第6話 悲しみと幸せ

 ━━……いつからだろうか。星の怪物を倒し始めたのは。


 いや、そんなものはわかっている。3年前のあの時からだ。あの時から俺は何度も倒し続けた。


 それでもまだ、あの時の約束は果たされていない。


「作戦は完璧だった。あの時俺が失敗しなければ……」


 きっと、ジュリィはそんなことないと言ってくれる。それでも、あの時俺が失敗したからジュリィは……!


 キシルは自分の右手を見つめた。その掌にはぽたぽたと涙が落ちる。


「ごめん……ごめんよ……!ジュリィ……!」


 ━━━━━━━━………………


「……なぁ、ここって本当にジュリィの家か?」


 キシルは目の前の建物を見つめてそう聞いた。その問いにジュリィはこくりと頷く。


「嘘……だろ……」


 呆然とするキシルの目の前にあった建物は、貴族が住むような大豪邸だった。


「なぁ、俺やっぱ良いよ。またあのベンチで寝るからさ」


「ダメ。そんなこと許さない」


 ジュリィはそう言ってがっちりとキシルの手を握る。さすがは最強の冒険者と言ったところだ。全く手を振りほどくことが出来ない。


「……はぁ、もうわかったよ。そこまで言われたら行くしかないなぁ」


「感謝」


 キシルは諦めてジュリィの家に入ることにした。


『お帰りなさいませ、お嬢様』


 家に入るといきなり使用人の人達が出迎えてくれた。キシルがその光景に臆していると、ジュリィがグイグイ引っ張って自分の部屋に案内してくれた。


「……ジュリィの家ってすげぇな」


「そう?」


「そう」


「……恥辱」


「なんでそうなるんだよ!……まぁいいや。なんで俺を呼んだんだ?」


「……恥辱」


「いや、もうそれはいいから!てか、今の話からそれ全然関係ないだろ!」


「冗談。今日呼んだのは、ただ単に私がキシルと一緒に寝たかったから。そのついでに、星の怪物を倒す作戦を練りたい」


「ついでって……まぁいいや。じゃあ、もう寝る?」


 キシルがそう言うと、ジュリィはまるで汚物を見るような目で見つめてくる。


「……なんで?」


「……キシル……風呂に入らないの?」


「……え?ふろって何?」


「ふざけてるの?それともバカにしてるの?」


「ごめんなさい。冗談です。でも、最近入ってなかったから忘れてたな」


「一緒に入ろ」


 そういうジュリィは既にキシルの手を掴んでいた。そして、ジュリィはキシルに有無を言わせず風呂場に連れていく。


 風呂場に着くと、ジュリィは早速服を脱ぎ始めた。キシルも、どうせ逃げられないので服を脱ぎ始める。


「ん、かっこいい。その、固くてたくましいのがかっこいい」


「うーん、その言い方だと若干まずいなぁ。でもまぁいいか」


 そう言って2人は浴室に入る。


 服を脱いだジュリィはどことなく妖艶な雰囲気を醸し出していた。胸とお尻は小さいのだが、ぷるぷるもちもちで可愛い。肌は白くすべすべだ。つい、見入ってしまう。


「……変態」


「……ごめん」


「良い。ねぇ、キシル。体洗って」


「良いよ。じゃあ、俺の体も洗ってくれない?」


「良いよ。初めからそのつもり」


 ジュリィは平気な顔をしてそんなことを言う。……実はジュリィってえっちぃのか?


「じゃ、洗うよ」


 キシルはそう言ってジュリィの体を洗っていく。頭から胸、お尻、足、そして股など、体の隅々を洗っていく。


 ジュリィも負けじとキシルの体の隅々を洗う。そうして、2人は仲良く風呂に入って幸せな時をすごした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る