第4話

今となっては懐かしいな、、、、、


入学当初から疎外感を感じていた。元から編入生が私だけであり、友達はできにくい環境やったと思う。授業のグループワークで孤立することはもちろん、授業中に発言する時でさえ異様な空気を感じた。


中学2年生の時、糸がぷつんと切れたように限界が来た。あれほど望んで選んだ学校なのに教室行くと上手く呼吸ができなかった。それでも両親には言えなかった。日本の学校に行くことは私の夢で、自分が決めた道を曲げずに進みたいと思ったから。あの頃選んだ自分を否定したくなかったから。

いつしか、登校することができなくなり、引きこもりがちになった。何をやるにも気力が持てず、食べることさえできなくなった。自分が奏でる音楽にも影響が出た。


「最近の優乃の歌下手すぎ。発声初心者以下。無理。すごい暗い気持ちになって不快だ。伴奏だって全然僕の演奏に寄り添えてない。どういうつもり?今日は辞めにしよう。」


引きこもって1週間が経った時のこと。合わせ練習の時に奏に言われてしまった。いつも優しい奏の厳しい言葉にとても驚き、傷付いた。でも言ってることは正しい。私は奏の目の前で声をあげて泣いてしまった。


音楽の奏者の感情は全て音になる。喜怒哀楽全て分かってしまう。だからメンタルケアも音楽家としてしっかりしなくてはならない。今になって本当にそう思う。


私が泣いた時、奏は泣き終わるまで待っててくれた。

「ごめんごめん、泣かしちゃったか...ヨシヨシ、最近、優乃疲れちゃってるよね。頑張りすぎなんだよ。落ち着いたら話して」そう言ってこの時も側で頭を撫でてくれた。私が不調なこと、バレバレやってんな。


私は全てを奏に打ち明けた。家族に知られたくないこと、本当は頑張りたいことも全部。


奏は私を優しく抱きしめてくれた。「大丈夫だよ」って言ってくれた。そう、私は誰かに分かってもらいたかってん。存在を認め、確認してくれる誰か。


それから毎日、奏と話した。芸術鑑賞もいっぱい行った。オーケストラとか、歌劇とか、ジャズも。


奏のお陰で1ヶ月で学校復帰できた。

彼はほんまにすごいと思う。ヴァイオリン上手いしピアノも上手くて勉強もできて、他者の心まで救えるなんて。音楽家として、人間として、親友として、尊敬している。だから、奏が何かあったら守りたい。味方になりたい。彼に幸せになって欲しい。

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