第50話 作戦失敗
ー 総裁秘書の乗っている車の中 ー
夏江は,総裁秘書の冷ややかな目つきに晒されていた。総裁秘書は巨乳が大嫌いだった。そのことは,夏江にもヒシヒシとわかった。だから,車内では,何の目的で総裁と会うのかなど,聞くこともなかった。
それでも,総裁秘書は,先ほどの夏江の火傷した生徒への奇病な行動が,生徒の火傷の治療になにがしかの貢献をしたのではないかと思った。でも,そのことを,聞いたところで,総裁秘書に何のメリットもないので,聞くことはなかった。
両者が口を開くことなく,気まずい雰囲気の中,1時間少々かかって,総裁のいる別荘に到着した。
夏江は和室に通された。そこから,美しい日本式の庭園を眺めることができた。
しばらしくして,総裁がやってきた。総裁秘書は夏江を総裁に紹介した後,その場を去った。その和室には,夏江と総裁2人だけしかしない。
しばらく沈黙が走った後,総裁から口火を切った。
総裁「夏江先生だね? なんであなたをここに呼んだか,わかるかな?」
夏江は正直に答えた。
夏江「この体が目当てですか?」
総裁は,ニヤニヤとして返答した。
総裁「まあ,結局はそうなるかもしれん。でも,あなたにも考える時間は必要だろう。一緒に食事しながら,条件のすり合わせといこうじゃないか?」
この提案には,夏江としても大賛成だ。どうせ,誰かに犯されるのなら,お金をもらえたほうがよっぽどいい。
夏江「はい,喜んでお付き合いさせていただきます」
2名の女中が,豪華な懐石料理を運んで来た。1人は中年の女中で,もう1人は若い女中だった。若い女中はかなりの巨乳だった。
その時,夏江はちょっと違和感を感じた。なんともいえない,嫌な感じの雰囲気だ。
夏江は,普段,オーラを見る眼にしていないのだが,オーラを診る眼に変えた。
すると,2人の女中からドス黒いオーラが覆っていた。それ以上に,驚いたのは,総裁のオーラだ。死期が間近に迫っているオーラだ。寿命を示す赤いオーラが,ドス黒いオーラに纏わり付いて,無理やり押さえ込んでいるようだった。
夏江は,このことを総裁に言うべきかどうか一瞬迷った。でも,総裁に教えるほどの義理はない。
でも,これから懐石料理をご馳走になる。それを食べてから判断すればいい。もし,料理が美味しければ,総裁に助け舟を出してもいいと考えた。
食事の間,総裁から愛人契約の条件をあれこれと出してきた。しかし,今の夏江は,そんなことはどうでもいい。
夏江「あの,総裁? 折角の懐石料理ですので,まず,しっかりと味わってから,契約の話を聞きたいと思います」
そう言われては,総裁も黙るしかなかった。
総裁「そうか? では,しばらく1人で食べていなさい。ちょうどいくつか片づける案件があった。しばらく席をはずす」
総裁は席を外した。
夏江は,1人になって,まずは,しっかりと,豪華そうな懐石料理を味わうことにした。
夏江は,1人落ち着いて美しい日本庭園を眺めながら,一口一口味わった。
懐石料理の味としては,中の上くらいの味だった。それでも,ここのところ,落ち着いて食事する機会などなかった夏江にとって,日本庭園を眺めながらゆったりと食事できることに,ことのほか満足感を覚えた。
夏江は,ちょっとだけ総裁に助け舟を出すことにした。ヒントを与えれば,総裁ならいくらでも自己解決できるはずだ。それに,総裁に纏わり付く嫌な怨念のようなものは,単純に解決できるようなものではない気もした。
夏江は,懐石料理を食べ終わって,ゆったりとお茶を飲みながら,日本庭園を眺めていた。
総裁も要件を済ませてのか,席に戻ってきた。
総裁「食事は済んだかな?」
夏江「はい,ありがとうございます。とてもおいしくいただきました」
総裁「それは良かった。それで? 愛人契約の件,了承してくれるのかな?」
夏江は,愛人契約の条件など,まったく耳に入っていない。そこで,とっておきの自分の名刺を渡すことにした。
夏江「総裁,これ,わたしの名刺です。受けとってください」
総裁「おっ? 名刺があるのか? どれどれ?」
総裁は,夏江から名刺を受けとってそれを見た。そこには,『巨乳除霊師・夏江』と書かれていた。
総裁「巨乳除霊師,夏江? なんだ?これ?」
夏江「はい,そのままの意味です。わたし,今は,臨時で保健士の先生をしていますが,その前の仕事は除霊師でした。除霊することで,相手を不幸から救済してあげれます」
夏江のこの話を聞いて,総裁はクスクスと笑った。
総裁「なるほど,あなたは,除霊ができると言って,愛人契約の条件をつり上げる気だな? なるほど,新手の霊感商法と言ったところか」
夏江「・・・」
総裁は,どうやら霊とか除霊とかいうものにまったく興味がなく,それに関するものは,すべて詐欺商法だと見限っていた。あながち間違っていないのだが,,,
夏江は,このまま引き下がってもいいかと思ったが,食事をご馳走になった手前,少しだけ信じさせることにした。
夏江「どうすれば,少しは信じていただけますか?」
総裁「ふん,信じるもなにも,そんなわけのわからんもの,信じろというほうが無理だ」
夏江「総裁,別に信じなくていいです。あの,ちょっとだけ総裁の手を握っていいですか?」
総裁「お? とうとう,愛人契約に同意する気になったかな?」
総裁は,両手を出して,夏江のみずみずしい玉の肌をした手を握った。なでるように何度も何度も触った。
ヒューーン!
夏江の頭の中に,さきほど総帥が総帥秘書に,厳しく叱咤する様子が,マジマジと映ってきた。
数分後,夏江はゆっくりと総裁の手を振り払った。
夏江「総裁,先ほど秘書の方に何か怒っていましたね。株式売買のタイミングがズレて,数千万円ほど赤字を出したとか?」
この夏江の話を聞いて総裁はびっくりした。このような仕事に関する話は,遮音がしっかりしている書斎で行う。仮に壁に耳を付けようが,聞き取れるものではない。
総裁「お前?! 人の心を読めるのか?!」
夏江「信じる信じないはどうでもいいです。わたしにとっては,関係のないことですから」
夏江は,近くにある紙切れに,ペンで何かを書いた後,それを折り込んでから総裁に渡した。
夏江「この紙,わたしが去った後で読んでください。信じる信じないは総裁の自由です」
その紙を受けとった総裁はかなり興奮した。そんな紙切れよりも,先ほどの書斎での話だ。いったい,どうやったら書斎の話を盗み聞きできるのか?? いくら考えても分からなかった。
夏江「総裁は少々興奮しておられるようですので,わたしはこれで失礼させていただきます。愛人契約の件は,後でその紙に書かれている内容を見れば,おのずと答えが分かると思います」
総裁は,なんか夏江にバカにされたような気になって,気分が悪かった。
総裁「わかった。じゃあ,さっさと帰れ!」
隣の部屋で控えていた総裁秘書が部屋に現れて,夏江を連れ出した。夏江はひとりリムジンカーに乗って,自宅まで送り届けられた。夏江にとっては,親切心で総裁にアドバイスしたつもりだ。でも,霊など信じない総裁にとっては,返って怒りを買うものだと感じた。
夏江を見送った後,総裁秘書は総裁のいる部屋に戻った。
総裁秘書「総裁,夏江が渡した紙にはなんて書いてありましたか?」
顔が真っ赤になった総裁は,その紙切れを総裁秘書に渡した。そこには,次のような文が書かれていた。
「総裁の寿命はあと数日で尽きます。信頼できる除霊師に一度診てもらうのがいいと思います。 『巨乳除霊師・夏江(自筆のサイン)』」
その文には,しっかりと『巨乳除霊師・夏江』のサインがあった。
総裁秘書「これって,ほんとうですか?総裁の寿命があと数日だなんて!!」
総裁「ふん,そんなのウソに決まっているだろう。俺は至って健康だ。新手の詐欺に違いない」
総裁秘書「ですが,さきほど書斎でのわれわれの会話を,夏江はみごと言い当てました。それって,やはり,夏江にはなんらかの霊能力があるってことじゃないですか?」
総裁「確かにそうかもしれんが,,,」
総裁秘書「書斎の会話の内容は別にして,この紙切れの内容ですが,どうしますか?このまま放置するには,ちょっと内容が内容だけに」
その後,どうするかいろいろ議論したが,とりあえず評判のいい除霊師数名に急遽,診てもらうしかないという結論に達した。総裁秘書は,部下に電話で,信頼できそうな除霊師の情報を大至急調べさせて,明日,明後日にも総裁邸に来てもらうように指示した。
その後,リムジンカーが総裁宅に戻ってきた。その運転手が,夏江から総裁に渡すようにと預かったものがあるとかで,それを女中に渡した。女中はそれを総裁秘書に届けて,総裁秘書は総裁に渡した。
総裁は,ハンカチに包まれた中身を見た。それはブレスレットだった。もともと臨時理事長のランが嫌がらせに総裁に届けるようにと夏江に渡したものだ。夏江は,総裁に渡すのをコロッと忘れてしまい,運転出に言付けた次第だ。
総裁は,そのブレスレットをゴミ箱に捨てようかとも思った。しかし,何か役立つかもしれないと思って,しばらくはズボンのポケットに入れておくことにした。
その日の夜
総裁は,気がむしゃくしゃしていた。数日後に死ぬと言われて,例え,それがウソでも平静としていられない。いつもなら,愛人宅に移動するのだが,その移動することさえ,交通事故に遭うのではないかと懸念してしまう。
総裁の正妻は不幸があって早くに死亡した。それが,病気なのか,事故なのか,他殺なのか,はたまた呪詛によるものかは,今とはなっては不明だ。愛人を総裁邸に呼べばいいのだが,なぜか,愛人はその後病気になってしまい,体調を崩して数ヶ月ほど寝込むという現象が続出した。それからは,愛人を総裁邸に呼ばないというルールを施している。
悶々として,どうしたらいいか悩んだ結果,女中に手を出すことにした。
この屋敷には,住み込みの女中が2名いる。親子で,母親と娘だ。母親のスミ子は32歳,娘のラナ子は15歳だ。ラナ子は中学を卒業した後,すぐに,住み込みで働いている母の元で同じ仕事を始めた。いや,そのように周囲に明言していた。実際のところ,それが真実なのか彼女たちにかわからない。
総裁は,もしかしたら,女中もおかしな病気になってしまうのか?と,一瞬頭をよぎった。でも,そんなの偶然が重なっただけだと自分に言い聞かせた。
総裁は,さすがに15歳の娘の方に手を出すのは,はばかられた。そこで,母親のスミ子を寝室に呼んだ。
スミ子「総裁,お呼びですか?」
総裁「ああ,今夜は,このベッドで寝なさい」
スミ子「あの,わたし,女中です。愛人ではありません」
スミ子がそんなことを言ったものの,総裁から,スミ子の腕を引っ張られて,ベッドに倒された。スミ子は抵抗しなかった。総裁は,スミ子のメイド服をゆっくりと脱がしていった。女中に抵抗する権利はないに等しい。だが,スミ子はこの事態を予想していたかのように落ち着いて総裁に話しかけた。
スミ子「総裁,わたし,亡くなった主人に操を立てると誓った身です。残念ですが,総裁に犯されるわけにはいきません。どうしても犯すのであれば,ここで自害します」
そこまで言われては,総裁もこれ以上何もできなかった。
総裁「ふん,じゃあ,娘を犯すぞ!」
この言葉に,スミ子の唇が,一瞬,ニヤッと微笑んだようだった。
スミ子「総裁,娘は総裁に気があるようです。いい条件を出してくれれば,娘はいやとはいわないでしょう」
この言葉は総裁にとって意外な喜びだった。どうせ抱くなら,若い方がいいに決まっている!!
総裁「おっ!そっ,そうなのか? それはありがたい。じゃあ,すぐに娘を呼んでくれ。給金の3倍は出す!!」
スミ子「給金の5倍にしていただけませんか?」
総裁「3倍か5倍かは,娘の態度次第だ」
スミ子「わかりました。娘によく言い含めておきます。娘も準備がありますので,1時間後くらいでよろしいですか?」
総裁「我慢できん。なんとか30分で来るように言ってくれ」
スミ子「わかりました」
スミ子は女中部屋に戻っていった。
総裁は,まさか,この屋敷で若い娘が抱けるとは思ってもみなかった。この屋敷に呼ぶ愛人は,ことごとく体調を崩してしまい,エッチできずにすぐ帰ってしまった。神仏や霊などをまったく信じない総裁としても,なにか祟りがあるのではないかと疑ってしまう。
女中に手を出すと,これまでの愛人のようになってしまうのを懸念しないわけでもない。でも,この屋敷で若い女性を抱けるのは何事にも代えがたい喜びだ。
総裁は,今か今かと娘のラナ子を待った。
30分後,とうとうラナ子がやって来た。
ラナ子「総裁,ラナ子です。お邪魔してよろしいでしょうか?」
総裁「おお,ラナ子か,待っていたぞ。入れ入れ!」
ラナ子は,総裁の寝室に入ってきた。ラナ子はパジャマ姿だった。爆乳と言ってもいいほどのKカップのりっぱな胸をしていた。
総裁は,ラナ子の了解などとらずに,彼女をベッドに押し倒して,彼女のパジャマをすぐに脱がしていった。彼女は,パジャマの下に下着をつけていなかった。ラナ子は,何も言わず,ただ顔を赤らめていた。
総裁は,裸になったラナ子のエロチック溢れる体を見た。
総裁「おお,きれいな身体だ」
総裁は,ゆっくりと,ラナ子の玉の肌を爆乳の乳房から乳首,お腹,おへそ,陰部へとさすっていった。ラナ子のおへそには,へそリングがしてあった。
総裁は,へそリングとか,そのようなものがしてあっても,あまり気にしない。せいぜい処女の可能性が低いと思う程度だ。
総裁「ラナ子は,処女ではないにだな?」
ラナ子「あの,,,実は処女なんです,,,」
ラナ子はウソをついた。ウソがバレてもどうってことはない。バレなければラッキー的な感じだ。
総裁は,だんだんと性欲が高ぶってくるのがわかった。もちろん下半身も鋭敏に反応しだした。眼が血しばしってきた。その感じはこれまで感じたことのない高ぶりだった。心臓音が異常に高ぶった。
総裁は,自分の服を脱いで,ズボンとパンツを慌てて脱いだ。彼は,すぐにラナ子の体に覆い被さった。そして,彼女のKカップのおっぱいをわしづかみにした。総裁の大きな手のひらをしても,ラナ子の爆乳を包み込むことはできなかった。
ここに来て,ラナ子は,総裁を陥落させることに成功したと判断した。あとは,,総裁をそのまま快楽を追求していって,,,死んでもらうだけだ,,,
ーーー
ラナ子は母親の復讐のために育てられた娘だ。実の娘ではなく,施設から顔立ちがよくスタイルのいい子を引き取って育てた。中学校卒業という学歴もウソだ。彼女は,母親の復讐を履行するために育てられた呪詛のエキスパートだ。
修験道,陰陽道,キリスト教系の呪詛を習うために,小さい頃より弟子入りした。ただ,彼女が幼い女の子ということもあり,巫女としての役割を担った。もっとも,そのほとんどは詐欺の片棒だった。ラナ子は,呪詛と言っても,そのほとんどが詐欺であることを骨の髄まで理解した。
だが,彼女が虚道宗で聴講生としてに入門すると,呪詛が決して詐欺ではないことを理解した。ほんとうに『念』を増強する呪符のあることを初めて知った。また,その呪符はお金で買えることもわかった。
その虚道宗での経験を契機に,ほんものの呪詛があることを知った。その後,ラナ子は,引退を間近に控えている霊媒師が,ラナ子に伝授した特殊な異能があった。死霊術の一種で,死体のみならず,死霊をも,ある程度自由に操作するというものだ。『御霊術』と呼ばれることもある。
『御霊術』とか『死霊術』という格好いい名称を冠しているが,その実,死霊を操るといっても,所詮はギブアンドテイクの世界だ。死霊のために動いてあげる代わりに,自分の願いを実現してもらうというものだ。
その結果,今のラナ子が扱える呪詛は2種類だ。ひとつは虚道宗の呪符,もうひとつが死霊術だ。
母親が復讐したい相手は4人いた。その内3名は,彼女の若い頃,彼女をレイプした男どもだ。もうひとりは,自分の夫を事業失敗させて自殺に追い込んだ総裁だ。
レイプした男3名は,死霊によって殺害された。その死霊は,他ならぬ総裁の亡くなった妻だ。その見返りとして,その死霊のために,総裁邸に来る愛人を病に冒すことをラナ子が行った。それは,単純に愛人らに身体を機能不全に陥れる薬をお茶に含ませて飲ませるというものだ。
総裁の殺害については,死霊は手を貸さなかった。そこで,ラナ子は,お金がかかるものの,虚道宗の催淫9品呪符を使うことにした。腹上死を高確率で引き起こすことができる。そこまでいかなくても,強烈な性欲に突き動かされて,確実に気絶させることはできる。あとは,例えば,ビニール袋を頭に被せて窒息死でもさせれば,腹上死に見せかけることが可能だ。
しかし,自分の操を相手に捧げるという辛い思いをしなければならない。
ラナ子は,総裁がもうじき腹上死すると見限った。それなら,総裁に犯される前に,かつ,総裁に死なれる前に,ちょっとだけ,おねだりをしてみてもいいと思った。
ラナ子「総裁,わたし,処女を失う記念に,何か総裁からプレゼントがほしいのですけど」
そのおねだりは,決して無謀なおねだりではない。ごく自然なおねだりだった。だが,そのおねだりは,ラナ子の最大の失敗だった。
眼が血しばしっている総裁なのだが。プレゼントという言葉に,一瞬,行動が止まった。総裁は,ズボンのポケット中にブレスレットがあるのを思い出した。ポケットから取り出すだけなので,わずか2,3秒で済む。
総裁は,そのネックレスをベッドの上に脱ぎ捨てたズボンのポケットから取り出した。
ヒュィーーーン!(性欲で血縛った感情が冷める音)
総裁「えっ? 何?」
総裁は急速に性欲の感情を冷やしていった。それに伴って,反応した下半身も萎えていった。
総裁「あれ? おかしいな? 元気がなくなってしまった」
ラナ子「・・・」
まさか,この期に及んで,総裁に掛けた催淫呪符が失効した? でも,ラナ子にはなすすべがなかった。せめて,憎きブレスレットをもらい受けることだけだ。
ラナ子「あの,,,ブレスレット,いただいてよろしいのですね?」
そう言って,ラナ子は,総裁が持っているブレスレットを奪うようにして受けとった。すると,ラナ子もスーッと高揚した気持ちが引いていくのが分かった。明らかに,威圧呪符を施したブレスレットだ。
ラナ子は,これ以上,ここにいても何もできないと悟った。
彼女はパジャマを着て,総裁に軽くお辞儀して,「これで失礼します」と言って,そそくさと去っていった。
ラナ子にとって,総裁を腹上死,もしくは気絶させたあとに窒息死させる作戦は失敗した。でも,内心,ホッとした面もある。やはり,自ら人を殺すのはさすがに気が引けた。
この日,総裁は命拾いをした。翌日から評判の高い除霊師数名が総裁邸を訪れたものの,総裁が数日後に死ぬという事実はなく,除霊の必要もないという結果だった。
総裁は,夏江に騙された可能性が高いと推定した。それでも,どうしても,夏江の,書斎での会話をみごとに言い当てたことだけは気になった。やはり,夏江の予言は正しいのか?
ーーー
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