第36話 ニュース速報
ソープランドでの殺人事件は,すぐに警察に通報された。殺人現場には,学生服が脱ぎ捨てられていて,服のポケットには身分証もあった。そこには,岡村雅人とあった。すぐに彼の捜索が開始された。
熱海の地元刑事は,4階の殺人現場からどうやって犯人が逃げたのか,まったくわからなかった。シャワー室の窓が壊されていたので,そこから逃げたと思われるが,足場がまったくない。飛び降りるのは自殺行為だ。しかも,廊下の監視カメラには,部屋から出たという映像が写っていない。人が羽を生やして逃げたとしか思えない状況だ。
この事件は,すぐにマスコミに公開されて,偽物岡本の指名手配が行われた。その指名手配は,本物の岡本にとっては迷惑だった。すぐに全国的に有名になってしまった。
一方,本物の岡村は,睡眠呪符の効果が切れたので,目覚めた後,その足で近くの交番に駆け込んだ。
夏江たちが泊まっている温泉旅館にも,地元警察の捜査員が大勢押し寄せてきて,夏江たちから部員の岡本について事情聴取が行われた。
夕方7時頃になって,やっと夏江や部員たちが警察の事情聴取から開放された。そこからの夕食とお風呂ということになった。
大広間で夕食をとっている時に,備え付けのテレビから,ソープランド殺人事件の速報を流していた。
★ニュース速報★
『今日の午後4時頃,熱海市のXXソープランドで,従業員の若い女性が殺されているのが発見されました。死体の損傷が激しく,具体的な死因はわかっていません。殺された女性と一緒にいた客は,華丸私立高校の学生で,岡村雅人であることが判明しました。彼がなんらかの事情を知っているものとして,現在,彼の行方を追跡中です。
この殺人事件で奇妙な点は,容疑者の岡村雅人は,プレイする部屋に入ったことまではわかっているのですが,その部屋から出た形跡がないということです。その部屋は4階にあります。シャワー室の窓が壊されていましたので,そこから逃げたと思われます。警察のみたてでは,例えば, ロープを使って降りたのではないかと予想しています。現在,地元警察では,警視庁の応援を借りて,200人体制を敷いて,容疑者の行方,さらにロープなどの物的証拠の捜索にも力を入れる方針とのことです』
その後,すぐに追加の速報が流された。
『たった今,大変なニュースが飛び込んできました。先程,容疑者と思われる高校1年生の岡村雅人が,熱海市から,逗子市で警察によって保護されました。彼は,本日の朝,何者かによって襲われて気絶させられたとのことです。殺人が行われた時刻は午後3時50分前後,岡村雅人が警察に保護された時刻は午後4時半頃。つまり,岡村雅人は,たった40分の間に,熱海市から逗子市に移動したことになります。ヘリコプターなど,なんらかの飛行手段を使わない限り,このような短時間で移動するのは困難であることから,今回のソープランド殺人事件の犯人は,岡村雅人ではなく,彼と同じ顔をした別人の可能性が浮上しました。
ただ,現在のところ,まだ状況が詳しく判明していないことから,岡村雅人への指名手配は解除しないとのことです。警察としては,有益な情報提供者には,賞金300万円を提供するとのことです』
この報道を聞いて,部員たちは,偽物岡村がバスの中ではほとんど口を開かなかったことを思い出した。
「やっぱり,今日の岡村って,偽物じゃねえ?」
「でも,バスの事故では,積極的に脱出に協力してくれたよ?」
「もし偽物だったとしても,彼の顔は,岡村そのものだったよ。そんな簡単に他人の顔を真似るのは無理よ。彼は,やっぱり殺人犯じゃないの?」
部員たちは口々に,好き勝手な論評をしていた。
夏江は,バスの中にいた岡村は魔獣族だと知っている。先程のテレビのニュースから,彼は偽物の岡村だとわかった。夏江は,その事実を警察に言うべきかどうか迷った。そんなことを考えているとき,部員の部長が夏江に声をかけてきた。しかも,彼の視線は,いや,部員全員の視線もだが,夏江と林サミコの巨乳に集中していた。
部長「夏江先生,バスでの約束,覚えていますよね。俺たちの相手をしてくれるって」
夏江は,ちょっとはにかみながら言った。
夏江「そうね,教育者として約束は守らないとね。じゃあ,1時間後に私の部屋に着て頂戴。そうね,順番を決めて,2人ずつ5分間としましょう。わたしを相手にした後,林さんの相手をしてもいいわよ。もちろん,時間は5分間だけ,それに林さんの場合は,胸を触るだけにしてちょうだい。ただし,本人がそれ以上してもいいっていうなら別だけどね」
夏江の言葉を聞いて,部員たちから不満の声が聞こえた。
部長「夏江先生,5分間というのはあまりに短いと思います。せめて15分とかにできませんか?」
夏江「人数が多いから最初は5分間にして,2巡目から10分間にしましょう。3巡目まで頑張れる猛者がいれば,30分相手にしましょう」
この夏江の言葉に,部員たちからやっと不満の声が解消された。部員25名いるので1巡するに1時間と15分かかるが,その後,林サミコの胸を触れるし2巡目もあるから,不満は解消された。
部長「では,それでお願いします」
夏江「じゃあ,1時間後ね」
その後,夏江は自分の部屋で林サミコに注意事項を言った。
夏江「林さん,あなたにも人肌脱いでもらうけど,上半身だけ裸になればいいわ」
林サミコ「はい。夏江先生の言う通りにします」
林サミコにとって,男性部員たちに胸を触られることによるメリットは何もない。強いていえば,夏江先生の恩返しだ。でも,夏江先生は,いったいどんなつもりで林サミコを柔道部員にあてがうのか,その理由はわからない。でも,夏江先生の次の言葉で理解できた。
夏江「林さん,あなたの乳首リングを触る部員の名前と接触時間をきちんとメモってくださいね?」
林サミコ「それって,このお守りの効能を把握するためなのですか?」
夏江「そうよ」
林サミコ「わかりました。しっかりとメモをしておきます!」
林サミコは,自分の役割がはっきりと理解できたので,夏江にニコっと微笑んだ。
夏江は携帯のラインを見た。すると,何度も魔獣族のマキから連絡が来ていた。マキとの会話は林サミコには聞かれたくないので,彼女を追い払うことにした。
夏江「わたし,今から,ちょっとある人とビデオ電話するからひとりにしてちょうだい」
林サミコ「わかりました。じゃあ,わたし,温泉に行ってきます」
林サミコは,タオルを持って部屋から出ていった。一人になった夏江は,マキと映像チャットすることした。
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