第5話
「...の...優乃!何ぼーっとしてるの!会場、そろそろ入るよ」
「あー、ごめんごめん」
昔のこと思い出しちゃった。
「思ったんだけど、優乃さ、ヴァイオリンには到底勝たないけどべっぴんさんなんだから今日くらいコンタクトでこれば良かったのに。学校もコンタクトで行けばその美貌で全校生徒魅了できるだろ。」
奏は私の茶色メガネをつついた。
ヴァイオリンは余計な。
私はコンサートとか舞台に立つ時以外メガネを付けている。目はまあまあ悪い。だからコンタクトにしたら多少は目の大きさ変わる。でも、
「なんか毎日付けるの面倒くさい。」
言ったって誤差や。そんなメガネ外しただけで美人なったら全世界のメガネ掛けとお人どないなんねん。
「JKがなんてこと言うんだ。」
「前髪ボサ男に言われたないわ。目元詐欺め。」
そんな戯言を言い合いながら会場へ入場した。
中に入ると1番に目に入るのが、あの、大きなシャンデリア。うわあ、3年前を思い出すなあ...嫌やなあ...あん時めっちゃ笑われてんなぁ。今回は逆やけどあん時高校生前半、中学生後半やったから全校生徒に見られてしまって、即帰宅。ダッシュで帰った。
それにしても全校生徒入る大広間所有するこの学校はすごいわ。少人数制と言えど、240人はおるからさ。
「見てよ!ビュッフェのラインアップメニューじゃん!夜ご飯、楽しみだね。何にしよう。」
奏、内装より食か。わかるけど。建物のせめて作りがすごい、とかないんか。ヨーロッパの建築見慣れたらしょぼいからしゃあないんか?日本の中ではかなり立派なバロック様式だと思うけど。つか、近くまで行って今食べる物熱心に選ぶなや。飢えてる人みたいで恥ずかしいやんけ。
...でも、確かに美味しそう。あ、海鮮コーナーにうにもあるみたい。これは、ムラサキウニ?いや、バフンウニ?写真じゃわかりにくいわ。バフンウニの方が甘みがあるイメージがあるから...
「きゃー!」
不意に会場が歓声に覆われた。周りを見渡すと皆んなが斜め上の一点を見てはしゃいでる。
絶対アレやろ。部屋のゴミ賭けられるほど自信あるで。
「皆さん、改めましてご入学おめでとうございます。」
ほら。生徒会長やん。見た目お姫様、声と所作が王子様。性別男って知った時びっくりした。ていうか、思ったよりめっちゃ上の方おるやん。高みの見物か?貴族か?後ろにゾロゾロおる4人はメンバー?初めて見たわ。
「5人全員揃ってる!どうしよう、美しすぎて直視できない!死ぬ。」「美の化身だ...」
いやいやいや、そこまではないやろ。死にはせんから。
周りの人間に無意識のうちに心の中でツッコんだ。癖かな。
「別に、ヴァイオリンに比べたら大したことないだろ。うるさいなあ。」
奏はボソっと呟き、またビュッフェメニューに顔を戻した。
「いや、楽器と人間を比べるな!」
基準どないなっとおねん。
「今日は先輩のさまざまなショーを観ていただきながら自由にダンスパーティーをお楽しみください。」
皇先輩はにこやかに言った。
ふーん、広間の奥にあるステージでショーを観て、ここの広場ではダンスパーティーが開かれるってわけね。自由に過ごせ、と。
「ねえ、今年は誰が選ばれるのかなっ」「先輩のお相手でしょ?」「去年選ばれた先輩が言ってたんだけど、最高なんだって。」「もしかして、生徒会の役員になれる可能性もあるよね。」
なんや、そのややこしそうな設定。最高って怪しい臭いしかせえへんねんけど。やっぱ、高みの見物、品定めしとおの?まさか。女漁り?いや、でも生徒会は男3人女2人だから...うん、考えるん辞めよっと。なんか、めっちゃどうでも良い。どうせ関係ないし。
「奏さん、あの。なんか観に行きません?」
私は未だにメニューを真剣に見る奏に遠慮がちに声を掛けた。いつまでメニュー見とお。
「おーい!奏さーん!」
「...」
「ねえ!」
「...ごめん。」
奏は俯きながら呟いた。なんだか様子がおかしい。もしかして。
「...一旦外出よっか。」
私は奏を支えながら外の庭に出た。
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