第27話 金属製のお守り
翌日,夏江は,朝のホームルームを終えて,保健室でのんびりとお守り用の呪符を作成しながら,小型テレビをつけてニュースを見た。このところ,テレビのニュースなど見る機会はなかったので,とても新鮮な気持ちでニュースを見た。
全国版のニュースでは,相変わらず,凶悪な事件を報道していた。この月本国では,どうも,治安が良くないらしく,相変わらず,多くの若い女性の行方不明者が多くでていることを報道していた。
その報道が終わると,今度はローカルニュースだ。そのニュースで,昨晩発生した女性の死亡事件を報道していた。
『昨晩,XX市にあるラブホテルで,若い女性の遺体が発見されました。その遺体は犬などの獣によって食いちぎられた跡がありました。現在,監視カメラの映像の解析,及び,殺された女性と一緒にいた男性の調査を行っているものと思われます。
これまで,XX市では,ここ数ヶ月の間ですでに4名ほどの女性が,今回の事件と同じように,獣のようなものに食いちぎられた跡を残して死亡しています。警察側は同一犯の犯行と判断しております。今後も,同様の被害が増える可能性があるとみており,警戒を強めております』
夏江は,このニュースに違和感を覚えた。今どき犬によって人が殺されるのか?それに,何度も同様の事件が起きていることにも気になった。しかし,今の夏江はもう警察官でも刑事でもない。
夏江は,ニュースのことはこれ以上気にするのは止めにして,お守り用の呪符に念強化魔法陣を植え付ける作業に集中することにした。
しばらくすると,林サミコが体調不良を理由に授業を休んで保健室に来た。彼女は,モジモジしながらも,昨晩の出来事を夏江に語った。
林サミコ「夏江先生,実は,昨晩,野犬に襲われました。その時に土手に落ちてしまって意識を失いました。気がついたら,上着が食いちぎられていて,夏江先生からいただいたお守りもなくなっていました。きっと,お守りがわたしを守ってくれたんだと思います」
この話を聞いて,夏江は『男性排除』の呪符が野犬に効果があるとは思えなかった。たぶん別の要因で野犬が去ったと思った。このとき,テレビで報道されていたニュースのことを思い出した。
夏江「ニュースで報道していたけど,女性が犬に襲われた事件があったけど,林さんを襲った犬だったかもしれないわね。どのみち,林さんには,かなり強力なお守りが必要なようね。
ちょっと,恥ずかしいかもしれないけど,乳首と陰部に金属製のお守りを貼りつけたいけど,どう? 同意してくれる? その代わり,その効力はかなり強力だと思うわ」
林サミコ「わたし,もう,半分,汚された身です。それからみれば,乳首やあの部分につけるなんて,どうってことありません」
夏江「それはよかったわ。では,すぐに準備するわね」
夏江は,全部で3個の金属片を自分のカバンから取り出した。そこに,夏江は込めれるだけの霊力を込めて,さらに念強化魔法陣を植えつけた。
ここで,夏江はどんな文字を挿入したらいいかを考えた。どうせなら,不確定要素のある文字を挿入した場合の効果を試してみたかった。そこで,2つの乳首リングの魔法陣には『大凶』という文字を,陰部のリングには『悪業退散』という文字を挿入した。
それらを林サミコの所定の場所にしっかりと取り付けた。
夏江「お守りを取り付けたけど,肉体に傷をつけないで取り付けたから,外れる可能性があるわ。ときどきは外れていないかどうか確認してちょうだね」
林サミコ「わかりました。夏江先生のお守り,大事にします。このお礼,どうすればいいですか?お金はないで,何か行動でお返ししたいのですけど,,,この身でできることなら,,,」
夏江は,ちょっと微笑んだ。
夏江「フフフ。では,子供を生んでとお願いしたら,どう?同意する?」
この夏江の言葉に,林サミコはちょっとびっくりした。まさか,そんな依頼を受けるとは,,,でも,なんでもすると言った以上,ここで否定するわけにもいかない。
林サミコ「あの,,,子供を生むだけならいいですけど,育てるのはちょっと,,,」
夏江「育てる必要なんてないのよ。その点は安心してちょうだい。じゃあ,そのときになったら,詳しく説明するわ。とりあえず今は,学生の本分を守って勉学にはげんでしょうだい」
林サミコ「はい,そうします」
林サミコは,子供を生む依頼なんて,どうせ冗談だろうと思ったので,夏江の依頼に快諾してから,保健室を後にした。
夏江は,自分がほんとうに魔獣族の回し者になったのではないかと錯覚した。
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