第44話 刺客の最後
茂みに隠れていた林サミコは,機関銃の音や爆発音が止んで,その後,なにも音がしなくなったので,戦闘が終わったと思った。
林サミコは,このままここに隠れていいのかどうか疑問に思った。果たして,シレイが助けに来てくれるのか?
林サミコは,ともかくもシレイを探すことにした。敵がまだいるかもしれないので,注意深く周囲に気を配りながら移動した。
しばらくいくと,ひとりの男性が倒れていた。服装から判断するとシレイではない。敵の可能性が高い。シレイに殺されてしまったのか?
林サミコは,方向転換してほかの場所を探すことにした。すると,倒れている男から弱々しい声がした。
「た,助けてくれ」
この音に,林サミコは足を止めた。すると,また,弱々しい声がした。
「助けてくれ。お礼はする。お願いだ」
林サミコは,お願いされて断ることができるような性格ではない。いつも,流れに流される性格だ。彼女は倒れている男に近づいた。
林サミコ「あの,,,どうすればいいのですか? 110番すればいいのですか?」
林サミコはそう言って,携帯を取りだした。
倒れている刺客の男は慌てて,林サミコの行動を止めた。
刺客「待て!警察には連絡するな!」
林サミコ「え?」
刺客「とにかく,俺のベルトに小物入れが5個並んでいる。一番左側の小物入れに丸薬が入っているから,それを取り出して俺の口の中に含ませてくれ」
そう言われてしまっては,林サミコはその通りすることにした。手間のかかることではないからだ。
刺客はその丸薬を飲んだ。この丸薬は体力を一時的に回復させる作用がある。そうすることで,なんとかぎりぎり足を動かせるようになった。でも,毒の効果を打ち消すことまではできない。
刺客「俺をあの大きな樹木のところまで担いでくれ」
林サミコ「はい」
林サミコは,ただ,言われるままに行動した。彼女は彼の左腕を自分の首に回して,彼女の右腕を彼の腰に手を廻し,彼を支えるようにして,ゆっくりと移動していった。
なんとか,その樹木の傍に来て,林サミコは刺客を地面に座らせた。
林サミコ「こんな場所でいいのですか?」
刺客「ああ,構わない。ここなら,樹木の影になって一目につきにくい」
ここは自動車道から1kmくらいは離れているので,わざわざ移動しなくても一目につく可能性は低い。でも,もしドローンが再び飛んで来たら話は別だ。この木陰ならドローンが飛んできても見つかる可能性は低い。
刺客は一時的に体力を回復させたとはいえ,このままでは毒で死亡してしまうのは避けられない。刺客はまじまじと林サミコを見た。そして,ある術を使う決心をした。
刺客「わたしをここまで運んでくれて感謝する。わたしはザビルというものだ。あなたはなんという名前かな?」
林サミコ「林サミコっていいます」
刺客「そうか。林さんか。実は,わたしはもうまもなく死亡する」
林サミコ「ええ?? ほ,ほんとですか?」
刺客「毒に侵されて,それを解毒する方法がない」
林サミコ「じゃあ,急いで病院に行かないと!」
刺客「いや,もうそんな時間はない。でも,わたしが助かる方法がひとつだけある」
林サミコ「ほんとうですか?わたしにできることなら何でも」
林サミコは,ついついそんな言葉を吐いてしまった。
刺客「それは願ってもないことだ。実は,『双修』という修行方法がある。簡単にいうと,性行為をして,お互いの修行レベルを引き上げるというものだ。でも,双修の本来の目的はそんなことではない。自分の肉体を捨てて,霊魂を相手の体の中に注入することだ」
林サミコ「?? 性行為?」
林サミコは,彼の言っている意味をよく理解できなかったが,『性行為』という言葉だけははっきりと聞こえた。つまり,彼は自分とエッチしたいということだ。
でも,『自分でできることなら何でも』と言った以上,林サミコはその言葉を守ることにした。だって,所詮,シレイの性奴隷の身分だ。たとえ,他の男に犯されたって,たいしたことはない。それに,今回は人助けになる。それなら,よろこん犯されよう。
林サミコ「はい,わかりました」
林サミコはゆっくりと服を脱いでいった。その行為に,刺客はちょっとびっくりした。『この女,頭,おかしいのではないか?』 刺客としては,当然,拒否されると思った。だから,彼女を気絶させようと思っていた。ところが,なんと,服を脱いでしまうとは,,,
林サミコは上着を脱いでブラジャーも外した。Gカップの巨乳が露わになった。ズボンとパンティも脱いだ。脱いだ服はきちんと地面に敷いた。多少とも,クッション代わりにするためだ。
林サミコ「ここで横になればいいのですね?」
林サミコは脱いだ服のところで仰向けになって横たわった。
刺客「林さん,予め,あなたにお礼を言う。ありがとう。ほんとうにありがとう。今から,最後の精力を振り絞って,あなたと行為をする。しばらく我慢してくれ」
林サミコ「はい,どうぞ」
林サミコは,彼に犯されることによる影響がどれほどのものになるのか,考えるようなことはしない。ただ,依頼されたことをその通り行動した。それが彼女流の生きる術だ。
刺客「林さん,大変申し訳ないが,わたしの服を脱がしてほしい。精力を双修に集中したいので,無駄な力を消費したくない」
林サミコ「はい」
林サミコは,なんの疑問もなく刺客の言う通りにした。刺客の服を脱がしていき全裸にさせた。
刺客「大変すまないが,わたしのこの部分を触ってくれないか? 残りの精力がそこに集中しやすくなる」
林サミコ「はい」
林サミコは,すでに刺客のザビルの性奴隷のようになっていた。でも,彼女にとって,それが一番楽な生き方だ。
刺客「どうやら反応しだした。すまいが,すぐにさせてくれ。時間がもう残り少ないようだ」
林サミコ「はい」
林サミコは彼の腹部に跨がるようにして,彼を受け入れた。
・・・
数秒後,彼は,粘液と同時に自分の霊魂も一緒に放出した。その後,彼の肉体は呼吸をしなくなくなり心臓の鼓動も止まった。
彼の肉体は永久に活動を停止した。
その直後,林サミコの頭の中に声が聞こえた。それは刺客のザビルからの念話だ。
ザビル『林さん,俺だ。ザビルだ。わかるかな?』
その声に,林サミコはまったく驚かなかった。彼女にとって,驚くべきことはもうこの世に存在しない。
林サミコ「はい,ザビル様,わかります」
ザビル『すまないが,わたしの指から指輪を外して,林さんの指につけ直してほしい』
林サミコ「はい」
林サミコはその通りザビルの指輪を自分の指にはめた。
林サミコ「指輪をつけ直しました」
ザビル『それはよかった。その指輪は大変貴重なものだ。決して他人に渡さないようにしてください』
林サミコ「はい」
ザビル『林さん,また,わたしから受けとったことも決して言わないようにお願いします』
林サミコ「はい,それはいいのですが,今後はわたしのこと,サミコと呼んでいただけませんか?その方が心地よいです」
その言葉にザビルは恐縮した。彼にとっては,林サミコは命の恩人だ。しかも,彼女と行為をすることさえも同意してもらった。当然,彼女のことを丁寧に扱わねば罰が当たる。とても呼び捨てにはできない。でも,『サミコと呼ばれて心地よい』と言われては,そうするしかない。
ザビル『そっ,そうか? では,サミコと呼び捨てさせていただく』
林サミコ「はい,どうぞそのように呼んでください」
ザビル『それと,声に出して返事する必要はない。頭の中で言葉を思い浮かべればそれで伝わる』
林サミコ「え?ほんとうですか?」
ザビル『試してみなさい』
林サミコ「はい」
林サミコは,早速,頭の中で言葉を浮かべた。
林サミコ『頭で思い浮かべました。これでいいでしょうか?』
ザビル『ああ,はっきりと聞こえるよ。それでいい』
林サミコ『はい。それで,次の命令はなんでしょうか?』
ザビル『・・・』
ザビルは,幸いにも霊魂がうまく林サミコの子宮内に侵入できたことで満足だった。後は,子宮内の受精卵を乗っ取って転生を待つだけだ。少し気がかりだった指輪も林サミコがしていれば,警察の手に渡る可能性は低い。もっとも,警察の手に渡ったとしても,魔法石が亜空間に入っているだけなので,さほど惜しくもないのだが。
それよりも,ザビルにとって,もっとやっかいなのは,『命令を待つ』と言われたことだ。受精卵に転生すると,記憶を無くし一から人生をやり直すことになる。そうなっては林サミコに命令を発することなどできるはずもない。
ザビルは林サミコには恩義がある。それを返さないのも忍びない。林サミコに命令を与えることで恩返しになるのなら,喜んで引き受けたい。
ザビルは,一瞬逡巡したものの,林サミコのなんの見返りも求めない献身的な行為に報いることに決めた。
ザビルは,今,子宮内で自分の精子が遊泳している。いずれ卵子が排出されるとい受精卵となり,その中に霊体が入ることで『強制転生』することができる。しかし,その『強制転生』するのを諦めることにした。
厳密には諦めてはいない。1ヶ月だけ引き延ばすだけだ。まずすることは,貴重な精子の温存だ。
ザビル『サミコ,あなたのあの部分には,まだわたしの精子が残っていると思う。指輪をその精子に当ててほしい。精子が指輪の中に取り込まれるはずだ』
サミコ『はい,わかりました』
サミコは,指輪を陰部からこぼれた粘液に当てた。それらの粘液は指輪の中に収納された。ザビルの指輪が持つ亜空間収納は,特別製の亜空間収納で,時間が止まっている。そのため,腐敗や酸化などの劣化現象は生じない。
精子の問題を片づけると,次は,霊体の件だ。霊体が果たして子宮内で1ヶ月も持続するものなのかどうか,ザビルにとっても分からない。しかし,不確定の未来のことで悩んでもしかたない。今は,林サミコに適切な『命令』を与えることに専念することにした。
そこで,まず林サミコの希望とか望みを叶えることにした。
ザビル『サミコ,あなたの望みとか希望を言ってみなさい』
そんなこと言われて,林サミコには特に何もない。流れに流されるまま結婚,いや,結婚できなくても子供を産んで,子供を育てて,,,といったごく当たり前の人生を送れればそれで満足だ。
林サミコ『いえ,別に。ごく普通の人生を送れればいいです』
ザビル『普通の人生か,,,なるほど』
この『普通の人生』という言葉に,ザビルは反応した。ザビルにとって,普通の人生とは,殺人稼業のことだ。つまり,ザビルの考える普通の人生を林サミコに与えればいい。つまり,林サミコを殺人者・暗殺者にしたてあげればいい。それに,殺人業は報酬が高額だ。つまり,林サミコは,殺人業を通じて金持ちになりたいと理解した。
そんなことを考えて,結局のところ,自分が林サミコの立場になったら,どう行動すればいいかを考えることにした。そのためには,まず,林サミコの今の状況を把握する必要がある。
ザビル『サミコ,ここ数日の出来事を詳しく説明してくれないか?』
林サミコ『わかりました』
林サミコは,柔道部の合宿に一緒に行き,車内でのゲームで大負けして裸になったこと,交通事故にあったこと,さらに,旅館では部員に胸を触られ,さらに,夏江先生から乳首リングに触った時間を測定するように言われたこと,シレイによって処女を奪われて,シレイの性奴隷になるように言われたこと,そして,シレイと一緒にタクシーに乗って東都に向かう途中で事故に遭い,今のような状況になったことを詳しく伝えた。
そんな説明が終わる頃,タクシーに乗っていた2人の男女の乗客を捜しに来た警察の捜索員が裸の林サミコを見た。彼女の傍には,同じく裸の男性が横たわっていた。
ザビルは林サミコが警察に保護されるとわかったので,急いで林サミコに,警察に言うべき内容を彼女に伝えた。
ザビル『サミコ,警察には,わたしがサミコを犯したこと,そして,わたしはサミコを犯した後,毒蛇に咬まれて死亡したことを伝えなさい。また,わたしが霊体の状態でサミコの身体の中にいることは内密です。いいですね?』
サミコ『わかりました』
ザビル『しばらくは警察の指示に従いなさい。暇を見て,またサミコと連絡します。わたしは,かなり疲れたのでしばらくは音信不通になりますが,心配しないでください。ちょっと睡眠を取るだけです』
サミコ『はい,ゆっくりと休んでください』
その後,林サミコは警察に簡単な事情聴取を受けた後,救急車に運ばれて,近くの病院で体に異常がないか精密検査を受けることになった。また,ザビルの死体も警察に回収されて,詳しく検死を受けることになった。
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