第144話 憎しみが生むもの㉒

蒼葉はポケットから九七式手榴弾を取り出すとピンを抜く。この九七式手榴弾というのは大戦時に日本軍が使っていた手榴弾でこれまた100年以上昔に作られた骨董品のようなものだ。


もちろん今のものに比べて性能も劣っており使いにくくなっている。しかし、蒼葉はそれのピンを抜いてから3秒ほど手に持ってから敵に向かって投げつける。


もちろん敵もそれを見るとすぐに拾ってこちらに投げ返そうとしてくるが、拾った瞬間に爆発しその敵の体が爆散する。さらに中に入っていた金属片が周辺に飛び散り、その周囲にいた敵部隊にも大きな被害が出た。


そしてそれを確認した自衛隊員たちは爆発による隙をつくようにして敵を射殺していく。


それに少し遅れるようにして蒼葉も遮蔽物から出て敵を攻撃する。敵部隊は爆発によって開いた穴を埋めるようにして動こうとするが、初めからそこまで厚みがあるような部隊の人数じゃない。さらにそこを無理に埋めるように動いてしまうことによって数人の構成員が被弾する。


これによって爆発によって戦線に穴が開いてしまったところだけでなくほかの場所でも穴が開くようになってしまい、いたるところで自衛隊員たちの攻撃を許す形になってしまう。


これによって一気に流れが変わってしまった。先ほどまで圧倒的に優勢だったはずの敵構成員たちは次第に一人一人射殺されていく。こうなってしまうともう止められない。ものの数分で敵構成員は全滅した。


「大丈夫?」


「自分は大丈夫ですが、部隊内に死傷者が出てます。少し、整理をしてもいいのではないでしょうか」


「…うん。そうだね。まずは情報を整理しよう」


「今のところ死亡したのが3人。負傷が4人です」


「負傷者の中で戦闘が継続できそうなのはどのぐらい?」


「今すぐにここでできる応急処置を施して戦闘に参加することのできるほどの怪我ではなさそうです」


「わかったよ。…ただ作戦を中止することはできない」


「なぜです?すでに部隊の半分近い人数が戦線から離脱しています。さすがに予定通りの作戦を決行するには戦力が足りないのではないでしょうか?」


「もちろん想定よりも相当厳しい状況になると思うよ。でも僕たちがここで作戦を勝手に中断すると今上で戦闘をしている部隊に大きな負担がかかることになる。そうなると僕たちの部隊だけじゃなくてほかの部隊でも大きな被害が出るかもしれない」


「…了解です。ただこれ以上の戦力の離脱があった場合作戦の継続は困難だと自分は判断します。その場合はもう一度撤退を考えてください」


「わかったよ」

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