第143話 憎しみが生むもの㉑

駅が爆発によって崩落する少し前蒼葉たちは中央西改札からの突入を開始していた。敵が占領しているのはJR新宿駅なので中央西改札で京王線ホームとJR側で挟まれるなんて言う最悪なことにはならないようになっている。


蒼葉たちは中央西改札まで身構えながら進んでいくが、なぜか中央西改札付近では敵があまり展開しておらず数人の見張りを倒すだけで駅構内へと侵入することができた。


ただ中央西改札からJR線のホームへと行くためには連絡通路のような場所を通らないといけない。そこは一本道になっていて遮蔽物も全くなく、さらにそこから出るときは階段を上らないといけないので周辺に敵が展開していた場合非常に危険な状況になる。


「西2曹、僕が先頭になって進んでいくから後ろからついてきて」


「隊長が先頭になるのですか?少し危険ではないでしょうか?」


「危険ではあるけど、ここで戦力を失うなんてことはなるべくやりたくないから」


「…了解です」


ということで蒼葉を先頭に部隊が連絡通路に入ろうとし、蒼葉が連絡通路に足を踏み入れた途端連絡通路の中からグレネードが飛んでくる。


「退避!」


蒼葉はそういうとなるべく頭がグレネードから離れるように近くに飛んで頭を守る。


しかし、いくら待ってもグレネードは爆発しない。蒼葉が恐る恐るグレネードを見てみるとそこにあったのは本物のグレネードではなくデコイグレネード。蒼葉がそうわかるのと同時に敵がこちらに踏み込んでくる。


すぐに蒼葉は遮蔽物に隠れるが逃げ切れなかった数人の自衛隊員がそこで射殺される。しかも、蒼葉たちが隠れる姿というのは敵からも見えていたので場所も割れてしまっている。


とにかく敵を片付けるため遮蔽物から体を少しだけ出しながら敵を迎え撃つが、出てきているのは軍隊クラスの装備を着けている。少し銃弾が当たっただけでは殺すことはできない。


しかも蒼葉が使っているのは38式歩兵銃。150年も前に作られた銃ではやはり近年に作られた銃相手でしかも人数不利がある状況だと厳しくなる。加えクリップ装填を使うことによってなるべく装填時間が短くなるようにしているが、ボルトアクション式、さらに5発しか装填することができないとなるとロスタイムも長くなる。


そのせいで敵を倒す速度よりも敵が近づいてくるスピードのほうが速い。このままでは蒼葉は敵の波に飲み込まれ、射殺されることになってしまう。


また、それを防ごうとした自衛隊員が蒼葉よりも後方からグレネードを投げるが、爆発する前に投げ返されてしまったことによって自分が投げたグレネードによって体が爆散することになった。

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