第6話

「あそこのベンチ座ろっ。」


私は噴水前にあるベンチにかなでを座らせた。奏は無表情。ずっと俯いてる。


「ヨシヨシ。」


今度は私が奏を撫でてあげた。

奏は絶対音感を持ちながら聴覚過敏。特に人混みにおる時に人の声がめっちゃ不快音になるみたい。

最近は自分の中で切り替えできるようになったらしく、症状は出なくなってんけど。1年ぶりぐらい?生徒会が登場したあたりから元気なかった。普段人に対して「うるさい」とか言わんし。お守り程度でこれからもイヤーマフは持ち歩くべきやな。


「はぁ...ごめん、ありがとう。」


奏は気怠そうに言った。


「なんでまたなったんだろう。治ったはずなのに...最悪。また落ちこぼれ人間に逆戻りだ。」


奏は上半身を横にした。


「別に気にせんでええと思う。外出てリフレッシュできるからええやん。嫌になったら「今日はダメだなー」とかなんとなくぼーっと思って対処してうさぴょんみたいに素早く逃げたらええ。別に悪いことちゃうし仕方ない。そういうもんなんやないかな。」


私は空を見上げながら言った。今日は曇りだから空は真っ白だ。何も見えん。


「今日の空やって青い部分一つも見えんけど、それに対して「許すまじ」みたいな人間はおらんやろ...あ、農業関係の人やったらあるんか?...まあそれは置いといて。仕方ないやん。天候って。」


「うん。」


「それと一緒で奏の聴覚過敏もお天気みたいなもん、ぐらいの心意気でええんちゃう。」


そうや。自分の身体っていくら頑張って気を付けても不調なったり、病気になったりすることがある。それを「落ちこぼれ」だなんて思って欲しくない。


「そうなのかなぁ...」


奏はそう言って目を閉じた。

奏にもわかる日が来たら良いな。もっと自分を大事にして欲しい。現に私が病んだ時、あんなに寄り添ってくれたのに。私に寄り添ってくれたみたいに自分にも寄り添って。奏だって1人の大切な存在なんやから。


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