第10話 陰部強度
マキは,手の平だけでは,判定間違いではないかと思って,両手と額を夏江の腹部に当てて,詳細に受精卵のオーラを感知しようとした。
マキ「4個の受精卵,,,間違いないわ。確かに4個あるわ」
マキは,さらにそのオーラの特性を探った。
マキ「え?このオーラの特性は?? もしかして,ポール?」
マキは,ふと今,横に倒れているポールの死体をまじまじと診た。その死体にはすでに霊魂は存在していいなかった。
マキは,ニヤッと微笑んだ。
マキ「ポール,あなた,自分が死ぬとわかって,自分の霊魂を精子に移動させたのね。さすがは猫魔獣族ね。霊魂の転生能力は超一流だわ」
マキは,ポールが見事に夏江の子宮の中の受精卵に転生を果たしたのを知って安堵した。ポールは,猫魔獣族の中でも優秀な人材だ。
生後3年にして,頭脳明晰で魔法技術も優秀であることから,夏江への生殖奉仕活動が終了したら,ある私立高校の臨時保健士として,半年ほど派遣されることが決まっていた。
表向きは,生徒の『保健健康管理』を担当する。しかし,本来の目的は,魔獣族の赤ちゃんを産むのに絶える子宮を有する女性徒を探し出すという隠れた重要な任務があった。
適当に女性を誘拐して魔獣族の子供を産ませても死産率が9割にものぼる。それを改善するための案として,マキが考えたのが陰部強度という概念だ。陰部強度測定器も彼女が考案した。その機器で想定すると,月本国の普通の女性であれば30程度だが,獣魔族の女性の場合100にも達する。このマキの考えは,上層部に絶賛で受け入れられて,近々,他の地域の魔獣族たちに通達されることになっていた。
マキは,この功績で,もう少しで獣魔族の性処理要員として新魔界に送られるのを回避でき,新しい部署の長としてマキが就任することになった。そこでの主な任務は,陰部強度100前後の女性を探し出すという任務だ。その第一弾として若手のポールを獲得した。余った時間は自由だ。マキは,当然,自分の得意とする呪詛魔法の研究に当てる予定だ。
マキは,他の3個の受精卵の状況を確認した。
マキ「2個目は,,,これって,人間の霊魂だわ。それも,大人の霊魂,,,」
本来,赤ちゃんが持つ霊魂は,か弱い霊魂のはずなのだが,初めから大人の霊魂など,特別なことをしないと入り込むことは不可能だ。
マキは,今は,深く考えるのはやめて,さらに他の2つを診た。
マキ「3個目は,本来の赤ちゃんの霊魂だわ。うん。当然ね。さて,最後の4個目は,,,あれ? 霊魂がない,,,え? どうして? いや,でも,これは幸いだわ。霊魂が生まれる前に,人形に閉じこめたエミコの霊魂を移しましょう!」
マキは,慌てて居間に移動して人形を取り出して,それを夏江のお腹に接触させた。そして,自分の頭も人形とお腹に接触させた。
マキは人形の中の設置してある霊体格納魔法陣を,自分の頭に接触させた。そうすることで,その魔法陣を,マキの頭の中に一時的に移動させた。次に,その魔法陣を夏江の子宮の中に送り込み,まだ霊魂が宿していない受精卵の中に注ぎ込んだ。
その後,その霊体格納魔法陣を解除させた。その魔法陣はエミコの霊魂を格納しているが,拘束が解かれたエミコの霊魂はその受精卵と一体になり,新しい肉体を得ることになる。
一仕事を終えたマキは,やっと3億円の仕事依頼を完了したことになる。あとは,時間加速魔法を使えばいいだけだ。
マキは,夏江の腹部に5倍速の時間加速魔法をかけた。こうすることで,2週間足らずで赤ちゃんを産むことが可能だ。
ヒュイーーーン!
時間加速魔法陣が夏江の腹部の中に入っていった。ところが,その時間魔法陣は,その加速度合いを早めて10倍速にまでになった。
マキ「え?なんで10倍速になったの? そのパワーはどこから??」
マキは,受精卵のことばかりに気をとられて,他の部分の状況を見過ごしていた。彼女は,再び頭部を夏江の腹部に接触させて,子宮全体の状況を診ていった。
すると,膨大なポールの精気が子宮内で渦巻いているのが分かった。それが時間加速魔法陣をさらに増強しているのが判明した。
マキは,多少焦ったけど,なんとか現状を把握できたので寝室を後にして居間で休息をとることにした。
朝食を取った後,ポールの対応をどうするか迷った。
彼は,産休で休んでいる教師の代わりに,臨時教師としてポールを派遣させる予定だった。そこで,多くの陰部強度100点前後の女性徒を選定させるという,マキにとって,なかなかうまい計画のはずだった。
しかし,ポールが死んでしまったことで,この計画がご破算になってしまった。
まだ,派遣するまで2週間ある。ポールの代わりはそう簡単には見つからない。出生率が悪い今の状況では,他の魔獣族の部署間で,見かけ上15歳前後,つまり生後3歳になる獣魔族の子供は引っ張りだこだ。マキは,陰部強度の概念を発見した功績で,新しい部署の長となり,やっと1人の3歳の部下であるポールを獲得したという状況だ。そう簡単に代わりの者を獲得するのは困難だ。
それに,問題を発生させるのはマイナス評価につながる。ここは,自前でポールの代わりを探すほうがいいと判断した。
しばらくすると,魔獣族の遺体処理班が来てポールの死体は処理された。
マキは,これから生まれてくる4人の赤ちゃんの事を考え始めた頃,夏江が寝室から起きてきた。
夏江「マキさん,ポールはどうしたの? ずーっとわたしと一緒のはずじゃなかったの?」
マキ「・・・」
マキは,自分が把握した状況を,丁寧に説明することにした。ポールが射精するたびに自分の寿命を縮めたこと,16回の射精で自分の寿命を使い果たして死亡したこと,そして,なんと,夏江のお腹には4つ子の胎児がいることなどだ。
マキ「そして,胎児の1人は,ポールの霊魂が宿しているわ。2人目の胎児は,大人の霊魂が潜り込んだみたい。3人目の胎児は,新生の赤ちゃんの胎児よ。そして,4人目の胎児は,わたしがエミコの霊魂を植え付けたわ」
夏江は,この話を聞いている時に,彼女の頭の中に聞き慣れた念話が聞こえた。それは,美澪の霊魂だった。
美澪『夏江!わたし,肉体を得ることができたわ! やったわ! この念話することで魂力すべて使ってしまったら,しばらく寝ることにするわ』
夏江は,マキの言葉を聞きながら,ニヤッとした。美澪の霊魂は,たぶん,夏江の子宮の中で身を隠していたのだ。今回の4つ子の受精卵が発生する機会を利用して,いち早くそのひとつを奪ったというわけだ。
夏江の意味不明な微笑みを気にせず,マキは話を続けた。
マキ「あなたの妊娠期間は9日に短縮されたわ。10倍加速が働いたためよ。これからの9日間は,もう精子を受ける必要はありません。十分な精力があなたの子宮にあるからよ。ポールの命と引き換えに得たものです。ともかくこの部屋でのんびりと過ごしてください」
夏江「それはありがたいのですが,例の呪詛魔法陣の本を読みたいのですが?」
マキは,いやいやながら自分の時間を割くことにした。
マキ「では,1日2時間だけ時間を割いて,あなたに説明しましょう。それでいいでしょう?」
夏江「はい,よろしくお願いします」
夏江は満面の笑みを浮かべた。
マキ「生まれた赤ちゃんは,専門の施設で教育を受けることになります。彼らのことは心配しないでください」
この提案に,夏江は同意しなかった。
夏江「あの,,,せめてひとりだけでも,手元において育てたいのですが,,,」
夏江は,弱々しい声で,哀願するように言った。この場合,か弱い女性であるほうがいい結果を生む。
マキ「これは,ルールよ。そう簡単に曲げることはできないわ」
夏江はこんな言葉で引き下げることはできない。
夏江「あの,,,そこをなんとかできないでしょうか? せっかく自分のお腹を痛めて産むんです。せめてひとりだけも,,,あの,,,しばらくはマキさんのお手伝いもしますから」
この夏江の「手伝いをしますから」という言葉に,マキは,ふと,ポールの代わりに私立高校で臨時の保健士として勤務させることを思いついた。
マキは,マジマジと夏江を見た。
マキ「あなた,私立高校で臨時の保健士として半年ほど働くことは可能ですか?」
夏江「え?半年も??」
しばらく考えてから夏江は返答した。
夏江「あの,,,一度,AV監督の了解を得たいと思います」
マキ「了解が取れたらいいのね?」
夏江「はい。問題ないと思います」
マキ「ところで,保健士としての知識はどの程度あるの?」
夏江は,そんな知識などあるはずもない。だが,所詮は高校レベルの内容だ。教科書さえあればなんとかなるはずだ。
夏江「わたし,一流大学でも警察学校でもトップの成績でした。保健士ってよくわかりませんけど,教科書さえあれば,一夜漬けで覚えて,教えることくらい問題ありません」
マキはこの夏江のこの返答に満足した。
マキ「でも,獣魔魔族の赤ちゃんの世話はそう簡単にはできないわ。生後1ヶ月になったら,歩くことも可能になるから,それからでもいいんじゃない?」
夏江「生後1ヶ月?」
夏江は,その提案に同意した。その頃には,美澪も再び念話能力を回復しているはずだ。
マキは,重要な裏任務を夏江に伝えることにした。
マキ「その仕事は,表向きなものよ。本来の任務は,女性徒の陰部強度を測定して100前後の女性徒を選定することよ」
マキは,そう言って,それを測定する装置を夏江に見せた。それは超小型ハンドグリップの構造に計測器がついているような恰好をしていて,あの部分に挿入して,グリップ部分をどの程度押さえ込む力があるかを測定するものだ。
夏江「なるほどね,,,保健士なら体力測定や健康診断の一環で強度を測定させればいいのね? 簡単なことだわ」
マキ「そうよ。問題があるとすれば,その高校の理事長に,ポールの代わりにあなたを保健士として採用させることよ」
夏江「なるほど,,,でも,ポールの代わりに採用してもらう自信は十分にあります」
マキは怪訝な顔した。
マキ「その自信はどこから来るの?」
夏江は,自分の巨乳を持ち上げて,マキに見せた。それを見たマキも二やっと微笑んだ。
マキ「そうね。その巨乳ならいくらでも採用してもらえそうね。でも,妊娠期間中に最低限の保健士としての知識を身につけてちょうだい」
夏江は,この日から,赤ちゃんを産むまでの9日間,呪詛魔法と保健士に関する勉強を精力的にすることになった。
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