見えないようにし,かつ,動き回っても,ブラブラしないようにもした。


 上級暗殺者「ほほう,威勢がいいな。この魔体は,実際の肉体よりも5倍ほどの速さと強度を持つ。魔法が使えなくても,この魔体で余裕でターゲットを殺せる。では,参る!」


 上級暗殺者は,5倍速と5倍の強度で銀次に向かって,蹴りと突きの連続技を放った。銀次は,覚えたての気を全身に展開して,それを受けた。


 ダーン!


 上級暗殺者の蹴りが,銀次の両腕にヒットして,銀次を数メートル吹き飛ばした。


 銀次は,この戦いでは,極力霊力を使わないことにした。リルカが居なくなると,霊力の補充がなくなり,霊力が消滅する。その時に,頼りになるのは『気』しかない。気を極めることは,銀次にとって,最重要課題のひとつだ。


 銀次は,ゆっくりと起き上がった。


 また,この時,向居貴久見や林サミコも,中庭に移動してきて,銀次と上級暗殺者の戦いを見た。また,その近くで,全裸の二影も座った姿勢で,銀次と上級暗殺者の戦いを見た。


 その戦いのレベルは,もう,一般人が対処できるようなレベルではなかった。間違いなく,銀次は殺されるだろうと思った。


 ダ~ン!ダーン!


 銀次が立ち上がる度に,上級暗殺者が,5倍速で5倍強度の蹴りと突きで,銀次を吹き飛ばした。銀次は,すべて腕で防御したものの,蹴りや突きの勢いを殺せずに,吹き飛ばされた。


 でも,銀次は,何度も立ち上がった。


 上級暗殺者は,焦った。


 上級暗殺者『なんで,銀次の体にヒットしないんだ?でも,もう時間がない。このまま攻撃をするしかない!』

 

 上級暗殺者は,銀次を蹴りと突きで銀次を吹き飛ばした後,銀次が起き上がるのを待たずに,彼に襲いかかり,強烈なローキックを放った。


 だが,そのローキックも,銀次の両腕で防御されて,また,銀次を数メートル吹き飛ばした。


 上級暗殺者は,これを続けてもラチがあかないと判断した。


 暗殺者たちは,火炎弾の発射は禁止されている。延焼する危険性があるからだ。でも,もうそんなことはどうでもいい。


 上級暗殺者は,残りすべての魔力を投入して,S級火炎弾を銀次に放った。


 その強烈な火炎弾は,地面に倒れている銀次に確実にヒットした。その高熱は,地面を1メートルもえぐってしまった。銀次は,その場で火の玉に覆われて死亡したかのように思われた。


 上級暗殺者「やっと,銀次を殺せた,,,」


 上級暗殺者は,満足な顔を浮かべながら,粒子状になって消滅した。


 向居貴久見は,銀次が死んだと思って,林サミコに声をかえた。


 向居貴久見「サミコさん,銀次は死んでしまったようだ。あなたには,もう,わたししかいない。わたしの部屋に行きましょう」


 林サミコは,あんな火炎弾攻撃ごときで死ぬ銀次ではないことを知っている。でも,向居貴久見の約束もあるので,彼の部屋に行くことにした。


 林サミコ「そうですね。銀次のことはもう忘れます」

 向居貴久見「それがいいですよ。まだ,人生は長いですから」


 向居貴久見と林サミコは,この場から去った。


 二影は,恐る恐る火炎弾によってクレーターができたところに移動した。そこには銀次の姿がなかった。二影は,銀次が完全に焼失したものと思った。


 二影は,自分の将来の夫が死亡したと思って,その場で泣き崩れた。もし,妊娠していれば,せめてこのお腹の子だけでも,しっかりと産もうと心に決めた。


 ピーポーピーポー!


 地元警察が来た。すでに暗殺者はおらず,銀次もいない。警察は,いったい誰を捕まえればいいのか??


 全裸の二影は,SART隊員で警察官待遇だ。その身分は,地元警察官よりも遙かに上だ。


 二影は,警察官から電話を借りて,一影に事情を報告した。その後,回り回って,警視庁本部から,地元警察に連絡が入り,本件は,地元警察は一切の手出し無用ということになった。


 地元警察官は,状況がさっぱりわからず,でも,命令なので,さっさと現場から離れていった。


 ーーー

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