第32話 ヘボい捜査
この日,夏江のアパートに,久しぶりに多留真が来た。林サミコを襲ったレイプ未遂事件の調査のためだ。今,夏江が住むアパートは,華丸私立高校から徒歩10分程度の場所にある。この臨時保健士の仕事のために,マキが用意したアパートだ。もともと住んでいた夏江のアパートから,車で2時間ほどの距離だ。多留真もおいそれと気安く来れる場所ではない。
レイプ未遂事件などは地元警察が処理する案件だ。でも,林サミコが絡んでいる事件は例外だ。以前,林サミコへの暴行事件で多留真が地元警察に依頼して5名の生徒を逮捕した経緯がある。そのため,地元警察は,念のため本庁の多留真に出動をお願いした。
この日,多留真は,2時間ほど地元警察を訪問して概要を理解した。明日から,本格的に捜査協力を行うことになる。
多留真は,正直言うと,積極的に夏江に会いたいという気持ちはなくなっていた。何かのついでなら,まあ,会ってもいいかなという感じだ。
というのも,夏江とのそれは精魂が尽きる。少なくとも1,2週間は不能状態が続く。それでも,夏江のあの爆乳とデカ尻を自由に弄び,S行為を思う存分できるのはかなり嬉しい。
そのついでの事件が,林サミコを襲ったレイプ未遂事件の調査だ。その調査のため,担当する地元警察に訪問する前日の夜,多留真は夏江のアパートにやってきた。
・・・
ところで,今の夏江にとって,快楽を味わうついでに,もうひとつ別の楽しみがあった。
多留真との接触によって,サイコメトリー能力によって,多留真から記憶を盗み見ることだ。前回は,『魔装計画』の全貌を理解することができた。月本国の警視庁は,この月本国に巣くう魔獣族との全面戦争に着実に準備を整えつつあると言っても過言ではなかった。
さて,今回は,どんなおもしろいものを見せてくれるのか? この日,その能力によって,夏江の頭の中に飛び込んで来たのは,多留真が今日の午後,地元の警察との打ち合わせ内容だった。それは,以下のようなものだった。
ーーー
地元警察としては,林サミコのレイプ未遂事件については,『事件性なし』ということで片付けたいという趣旨の内容を多留真に説明した。
その理由は簡単だ。加害者が死亡してしまったからだ。加害者でる3名の浮浪者は,事件当時,意識不明の状態で入院していたが,その後,全員が息を引き取った。彼らに外傷はなく,彼らの死因は心不全というという医師の診断が下った。
さらに,被害者の林サミコも,暴行を受けた外傷がなく,暴行やレイプは行われなかったとの地元警察の判断だ。
この判断に,多留真は概ね同意した。これだけなら,わざわざ本庁から多留真が出動する必要はない。
実は,地元警察は,この林サミコの事件を報告するという口実で,実は,別の事件で,アドバイスを求めたかった。それは,ここ最近,この界隈で起きているラブホテル殺人事件だ。しかも,いずれの被害者は腹部が喰われたような跡がある。なんともエグい事件だ。
地元警察は,ここ,半年で起きた5件のラブホテル事件を多留真に報告した。犯人と思われる人物は,しっかりとラブホテルの監視カメラに映っていた。だが,いずれの映像のフードを被っていて,顔がはっきりと見ることができない。ただ,その歩き方から,若者風であり,身長は165cm前後ということだけはわかっている。また,事件現場から犯人と思われる指紋も確保できているが,過去の犯罪者履歴と一致するものはなかった。
多留真は,この連続ラブホテル殺人事件については,本庁としても,事件解決に積極的に協力すると約束して,明日,現場検証することになった。
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夏江は,労せずして,今の地元警察がどのような動きをしているのか,手に取るようにわかった。
浮浪者の死因が心不全だと判明したのは収穫だった。彼らは,間違いなく林サミコの乳首リングやクリトリスリングに触ったに違いない。その『お守り』の効果,『大凶』については遅効的に発動するので,彼らの死因はあのリングに施した『悪霊退散』の呪詛によるものだと判断した。その『悪霊退散』による効能が心不全だとは,,,なんとも意外な結果であり,それ以上に,地元警察の,なんとも頼りない捜査能力であることか!!
夏江がかねがね思っていた『超現象捜査室』というものを,全国の地方警察にまで拡充させるべきだと感じた。でも,夏江はもう警察官でも刑事でもない。そんなこと,もう考える必要もない。
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