第46話 シレイ

 寿彩華(ことぶきさいか),女性,29歳。独身。もう若くない。一緒に遊んでくれる友人もいない。もっとも彼女の場合,夜の仕事なので,友達といえるような友人はいない。


 しばらくスナックを休んで一人旅に出た。一人旅と言っても,どこかの温泉に連泊して,近場の散策コースを歩く程度だ。でも,今日は違った。ちょっと散策コースから外れて,近くの川縁にたたずんで,自分の人生を見つめ直していた。


 1人でこのような場所に来るのは少々危険な行為だ。もしかすると,男どもに囲まれて犯されるかもしれない。でも,それは彼女の望みでもある。恋愛は諦めた。誰の子でもいい。妊娠したかったというのが正直なところだ。そのために,わざわざ妊娠しやすい時期を選んでひとり旅に出た。


 寿彩華がたたずんでいる川は,意外と大きな川だ。水面はことのほかなだらかで,のんびりと物思いに沈むにはちょうどいい感じだ。


 「なんか,彼氏が目の前にあらわれないかなぁ,天から彼氏が降ってこないかなぁ,刺激的なことがないかなぁ」


 彼女は,こんなしょうもないことを頭の中で考えていて,思わず,口からもその言葉が出てしまった。


 すると,その言葉は現実になった。天から降ってこないが,川からなにやら男性が流れてくるではないか!! 


 『神様は,願いを叶えてくれたのだ!!』


 彼女は,川から流れてくる男性を彼氏だと思い込んで,すぐに助けることにした。 彼女は小さい頃から水泳が得意だ。なんら躊躇うことなく服を脱いで下着姿になって川の中に入っていった。


 彼女は,流れてきた男性を川縁になんとかして運んだ。彼は息をしていなかった。彼女はすぐに救急措置を施した。水泳スクールでは,心マッサージやマウストゥマウスの仕方も教える。彼女もそれくらいはマスターしていた。


 ゴホッ,ゴホッ,ゴホッ!


 5分ほど続けると,彼は息を吹き返し,飲み込んだ水を少し吐き出した。彼は意識を取り戻した。彼はシレイだった。


 寿彩華「よかった。生きていたのね?」

 シレイ「あれ?おれ,,,意識を失っていたのか?」

 寿彩華「どうやらそうみたい。どう?立って歩けそう?」

 

 そう言われて,シレイは体を起こそうとした。しかし,どうやら力がまったく入らない。それを見た彼女は,リュックからチョコレートを取り出して彼の口の中に入れた。


 寿彩華「これを食べてちょうだい。少しは体力が回復すると思うわ」


 シレイは返事することなくそれを食べた。彼女はさらにタオルを出して彼の顔を拭いてあげた。でも,全身濡れ鼠なので焼け石に水だ。


 寿彩華「体が冷えるといけないから,濡れた服を脱がすわね」


 そう言ってから,彼女は彼の服を脱がしてズボンも脱がした。上半身が裸になりパンツ一丁だけになった。でも,こんなところで恥ずかしがる場合ではない。彼女は彼のパンツも脱がした。彼の陰部が露わになった。でも,恥ずかしがることはしなかった。だって,彼はわたしの彼氏なのだから,,,


 彼女は,全裸になった彼の体をタオルで拭いてあげた。その後,彼に自分の着ていたウインドブレーカーを着させた。濡れた服やズボン,パンツはよく絞ってできるだけ水を抜いた。


 彼がチョコレートを食べ終わるのをみて,次にジュースを飲ませてあげた。


 一段落ついたところで,彼女は自分が下着姿で,その下着も濡れていることに気がついた。彼女は,彼に背を向けて下着を脱いで水を切りリュックの中にしまった。彼女は下着なしで上着とズボンを着た。べつに乳首の出っ張りが見えたところで気にすることはない。


 ある程度,シレイが体力を回復したところで,濡れた服とズボンを着て,寿彩華の誘いにのって彼女の泊まっている温泉旅館に行った。そこで,食事,風呂をあてがわれて,シレイはやっと一息ついた。


 シレイは,寿彩華がとても素直はいい女性だと思った。そこで,思い切って自分の希望を彼女に言った。


 シレイ「あの,,,ここまでしてもらってほんとうにありがとうございます。

感謝しています。それで,,,いいにくいのですが,わたしをしばらく彩華さんのマンションに居候させていただけないでしょうか?その代わり,彩華さんの言うことはなんでもします。料理はできませんが,掃除とか買い出しくらいならできます」


 この言葉は,寿彩華が喉から手が出るほどほしい言葉だった。


 寿彩華「そうね。じゃあ,あなたは今からわたしの奴隷です。それでもいいのですか?」

 シレイ「はい,それでいいです。でも,わたしが去る時期だと感じたら,去らせていただきます」

 寿彩華「その去る時期っていつ頃なの?」

 シレイ「わかりません。でも,ある女性を見つけるまでです」

 寿彩華「その女性って,あなたの彼女?」

 シレイ「いいえ,違います。同僚です」


 シレイは,性奴隷と言おうとしたが,同僚という言葉で誤魔化した。


 シレイ「実は,タクシーに二人で乗っていて,事故に遭ってしまいまい,離れ離れになってしまいました。もし,警察がすぐに来てくれたら,警察に保護されているのかもしれません」

 

 寿彩華は,これ以上聞くのは止めにした。せっかく,天から降ってきた彼氏なのだ。その彼氏が別の女性を気にしている話など,聞きたくもない。


 寿彩華「わかったわ。その女性を探すのは,わたしのいない時にしてちょうだい。もう,この話は終わりよ」

 シレイ「あの,,,居候させていただく件は?」

 寿彩華「しょうがないわね。でも,,,そうね,,,少なくとも,半年はわたしのマンションに居て,わたしの命令に絶対服従すること。それが条件よ」

 シレイ「約束はできませんが,できるだけ希望にそうようにします。あの,,,おれ,,,お金がまったくなくて,,,」

 寿彩華「小遣いのことね?そうね,,,月10万円ならなんとかなるわ。それだけあれば十分でしょう?」

 

 シレイはニコッとした。


 シレイ「ありがとうございます,ご主人様!」


 シレイは,寿彩華を『ご主人様』と呼ぶことにした。これで,夏江に引き続いて2人目のご主人様だ。


 その後,シレイは,東都にある寿彩華のマンションで,寿彩華の奴隷身分となった。


 ーーー

 シレイは,夏江から人をもう殺さないと約束させられている。確かにそのほうがいいに決まっている。だが,それだど,魔力の補充ができない。シレイの得意とする呪符で獣を呼び出すこともできない。どうすればいいか思案していた。


 シレイが,寿彩華のマンションに来た翌日,彼の体調もほぼほぼ回復したのをみて,彼女は彼に性的奉仕を要求した。だが,シレイのあれは特別製だ。直径20cmにも達してしまうほどだ。

 

 シレイ「ご主人様,大変言いにくいのですが,わたしのあの部分は,病気になっています。あっ,その,性病ではありません。巨根症といって,反応してしまうと,直径20cm近くもなってしまいます。正常にエッチするのは,,,ちょっと,,,」

 寿彩華「なんと,まあ?!!」


 寿彩華は,嬉しいやら悲しいやらでびっくりした。シレイは,ふと,金城ミルカのことを思い出した。彼女は,シレイの粘液を飲むことで,体力の増強を成し遂げた。当然,あの部分も強靭なものになっていると思った。そこで,このことを寿彩華に話してみた。


 シレイ「ですが,わたしの精子を飲むと,体力を増強させるようです。体調がよくなるだけでなく,筋力も増すようです。当然,あそこも強靭になると期待できるかもしれません」

 寿彩華「まあ。あなた,ほんとうに人間なの?」


 寿彩華は冗談のつもりで言った。でも,その冗談はシレイに通じなかった。


 シレイ「実は,おれ,,,人間と獣のハーフなんです」


 このことを聞いて,彼女は笑ってしまった。それこそシレイが冗談を言っていると思った。


 寿彩華「冗談は止めにしましょう。まあ,ダメ元で,しばらくシレイの精子を飲むことにするわ。ほんとうかどうか分かるでしょう」


 精子のことはいいとして,シレイは肝心のことを聞いた。


 シレイ「あの,ご主人様。もしかして,もうすぐ生理が始まるのですか?」

 寿彩華「あら?よく知っているわね。もうすぐ生理が始まるわ。あっ,そんなこと言っているから,ほんとうに始まったわ」


 彼女のあそこから血がにじみ出てきた。それを見たシレイは,思わず,口をそこに当てて血を,かつ,それと一緒に流れてでてきたものも飲んだ。


 寿彩華「ちょ,ちょっとシレイ!あんた,何勝手に吸っているのよ!!」

 

 まさかシレイが自分の生理で排出したものを飲んでしまうとはびっくりだ。


 シレイ「あの,おれ,,,これが自分の奴隷としての仕事だと思います」

 寿彩華「・・・」


 彼女にとって,別に捨てるものだから,それをシレイに吸われようがどうでもいい。でも,そんなことを言われると,ちょっと嬉しくなってしまう。彼女も変態志向があったのかもしれない。


 シレイは彼女のものを飲んだ。しばらくすると,少しだが魔力が回復しだした。


 『これだ!!』 


 シレイは,女性を殺害することなく,魔力を回復するすべを知った。


 それからというのも,寿彩華が夜の仕事で留守にすると,シレイは,近場で500円のチーズケーキを買ってきて,同じマンションの周囲をうろちょろしだした。シレイは,犬並みに鼻が利く。ドアの外にいても,生理中の女性がいるかどうかはすぐにわかる。物音から,その女性がひとりだと判断した場合,そのドアのチャイムを鳴らす。


 すると,ドアが開いた。まったく無防備な女性だ。もっとも,これが普通の行動なのかもしれない。


 女性「どちら様?」

 シレイ「あの,,,同じマンションに引っ越してきたものです。シレイといいます。それで,お近づきの印にこれ差し上げます」


 シレイは,スポンジケーキを差し出した。


 女性「あっ,これ,ルンルンおじさんのチーズケーキ!いっつも行列ができているから,なかなか買えないやつだわ。入って,入って!一緒にお茶しましょう!」


 こうなればしめたものだ。このようにうまくいく女性もいれば,そうでない女性もいる。


 女性「どちら様?」

 シレイ「「あの,,,同じマンションに引っ越してきたものです。シレイといいます。それで,お近づきの印に,これ差し上げます」


 シレイは,スポンジケーキを差し出した。


 女性「あっ,すいません。わたし,他人から物もらうのダメなんです。ドアを閉めますね」

 

 このような女性に対しては,シレイは,電光石火の早業で彼女の後頭部を強打して気絶させる。ドアを内側から閉めてロックして,彼女のものを吸い出す。もし,彼女がグラマーだったら,その後,体を触ったりもする。でも,ほとんどの場合,そこまでする価値はない。ひとしきり吸い終わると,彼女を揺り動かして目覚めさせる。


 シレイ「あの,,,大丈夫ですか? なんか急に倒れたので,救急車を呼ぼうかどうか迷ったんです」

 女性「あっ,いえ,大丈夫です。でも,どうして倒れたのかしら?」

 シレイ「意識が戻ったようなので,わたし,これで失礼します」

 女性「あっ,はい,すいません。ありがとうございます」


 このようにして,一旦素直に分かれるのだが,次回,道端で会えば,こんどは部屋の中に招待されること間違いなしだ。


 シレイは,このマンションに住む独り身,もしくは暇している専業主婦10名と懇意になった。生理でなくても彼女たちの部屋に呼ばれた。でも,彼のあの部分を受け入れることはできないので,擬似的な行為どまりだ。それでも彼の愛撫だけて,絶頂を感じてしまう。というのも,彼のその部分からは,情欲を促進させるようなものが放出されている。それは魔獣族の生来の特性によるものだ。


 何はともあれ,シレイにとって魔力を回復させるいい機会となった。


 ーーー

 寿彩華は,シレイの粘液を毎日3回ほど飲む。彼女は夜の仕事だ。夕方6時頃には出勤して,真夜中の3時ごろに帰ってくる。そのため,出勤前,帰宅後直ぐ,さらに,彼女が起きてすぐの3回となる。


 1週間が経過した。彼女は,彼の粘液を飲み始めてほんとうに体調がよくなった。さらに筋力もアップしたと言ってもいい。そこで,彼女は彼のあの部分を自分の陰部に収めることができるか試してみた。


 しかし,直ぐには成功しなかった。さらに1週間が過ぎた頃,やっと,彼のを自分の体の中に収めることができた。この頃になると,主従逆転現象が起きていて,寿彩華がシレイの性奴隷になった。というのも,シレイのおかげで,彼女の体調がすこぶるよくなったし,そのため思考が前向きになった。彼女の職場の評判もすこぶるよくなって,チーママに抜擢された。あわよくば,別の店で雇われママに昇格する可能性も出てきた。すべてシレイのおかげだと言ってもいいくらいだ。


 寿彩華は,なんとしてもシレイを自分の傍から離れないようするため,彼に献身的に尽くすようになった。シレイにとって,一番幸せな時期だったのかもしれない。


 シレイは,携帯を収納指輪にしまっている。だから,いつでも夏江に連絡することができた。でも,連絡してしまうと,夏江の命令を聞かなければならない。だから,この生活が飽きるまで連絡するのを止めにした。

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