第11話 天神纏

 ━━きっと、あの時ジュリィは死ぬつもりだったんだろう。でも、俺がジュリィと出会ったからジュリィは死ぬことを止めた。


 でも……


「後にも先にも後悔しかない。あの時……あの時俺があんなことしなければ」


 そう呟いて手を握る。その力が強すぎたのか、手のひらから紅い液体が流れ落ちてきた。


 でも、こんな痛みなどどうでもいい。今はこの胸の痛みを抑えたい。


「……あの日から俺は、自分の魔法を封印した。思い出したくなかった。俺のせいで、ジュリィと離れることになったから……」


 言葉には責任が付き纏う。それは、力も同じ。大いなる力には責任が付き纏う。きっと、あの時の俺はそれを理解できてなかったんだと思う。


 ━━━━━━━━………………


「……あと少しで深夜1時。キシル、気を引き締めて」


 ジュリィとキシルは2人で街の広場に立っている。そして、ジュリィはキシルの顔を見てそう言った。


 その言葉にキシルは不敵な笑みを浮かべて答える。


 あれから16時間程経過した。その間2人は装備とアイテムを整え星の怪物を倒す段取りをした。


 そして、日は沈み月が空に浮かぶ。一番星が現れる空で光る。


 周りには、流星群を見ようと街の人々が空を見上げている。


「もうすぐ。キシル、気を引き締めて」


「ジュリィもな」


「ん。”ステラフォース”」


 ジュリィがそう唱えると、ジュリィの体に青白い光がまとわりつき始めた。そして、その光はジュリィの体に青白い光のドレスを形成する。


「行こう!」


「ん!」


 その時、大平原で大爆発が起こった。


「っ!?……来た」


「おう!」


 2人は威勢のいい声とともに大平原に向けて走り出した。


 ━━それから5分後……


 キシルとジュリィは大平原に来ていた。そこには、青白い光に包まれた人のようなものがいる。


 だが、それを人と呼ぶには不気味すぎたし、大きすぎた。


「……っ!?これが……」


「そう、これが星の怪物。……私の……私のお父さんの仇!」


 ジュリィはそう言って真っ先に飛び出して行った。


「バカっ……!クソッ……!」


 キシルは呻くような声を上げると、腰に提げているポーチからある魔道具を取りだした。


 それは、光玉だ。普通は相手に向かって投げて目眩しに使う。しかし、キシルはそれを投げず握りしめた。


「”ユニオン”」


 すると、キシルの体が光に包まれた。その光はすぐに収まると、中からキシルが出てくる。そして、キシルの体は光の体となった。


「”天神纏あめのかみまとい”」


 心臓の位置から右腕にかけて謎の紋章が浮かび上がり、髪の毛はいつもの3倍近く伸びている。


「さて……行きますか!」

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