第148話 憎しみが生むもの㉖
俺はこちらに迫ってくる敵構成員に対して飛行機の陰から一人づつ対応していく。敵構成員の装備は相も変わらず超高性能なもの。隠れる場所が多いので正面からやりあうこともなく、一人一人処理で来ているがもしこれが滑走路での戦闘だったら多くの犠牲が出てたかもしれない。
とりあえず、こちらに撃ってきていた敵を排除しきってから格納庫内を細かくクリアリングしていく。今は車にナイトビジョンを置いてきてしまっているので暗い格納庫内でのクリアリングは非常に危ない。とにかく俺は死角をなるべき作らないように、作ってもすぐに確認したところをそうするようにしながら慎重に行動する。
格納庫内を一通り確認しきったが最初に攻撃をしてきた部隊以外に何かを見つけることはできなかった。ただ、この格納庫にはいくつかの場所につながる扉があり、どれかの先にあの女性がいたとしても不思議じゃない。
とにかく俺は一人で扉を開けてその先に進む。
いくつかの扉を開けて残ったのはあと一つ。一番奥にある扉でその先は本来スタッフの中でも選抜された人物しか入ることのできない場所だ。
俺は銃を握りしめながら扉を開ける。
するとそこには数人の護衛を引き連れた例の女性がいた。
「ここまでたどり着いたんですね」
「あぁ、当然だ」
「やはり新大阪の遺族は厄介ですね」
「当たり前だ。こっちは両親をお前らに殺されているんだから」
「師はいつも言っていました。『ただ生きるだけではだめだ。何か理由を持って生きなければいつか我々は淘汰される』と。まさにその通りですね」
「お前らのやっていることは共感できないが、その師の教えとやらには共感できるな」
「ただ、私たちもただで死ぬわけにはいきません。何か理由を持って生きていなければ私たちは淘汰される。それは真理でありながら残酷なもの。だから私たちは人類から生という枷を取り払おうとしているのです。それこそが人間が自由に生きる最後のすべなのですから」
「生から解き放たれてなお、自由に生きる…か。人間の業の深さだな」
「…別にあなたがそれを理解する必要はないのですよ。これはあくまでも人類のために苦しみ、汚れることを選んだ者たちがわかればいいもの。それ以外の人間に理解を求めようとすることには何の意味もありません」
「ただ、その考えもここで終わる」
俺は銃を着物の女性に向けてトリガーに指をかけいつでも撃てる状態にする。
「憎しみこそが人間の本質。あなたは生きながらに枷を取り払うことのできている存在。その存在に私の使命が受け継がれるのなら本望」
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